1. Night of a crescent ~月夜~
星が夜を照らす——。
ヘルメスの静かな夜——。
銀の十字架が三日月の光に輝く大きな教会。
流れる賛美歌に、安堵を想う——。
突然現れた奇怪な集団。
神聖なムードが一変する。
体の大きな斧の手を持つ男が先頭を走る。
その後ろを、この地では珍しい黒髪の男が腰に剣を携え、走って行く。
その剣も男に似合い、珍しい。
更に、その後ろから二人の男が走って来た。
斧の手の男に、全員集る。
「チッ、嫌な聖歌だぜ。あぁ、えっと、お前、なんて名前だっけなぁ?」
斧の手の男は、黒髪の男を見る。
「・・・・・・多分、アルファ」
「多分ねぇ。その記憶喪失、信じるぜ? 元EIBELL STRAIN?」
アルファと名乗る黒髪の男は、どうでもよさそうに、自分の髪を左手で軽く撫であげる。それは彼の癖らしく、さっきから、二度、三度、その行動を繰り返している。
髪を撫であげる左手首には、アームリングかと思わせられる奇妙な模様が彫られている。
その刺青の模様は数字に似ている。
特徴なら、もう一つ。
左目下に小さなホクロがある。泣きボクロ。
そのせいだろうか、余り表情を変えず、愛想のない顔付きでも、親しみやすく感じる。
額にはバンダナが巻かれている。只のファッションにしては汚い布である。
「俺の名は覚えているよなぁ?」
斧の手の男は、アルファに斧、つまり、右手を向けた。アルファは髪を撫であげる。
「シェアト、だろ?」
「そうだ。シェアト・A・ゲニブ。流石に今さっきの事は覚えているようだな。俺達が今から始める事は——」
「それもさっき聞いた。覚えている」
アルファは向けられた右手の斧を弾き返し、上目使いで、シェアトを睨む。
「質問も能書きも、もういいだろ」
声のトーンが変わった。
アルファの口調は決して優しくはないが、口数が少ない分、穏和に感じられる。しかし、不意に怖い位、怒りを露わにした声を向ける時がある。筋肉で覆われた体を持ち、しかも大きな斧の右手を持つシェアトでさえ、アルファの声に黙り込むくらいだ。
無感情かと思われるアルファの中に、怒りという感情があるという事は、その声のトーンでわかる。
「やるなら、さっさとやってしまおう」
アルファの声のトーンが穏和に戻っている。
「あ、ああ。アルファとウェズンは教会の裏口から。俺とアルドラは正面から! 行くぜ!」
シェアトの斧が教会に向けられた。それが合図のように、二組に別れ、賛美歌が聴こえる教会へと走って行く。
警備にあたっていた教会の『神の使徒』と、呼ばれる連中の銃と、アルドラの銃が火を噴く。
十字架を埋め込んだ大きな木の門の扉が、シェアトの斧により、叩き、切り、壊されていく——。
裏口では、神の使徒達が、アルファとウェズンを待ち構えているかのように、配置されている。
「アンタ、アルファって言ったな。強いんだろ? 元EIBELL STRAINだもんな」
建物の影に隠れ、神の使徒の人数を確認しながら、ウェズンはアルファに話しかける。
何も答えないアルファに、チラッと目をやり、腰の剣を見た。
「変わったソードだな」
「ソードじゃない。刀だ」
「カタナ?」
「俺だけの最強の武器、刀・三日月」
「三日月? そのソードの——、いや、刀の名前か? だが相手は銃だぜ? 銃に勝る武器じゃないだろ。それに、あの人数。突破できそうにない。どうする?」
「裏口から突破しろと言われた事をこなせばいい。邪魔する者が何人だろうと関係ない。邪魔されるなら、倒すまでだ」
「お、おい! 待てよ!」
ウェズンの言葉も聞かず、神の使徒の群れに一人向かって行く。
そんなアルファを襲う神の使徒達——。
いや、神の使徒達を襲うアルファ。
細身の体が、鬼のようなパワフルな動きとスピードについて行く。
