ゲーム中毒の同棲人は幼馴染みで後輩で引きこもりで許嫁

田中山

第1話

「ピャアアアアアアアアアアア!」

「……はぁ」


 俺、槙野琢也まきのたくやは深いため息を吐いた。

 ため息を吐いた理由?

 とある都合で同居しているやつの叫び声が聞こえてきたからだよ。

 幸い、一軒家で割と本気の防音対策もされているため、近所迷惑になるというのはほとんどないのだが……。


「うるさい……」


 今は夜中の11時。

 良い子のみんなはとっくに就寝している時間で、俺も寝ようとしていた。

 そんな中、あんなに叫ばれたらたまったものじゃない。

 俺は自室を出て、いまだ聞こえてくる叫び声の発生場所へと向かった。


「おい、依織。お前、時間考えてくれ、寝させてくれ」

「……ごめん」


 さっきまでくそうるさかった奴とは思えないほど、声が小さい。

 部屋の中は相変わらずピンク色の物で埋め尽くされている。

 コイツは三坂依織みさかいおり

 俺の通っている辻高校の1つ下の後輩だ。

 学校では、小柄な体や控えめな性格も相まって小動物みたいだと他の奴らの保護欲を刺激して、ペットのように扱われている。

 そして、家に帰ってくると、部屋に籠ってゲーム三昧。

 夕飯と風呂の時以外にほとんど出てこない。

 休日なんて、たまにあるゲー友とのオフ会以外で外にでるなんてめったにない。

 

「あのなあ、ゲームをするなとは言わないが、もう11時だぞ? いい加減に寝ろよ」

「……睡眠は1日3時間あれば大丈夫」

「お前ショートスリーパーじゃねえだろ……。寝ないと疲れが取れないぞ」

「……学校で寝る」

「ダメに決まってるだろ」


 ……ったく。

 このは、本当にダメな奴だ。

 あの後、ゲームをセーブさせて、寝かしつけた。

 ベットに入るとすぐ眠りこけたから疲れが溜まっていたのだろう。


「……寝顔だけは本当にかわいいんだよなコイツ」


 俺の気も知らないでぐっすりと眠っているゲーム中毒者の頬を起こさないように突っつく。

 プニプニしていて柔らかい。

 俺は、ぷにぷにほっぺを堪能してから自室に帰っていった。


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