異なる世界の侵略者
竹取ノキナ
復讐の焔篇
第一世界と第二世界
「お母さま、あれってなあに?」
黒色の髪の毛をおかっぱに切りそろえた幼児が、広い庭のテラスで母親へと問いかける。
まだ4歳になったばかりの子どもの琥珀色の目には、空高くまで続く青白い結界が非日常として映っているらしい。
「あれはね、
「そうなんだー。なんで閉じ込められてるの?」
「いーっぱい悪いことをしたからよ」
「出てこれないの?」
「神様に魔法を使えなくされちゃったから出てこれないの」
「えー!かわいそうだね……」
「かわいそうじゃないわよ?……うーん、なんて言ったらいいかしら?悪い事をしたから、他の人に迷惑をかけないように神様が閉じ込めてくれているの。……わかるかな?」
4歳児に分かるように説明をすることは思ったよりも難しい。
「でも僕は何もされてないよ?お母さまやお父さまは悪い事されたの?」
「うーん、そうじゃないの。……そうねえ、後で絵本を読んであげる。そろそろあの絵本の出番だわ」
「やったー!」
男の子は両手を広げて女性へと抱き着いた。彼は、他の全ての子供がそうであるように、母親を愛し、父親を愛し、大きな屋敷を愛し、きれいな草花が咲く庭園を愛していた。
この世界には魔法が使える人間の住む『第一世界:セレストリア』と、魔法の使えない人間の住む『第二世界:ディストルム』に分かれている。
ディストルムは創造神カルバヌスが造ったと言われる結界に囲まれた土地の中で、魂に刻まれた原罪を償っている。
一方セレストリアはカルバヌスの祝福を受けた人間であり、魔法を扱う人間が住まう世界である。
セレストリアの住人にとって、ディストルムとは忌避される場所であり、幼いころから危険な場所であると何度も何度も御伽噺で聞かされるのだ。
「ふふふ、喜んでいられるのも今の内よ?こわーい絵本なんだから」
「怖くないよ!僕は早く大人になるんだ!」
「え~、ずっと子どものままでもいいのよ?」
「嫌だよ!葉っぱだって食べられるようになったからさ!」
「あら!偉いわね~」
雲一つない真っ青な空の下で、親子の会話は続いていく。
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