アルファの黒い瞳が三日月に散った血を映し、赤く光る——。
ウェズンは建物の影でアルファを目で追うのが、やっとの状態で生唾を呑み込んでいた。
「アイツ・・・・・・人間じゃねぇ・・・・・・」
薄っすらと掻いた手の平の汗を握り締め、ウェズンは呟いた。
神の使徒の死体、そして赤く染まった地に佇むアルファ。
息切れ一つなく、今、刀を腰の鞘に納めた——。
「こ、殺さなくても、気絶させるだけで良かったんじゃないのか?」
ウェズンはビクビクしながら、アルファに近付く。
アルファは左手で髪を撫であげる。
「どうせ数分後には、このヘルメスの町、殆んどが——」
「わかってるよ!」
吠えたウェズンを見て、アルファは面倒そうに溜息を吐いた。
「わかってる! だけど、だけどさ! お前、なんか怖いよ! そりゃあ俺達は殺しをするさ! でもそれに対して、戸惑いもあるし、罪悪感も感じてる! なのにお前は、まるで『化け物』殺すみたいに、人を殺したみたいで・・・・・・」
「同じだ」
「え?」
「『化け物』殺すのも、人間を殺すのも同じだ」
そう言ったアルファを見て、ウェズンは恐怖で、表情が凍り付いて行く。
そんなウェズンに、
「どっちにしろ、いい気分じゃない」
そう少し笑って見せたアルファ。
その笑顔は一瞬で、本当に笑ったかどうかさえ、ハッキリしないが、ウェズンの目には、怯える自分の為に精一杯無理して微笑んだ様に映り、それはアルファに人間性を感じた。
「時間がない。行くぞ」
教会の裏口を開け、アルファは走る。ウェズンも後に続く。
長い通路に幾つもの扉。目指すは礼拝堂。
襲い掛かる神の使徒達。アルファの刀・三日月が斬り倒して行く。倒れる神の使徒達を避けながら、ウェズンはアルファを追うように続く。礼拝堂は近い!
神に祈りを捧げる声が聞こえる——。
「我らが神イーベル様。我らをいつも見守り、助けてくれる。世界崩壊の日であった流星雨から、我らを守ったのは神であり、神を信じる正義である。我らは生きよう、神と共に! 神は生きる苦しみを忘れさせてくれよう! 今、神聖なるサクラメントを——!」
再び聴こえる賛美歌。
そしてアルファの前に立ちはだかる男——。
左手首には、アルファと似た刺青が彫られている。
「EIBELL STRAIN!」
アルファの後ろでウェズンが吠えた。
どうやら左手首の刺青がEIBELL STRAINの証らしい。
しかしEIBELL STRAINとは何か、アルファには記憶がない。
「アルファ! 逃げよう! まさかこんな田舎町にEIBELL STRAINが現れるなんて、計算外だ!」
ウェズンがそう吠えると、男は、『アルファ?』と、口の中で呟き、アルファをジッと見つめた後、何故か、一歩、二歩、臆病な顔つきになり、下がった。
そんな男に、アルファは、
「邪魔をしないのであれば、見逃す。そこをどけ」
そう言い放ち、逃げる気は全くない。
己よりも大きな、そのEIBELL STRAINの男に、アルファは怯える事もなく、冷静な口調だ。アルファのそういう所が、感情がないと思われるのだろう。
ウェズンも、そんなアルファに逃げるのを忘れ、呆然と立ち尽くす。
「・・・・・・そうか、完全に堕天使となったと言う訳か」
EIBELL STRAINの男は、アルファを見て、そう言った。
「堕天使?」
アルファは意味不明な事を言う男に、眉間に皺を寄せ、見た。
「くっくっくっく、あーーっはっはっはっはっはっは!」
男は馬鹿笑いをし、両手を高い天井に向け、上げた。そしてアルファをキッと睨み、
「神の御加護のない堕天使なぞ、怖くはない。神よ、あなたの僕の天使に大いなる力を! 始まりを壊す恐れのない御霊を我に!」
意味不明発言を言い続ける男に、ウェズンはハッと我に返る。
