タイムマシン・イズ・マネー

そうざ

Time Machine is Money

 深夜のファミレスである。

 兄弟同然の幼馴染み4人がドリンクだけをオーダーして駄弁ってダベってダベッテだべって過ごす時間である。


「なぁ、タイムマシンがあったらどうする?」と大具地。

「もちろんギャンブルっしょ! 競馬っ、競輪っ、競艇っ。ついでに宝くじもっ」と金子。

「そういうのは真っ先に法規制されてタブーになっから。はいっ、逮捕」と大具地。

「くっそっ、自由ってなんだっ!」と金子。


 常連その1:金子かねこかねる

 高額紙幣が空から降って来た事があると豪語するが、誰にも信じて貰えない男(※拙作『金の舞う日は来ぬものか』参照)。生まれて初めて発した言葉が『金』だったとの逸話あり(単に苗字が金子だから説が有力)。


「俺ならT・M製造会社を設立するな」と大具地。

「おぅ?」と金子。

「敢えて壊れやすいT・Mを作る」と大具地。

「ぬわっ?!」と金子。

「壊れたらまた売れっから儲かる、また壊れっからまた売れる」と大具地。

「天才か!」と金子。


 常連その2:大具地おおぐち菊雄きくお

 大発明家を夢見て夢のまま終わったご先祖が居る(※拙作『奇想の凡人』参照)。将来の夢は『社長、またはビッグになる』。大言壮語はご先祖譲りである。


「バーカ、粗悪品を売る会社なんて悪評が立って秒で潰れるわ」と坂白。

「何っ?!」と大具地。

「くっそっ、この世は地獄かっ!」と金子。


 常連その3:坂白さかしら甲子良かしら

 母は著名な料理探究家であるが、母UZEEEと思いながらも自分もウンチクを垂れるのが好きである(※拙作『厨房戦記』参照)。因みに、何度練習しても漢字で『蘊蓄』とは書けない。


「そもそもT・Mなんか2、3回使ったら飽きるだろ。そんなもんを何回も買う客が居るとは思えない」と坂白。

「だったら、どうすんの?」と金子。

「1円で売る。1円だったら買ってみようかって客が沢山居るだろう」と坂白。

「そんなんじゃ、大して儲かんねぇだろ」と大具地。

「T・Mだって燃料が必要だろう、タキオン式の奴とか」と坂白。

「たき、おん……?」と大具地。

「専用のタキオン式充電池を独占して、それを売り続ける。うっかりT・Mを買っちゃった奴は、宝の持ち腐れになるよりは定期的に使おうと考える筈だ」と坂白。

「頭イイッ! そして悪どいっ!」と金子。


「お前さっきから黙ってっけど、何かアイデアない訳?」と大具地。

「僕だったら……もっと堅実に活用するね」と土岐。

「ほう、是非教えて欲しいな」と坂白。

「知り知り、たいたい!」と金子。

「その前に……ドリンク飲み過ぎた」と土岐。

 

 常連その4:土岐ときかける

 秘密めいたところのある男(※拙作初登場)。


 トイレに立った土岐は迷わず個室の中へ、事前の打ち合わせ通りそこで待っていた人物と声を潜め合う。

「未来は順調?」と土岐。

「笑いが止まんないよ。君が人脈ともだちを重要視してくれた成果だよ」

「元を正せば、未来の事を教えてくれた君のお陰さ。情けは人の為ならずってね」

「これが本当の出世払いだな」

 配当金を授受して笑い合う


「今日は僕が払うから」と土岐。

「いつも済まん、次は俺に奢らせてくれ!」と大具地。

「困った時はいつでも言ってくれよ、直ぐに駆け付けるぜ!」と坂白。

「神だっ、お前は神だっ!」と金子。

 現時点ではまるでうだつの上がらない大具地、坂白、金子の3人。何れ彼等が共同事業で大成功する未来を知っているのは、常連その4だけである。

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