「アルファ! 逃げるぞ!」
と、ウェズンは今だと言わんばかりに、吠えながら、転がるように逃げ出す。
「EIBELL STRAINの連中は異常だ。パワーもスピードも常人以上の人間を遥かに凌ぐんだ! 薬でもやってんじゃねぇかって噂だ! 俺が見ている限りでアルファは薬をやってない! だから敵う筈もない!」
「妙な噂はやめてもらおう」
逃げていたウェズンの目の前に現れる男。
アルファは男が消えたと思ったら、いつの間にあんな所にと驚くが、それでもやはりウェズンを助けなければ任務上、良くないだろうと考え、マイペースにウェズンの元へ走り出した。
「EIBELL STRAINは神が創造した御霊であり、この世に堕ちた『化け物』を倒す為に生まれた戦士なんですよ。だから強いのです」
男はそう言いながら、ウェズンの頭を片手で持ち上げ、ギリギリと音をたて始めた。
男の腕の筋肉がムキムキと膨らんで行く。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!! た、助け・・・・・・」
悲鳴を上げるウェズン。
アルファは三日月を構えた。
「堕天使に何ができる。我の肉体は神そのもの。キサマは神の手から堕ちたのだ。キサマに神の御加護はない! あっはっはっはっはっは!」
男は馬鹿笑いしている。
ジャキーーーーン
まるで刃と刃が重なり合ったような音。
男の手がウェズンの頭についたまま、ドサッと、ウェズンは地に落ちる。
三日月に付いた血をアルファは振り切る。
男は馬鹿笑いを止め、なくなった腕の先を見つめる。
ドロドロと赤い血が腕から溢れ出す。
「俺の相棒、三日月に斬れないものは、俺が惚れたものだけだ。俺が惚れなければ、神さえも斬る——」
しかし、アルファの余り変わらない表情がピクリと動く。
自分の目を疑う、その光景は、神を信じざるおえなかった。
男の腕が再生されていく——。
「斬られたくらいでは、我に敗北はない。我の敗北は神の敗北。もしくは、神が我を見捨てた時のみ!」
アルファは三日月を構える。
賛美歌がバトルを奏でるように、パイプオルガンが激しく鳴り響く。
壁に叩き付けられ、ズリッと下へ落ちるアルファ。
壁が壊れる程ではないが、ダメージは0ではない。
ガクンとその場に尻をついてしまう。
両手に握り締められている三日月——。
男がアルファのバンダナを髪と一緒に掴み、無理矢理、顔を上に向けた時、アルファはペッと男に唾を飛ばした。
男は無言で、アルファから手を離し、顔につけられた唾を人差し指と中指で拭き取り、アルファを冷めた目で見下ろす。
「俺のバンダナに触るな」
「まだ立場がわかっていないようだな」
「——どっちが」
アルファは怒りを露わにした口調で、立ち上がる。
ザッと足を左右、少し広げ、右手に三日月を構え、左手で軽く髪を撫で上げた瞬間、アルファの姿がフッと消えた。
「——神に見捨てられる時が来たぜ?」
そう声がしたのは男の真後ろ。しかし、男が振り向いた瞬時には、アルファの姿は、もうない。
男の真正面で、ビュンという風の音。
刀を真横に大振りに、振り切った音だ。
男はそれに気付き、首を正面に戻そうとした時、その首はコロンと地に落ちた。流石に首迄は再生不可能のようだ。男の大きな体はズドーンと、そのまま後ろに倒れた。
アルファはフゥッと溜息を吐き、左手で髪を撫あげ、三日月を鞘に戻した。
気絶しているウェズンの頭を持っている男の手を外す。
手はまだ力が充分に残っている。まるでトカゲの尻尾——。
「おい、起きろ」
アルファはウェズンの頬を軽く叩く。
「う、ん・・・・・・?」
「大丈夫か? 頭から血が出てるぞ」
「アルファ? 俺、生きてる?」
「ああ、立てるか?」
ウェズンは頭を押さえ、ゆっくり立ち上がる。しかし足元がフラついている。
「まずいな、賛美歌が終わってしまう。後は俺一人で行く。お前は逃げ遅れないように先に逃げてろ。ついて来ても足手纏いになるだけだ」
「わ、わかった。これ、時限発火装置」
アルファは時限発火装置を受け取り、礼拝堂へ走る。
合図は賛美歌が終わり次第——。
教会の大きな門を壊し、神の使徒達を倒した後、入り口の影で、賛美歌が終わるのをとっくに待ち草臥れているシェアトとアルドラ。
礼拝堂へと続く扉の前でドアノブを持ち、身を静かに置くアルファ。
賛美歌が終わる。
神の存在が壊れる時——。
斧を振り上げ、振り落とすシェアト。
ライフルを連打で撃ち続けるアルドラ。
三日月が、天使の像を真っ二つに斬り壊し、アルファは身軽に飛ぶ。
悲鳴を上げ、教会から流れ出て行く人々。
残った神父とシスター達はシェアトにより、台座に括りつけられる。
アルファはアルドラに時限発火装置を渡した。
アルドラはそれをセットする。
「おい、アルファ! ウェズンはどうした?」
シェアトは怖い声で、アルファにそう尋ねた。
「いろいろあってな。先に逃げてる」
「いろいろ? まぁ無事ならいい。記憶失っているのが嘘か本当か、確かめようがねぇからな。いまいち信用ならねぇ。そうだ、時限装置のセット、最後のボタンを押すのを、アルファ、お前がやれ。お前が神の場所の一つを壊すんだ」
シェアトの話を聞いているのか、いないのか、アルファは左手で髪を撫であげながら、祈りの十字架を見上げている。
「お前達! 反乱者だな!」
台座に縛り付けられた神父が怒鳴った。
シェアトは斧を振り落とし、近くにあった長椅子を叩き壊した。神父はビクッとする。
だが、その脅しに負けずに、神父は更に怒鳴る。
「こんな事をして、神が天罰を下されるぞ!」
「天罰? 下せるものなら下してみろ。こうして、お前達を縛り付けている俺に、今直ぐ天罰を下し、神を信じるお前達が助かってみろ」
「くっ! よく聞け! お前達に明日はない! 神は全て御覧になっておられる!」
「俺達の明日より、テメー等の今を心配しろ。全て御覧になっている神に今直ぐ助けてもらえよ。できるもんならな。アルファ! 時限装置、早くセットしろ!」
シェアトに怒鳴られ、アルファは面倒そうに時限装置のボタンを押した。
「こんな事をしても何も変わらない! イーベル様は神であり、生きとし生きる者全てはイーベル様に跪くのだ!」
爆発音の中、神父はそう吠え、シスター達は祈り続けていた。
教会の爆発音が合図のように、あちこちで火災が起きる。
教会の中だけではない。町のあちこちで火が踊り出す。
ヘルメスという一つの町が、教会を中心に燃えて行く。
既にリニアバイクで遠くに逃げている4人の男達。
シェアトが運転するバイクの後ろに、立ち乗りしているアルファは、燃える町を瞳に映していた。
立派な教会、そこに縋りつくように集った人々の集落。
今、炎の中で泣き叫びながら、神に祈る人々——。
リニアバイクはヘルメスから南西にあたる崩れ壊れ果てた建物ばかり並ぶ場所に置かれていた。
そこは奈落者ばかり集る『世界崩壊』から、何の発展もない町だった所。
『化け物』さえ、寄り付かない、薄汚れたゴミ溜め場所。
ここには神はいない——。
「よし! 次の任務は——」
「ちょっと待て。仕事が終われば、飯を食わせてくれる約束だったよな? だから俺はアンタといる訳で、飯を食わせてくれないのなら、アンタといる意味はない。俺は神に用はないんだ。こんな事する事も俺にとったら無意味なんだ。それを手伝った報酬は何もないと言うのか?」
アルファはそう言うと、シェアトを睨んだ。
「そんな目で見るな。秘密本部に戻れば、アダラが食事を作って待っている筈だ」
——秘密本部?
アルファは眉間に皺を寄せた。
そこは昔、小さなレストランだったのだろう。
乱雑に丸テーブルが幾つか並び、カウンターもあり、そのカウンターに減り込んだ大きなソードが目についた。
シェアトがそれを引き抜こうとしたが、かなり奥深く減り込んでいて抜けない。
顔を真っ赤にしてソードを引き抜こうとするシェアトに、ウェズンとアルドラは笑いを堪えるのに顔を赤くする。
「おい! アダラ! おーい!!!!」
抜けないソードに腹を立てたシェアトは、厨房にいるだろうアダラを呼んだ。
「あ。シェアトさん、早かったっスね。飯なら今用意してるっス!」
「そうじゃねぇ。アダラ、この剣は何なんだよ? 俺達がヘルメスに向かう前にはなかっただろ! 何があった?」
「ああ、それの事っスか。実は女が来たんスよ」
「女?」
「どこで嗅ぎ付けたのか知らないんスけどね、爆弾テロのオレッチ等が許せないって、妙な喋り方で吠えまくられ、剣を振り回され、それはもう大変だったんスよ」
「もしかして教会の回し者か!?」
「さぁ? そうは見えなかったっスけど。どっちかって言うと、オレッチ等の爆弾で身内が被害にあったタイプかもしれないっスね。取り敢えず、地下のワイン倉に閉じ込めてあるっス!」
「そうか! でかしたアダラ!」
シェアトは地下へ走って行く。
「どうでもいいが、ここが秘密本部?」
アルファは髪を撫であげながら、グルリと建物の中を見渡し呟く。
「シェアトさんがそう言ってんだ。そういう事にしといてやってよ」
アルファの呟きが聞こえたらしく、アルドラは、そう言ってアルファの肩を叩いた。
「みんな疲れたっスよね。今直ぐ飯にするっス。アルファさん、シェアトさんに、女の事は後にして、先に食事にしようって言って来てほしいっス。ウェズンさんとアルドラさんは、皿を並べるの手伝ってほしいっス」
アダラはそう言うと厨房へ入って行く。
ウェズンとアルドラも厨房へ向かう。
アルファは面倒そうに、左手で髪を撫であげ、仕方なさそうに地下へと下りた。
声が聞こえる——。
「聞けよ! 鼻息の荒い女だなぁ!」
「やかましい! この脳ミソ筋肉が!」
「くっ! あのなぁ、まぁ、落ち着けって! 俺達はイーベル教の教えが間違っていると言っているんだ。簡単に神を語り、奇跡など起こせぬ癖に、言葉巧みに巧妙な手口で、騙している! あんなものに信者がいるからいけない!」
「知るか! 爆弾しかけるにしても爆発さすな!」
「・・・・・・それじゃあ意味ないだろ」
「ほなら全然関係ない人間を巻き込むなや!」
「全然関係ねぇ人間なんか巻き込んでねぇ! 神のいる町に住み、神の教えを学び、神を信じている奴等はイーベル教の奴等と同じだ! そんな奴等を殺して何が悪い? 俺達は正義だ!」
「あほか! そんなん正義ちゃうわ! 正義っちゅうんは——」
妙な喋り方の女。どんなブサイクかと思えば、案外可愛い。俗に言う喋らなければ可愛いのにと言う奴だろう。
長いブラウンの髪を上の位置で括りつけてある。折角のポニーテールなのに、リボンも飾りもない。お洒落を楽しむ年頃に見えるが、そういう事には興味がないのか、まだ女として目覚めてないのか——。
短いタイトスカートに、ヘソを出したルックス。
かなり肌を出しているにも関わらず、いやらしさが全く無い。
男勝りの性格が滲み出た雰囲気を纏っているのか、まだ幼いのか——。
体の大きなシェアトが、その女にタジタジになっている。
完璧に口で負けているシェアトに、女は構わず、まだ吠え負かそうと弾丸のように喋りまくる。その光景に、アルファはフッと笑った。
本の一瞬だったが、それは確かな自然の笑いだった。
しかし、自分の腹の虫に、いつもの無愛想に戻る。
「おい、飯ができるそうだ」
その声に、今、アルファの存在に気が付いた二人。シェアトと女はアルファを見た。
「あーーーーーーーーっ!!!! シンバやないかーーーーーー!!!!」
アルファに、女は笑顔でそう叫んだ。
「シンバ? お前、アルファだろ?」
シェアトはアルファを見る。
「多分な」
「何言うてんの、アンタはシンバやろ? その黒髪、泣きボクロ、シンバやんか!」
「へぇ、どっちでもいい」
どうでもいいように髪を撫であげる。
「あーーーーーーーーっ!!!! やっぱりシンバやん。その髪を撫であげる癖、そのまんまやもん。変わってへんなぁ、シンバ。で? ここで何してんの?」
「シンバだか、アルファだか、わかんねぇが、コイツは俺達の仲間なんだよ」
シェアトがそう言うと、女は、
「嘘や!」
と、シェアトを睨んだ。
「嘘じゃねぇ!」
縛られている体に力を入れ、女は首を振る。
「シンバは、うちより、めっちゃ弱いねん。だから嘘や」
「弱い? コイツはEIBELL STRAINだぜ? 尤も、『元』IBELL STRAINだがな。やはりお前の人違いのようだな。コイツは俺より強い!」
「アンタより強い? ほなら、アンタがうちよりもシンバよりも弱いだけちゃうん」
「んな訳ねぇだろ! 女に負ける程、落ちぶれてねぇ!!!!」
「・・・・・・強いに男も女もあるかい! それにな、シンバがEIBELL STRAINになったんは、きっと、教会にコネがあるからちゃう?」
「コネ?」
「シンバ、多分、孤児やってん。教会に住んどったもん。だからEIBELL STRAINになれたんちゃう?」
「コネだけでなれるもんじゃねぇだろ、EIBELL STRAINにはよぉ!」
「ほなら、EIBELL STRAINのシンバが、なんで爆弾テロ等と一緒におるん? まさか、アンタ等、弱いシンバを人質にしてんの!?」
「だから弱くねぇ! アルファは強い!」
「アイツはシンバや!」
「コイツはアルファだ!」
「シンバや!」
「アルファだ!」
言い合いを続けるシェアトと女に、眉をピクピクさせ、
「んなこたぁ、どっちでもいいだろ! 飯にしろ! 腹減ってんだ!」
と、大声で怒鳴るアルファ。
シェアトは、わかったと無言で頷く。
「うちかて腹減ってんねんで! いい加減、縄ほどけ! 監禁すんな!」
「そうだな、教会の回し者じゃねぇみてぇだし、ここに置いといても五月蝿ぇだけだし、アルファ、縄を解いてやれ、飯を食わせれば、少しは落ち着いて大人しくなるだろ」
シェアトは、そう言うと、階段を登って上の階へ行った。
アルファは髪を撫であげ、ふと女の視線を感じ、見ると、二人目が合い、静かな間があく。
「・・・・・・シンバ?」
アルファは女の背後にまわり、縄を解こうとするが、固く結んであり、なかなか解けない。
「シンバ、なんであんな連中とおるん? 強さに圧倒されたん? うちが守ったろか?」
「別に圧倒されてない」
「じゃあ、なんであんな連中とおるん?」
「飯が食えるから」
「何やソレ! そんなんでええと思っとんの?」
「いいも悪いも飢えたら何もできない」
「悪い事するんやったら、何もできへん方がええやん! 食べる物ないなら教会行けばええやんか! っていうか帰ればええやんか!」
「帰る? 俺は帰る場所がわからない。飯を食わせてくれる場所にいれればそれでいい」
「アンタはペットか!」
「・・・・・・斬る」
「へ?」
アルファは三日月を抜いた。
背後で、鞘から刀を抜く音に、女はビクッとする。
「ちょ、ちょお待てや。ごめん、ペットは言い過ぎやった! 謝る! だから剣は鞘に戻し? アンタ、剣の扱いヘッタクソやったやん? そやのに、そんなん振り回したらアカンやろ? 無茶したらアカン! アカンて! なぁ、聞いとるんか? アカン、やめぇーーーーーーーーーーっ!!!!!」
女は剣の刃が風を斬る音で、悲鳴を上げ、目を閉じる。
そして、ソッと目を開けると、縄が解けていた。ホッと安堵の溜息を吐いたものの、少し寂し気に、
「シンバ、剣術、会得できたんや・・・・・・」
と、呟いた。
縛り付けられていた手首が青く痣になっていて、女は手首を自分で優しく撫でている。
「俺は剣術なんてものを会得した覚えはない。俺にあるのは資質だけだ」
そう言ったアルファを、女は見上げる。
「記憶がないのにな、そういう事は覚えているかのようにわかる」
「記憶ないて・・・・・・シンバ・・・・・・?」
「何故かな、そのシンバと呼ばれるのも、シックリくる」
「・・・・・・身長・・・・・・うちより高いねんな・・・・・・」
その呟きはアルファの耳には入っていない。
アルファは階段を登る。女もアルファに続き、上へ来た。
テーブルの上に料理が並んでいる。
アルファは適当に食べ物を皿に盛り、一人、カウンターの椅子に座り、食べ始めた。
「よし! 全員揃ったし、食べながら話を聞け! 次の——・・・・・・」
シェアトは台詞を失った。
アルドラ、ウェズン、アダラも動かなくなり、静かになった事に、アルファが振り向くと、思わず、持っていた肉をポロッと落としてしまった。
ガツガツと食べ物を口に頬張る女。
水で食べ物を流し込み、更に頬張る。
正直、そんなに美味い飯ではない。食材がどうと言うより、味付けがいまいちだ。
それでも、美味そうに頬張る。
余程、腹が空いていたのか、それとも、いつもそういう食べ方なのか——。
そして女は急に立ち上がった。
ビクッとする男5人。
女は何をするかと思えば、ウェストのベルトを外した。そしてまた食べ始める。
「生け捕った野生動物か・・・・・・?」
アルファが思わず呟く。
「うっ・・・・・・」
女は青い顔をして口を押さえる。
「うわぁ、気持ち悪いんスかぁ? 吐くっスかぁ? 吐くっスかぁ?」
アダラは、ここへ吐けと言わんばかりに、自分の手の平を女に差し向ける。
女は首を振り、涙目になりながら、口の中のものをゴクンと呑みこんだ。
「ふぅ、吐いてたまるか、勿体無い!」
「だ、大丈夫っスか? でも嬉しいっス。そんなに美味しそうに食べてくれて、作った甲斐があったってもんス」
そう言って微笑むアダラを、女は睨む。
「アホ言うな! こんな不味い料理、誰が美味い言うと思てんねん!」
「え? え? で、でも美味しそうに沢山食べてるじゃないっスかぁ?」
「不味くても、沢山食べてあげな、食べ物が可哀相やろ。せっかくこうして、食べる人の為にあるんやから。しかもこんな不味くされてんねんで! 食べてあげな可哀相過ぎる」
「不味くないっスよぉ! 一生懸命作ったんっスからぁ! それに普通は食事を作ってくれた人に悪いから残さず食べるんでしょう?」
「アホ! こんな不味い味付けされた料理の方が可哀相や!」
「・・・・・・酷いっス」
アダラはガクンと肩を落とす。
「それに監禁されとった分、怒りゲージ溜りまくってんねん。食べなやってられへん!」
女はまた食べ始める。
「おい、女。お前、名前は? アルファとはどういう関係だったんだ?」
シェアトが、そう聞くと、女は口の中にある食べ物をゴクンと飲み込み、手に持っていた食べ物を置いた。
「うちはスピカ。スピカ・Z・ポリマ。シンバとは・・・・・・そんなん、うちの口からは恥ずかしいて言えんわぁ」
口の周りに食べカスを一杯つけて、スピカはもじもじする。
シェアトも、アルドラも、ウェズンも、アダラも、皆、ゴクリと唾を飲み込み、一人カウンターで食事をしているアルファを見る。
アルファは背中に視線を感じていたが、無視して、食べ物を口に運んでいる。だが、冷静を装っているだけで、実際、内心は、混乱している。
「ま、まぁ、いい年齢なんだ、男と女だし、誰が誰とどうなろうと野暮な事は深く追求はしねぇ。だが、アルファは記憶喪失でな、お前の言うシンバってのはアルファなのか、わからねぇけど、シンバって奴は何をやってたんだ? やはりEIBELL STRAINだったのか?」
シェアトがそう聞くと、スピカは、
「知らん」
と、アッサリ答えた。
「おい、知らないって訳ないだろう」
「ほんまに知らんのや。うちはシンバの事、シンバしかわからん。剣かて、うちとは格が違うんや」
「そりゃそうだろ、お前は女だ。それにアルファは強い」
「何寝ぼけた事言うてんねん。うちが強うて、シンバが弱すぎるから、うちとは格が違い過ぎて、わからんのや! うちが知っとるんは、剣術が会得できん落ちこぼれで、教会の二階に住んどったって事くらいや。世界崩壊になる前の夕方に始めてシンバと話したんや。その日は夜、流星雨で世界が崩壊したやろ。親も兄弟も友達も、みんな、はぐれた。死んでしもうたかもしれんし。せやから、シンバが生きとって、うちは嬉しいねん。あれから5年振りの再会で、なんや、運命感じへん?」
流星雨——。
今から5年前、この地に流星が降り注いだ。
燃える星々が、この地を破壊し、攻撃的に降った。
それだけではない、人を喰らう化け物までも現れた。
流星に付着していた生命体が、その命を育むのに、この地の環境に適していた為、急激に成長し、生まれたものだと言われている人喰い——。
まさに人類にとって、恐ろしき日なのだ。
その日を世界崩壊の日と言われている。
そして、その日を境に、イーベルという神が、神々の中で頂点を極めた。
何故なら、様々な宗教があった、この世界で、イーベル教である会堂だけが、流星雨にさえ、無傷のまま残ったからだ。
それだけではない、化け物に立ち向かう神の戦士がイーベル教から現れた。
それがEIBELL STRAINだ。
今ではこの世界に神は一人しかいない。
たったの5年で、この地の神はイーベル、只一人となったのだ——。
「う、運命感じるも、感じないも、お前、口に出すのは恥ずかしい関係なんだろ?」
「そんなん冗談に決まっとるやろ」
スピカのその台詞に、アルファは黙々と食事をしながら、ホッと安心する。
「だがなぁ、やはりお前が言うシンバとアルファは違うだろ。アルファは強い」
「まだそんな事言うとんの? はぁ、うち、もう行く」
スピカはカウンターに減り込んだソードを引き抜こうとして、後ろへ倒れた。
「なんやコレェ!? なんで抜けへんのぉ!?」
「それ、シェアトさんでも抜けなかったんだぜ? もう無理だよ、諦めたら? それにそのソード、デカ過ぎて、女が扱えるもんじゃないだろ」
アルドラがそう言うと、スピカは何故かアダラをキッと睨んだ。
「な、なんスか?」
「アンタが避けるから、うちの大事なソードが、こんなとこに突き刺さって、減り込むんや! 弁償せぇ!!!!」
「そ、そんな、無茶苦茶っス! 避けなきゃオレッチがソードに減り込んでたっスよ! 大体、馬鹿力あり過ぎっス! こんな減り込ませなくても、手加減ってもん知らないっスか? 思いっきり、オレッチを殺す気あったって事じゃないっスか!」
「あほ! アンタが避けんかったら、こんな事にはならんかったんや!」
背後で大声で吠えるスピカに、アルファは面倒そうに立ち上がり、そして、カウンターに減り込んでいるソードの柄を握った。
「無理っスよ、アルファさん」
「そうやで、シンバ、気持ちは嬉しいけど、うちで抜けんかってんで? うちより力のないシンバが・・・・・・」
片手で簡単にソードを引き抜いたアルファ。
シェアト、ウェズン、アルドラは当然だという顔をしているが、アルファの力を始めて見るアダラは口を大きく開けたまま、驚きを隠せずにいる。
スピカは目をこすり、幻でも見たような感じだ。
アルファはあっさり抜いてみせたソードを無言でスピカに差し出した。
スピカは差し出されたソードを見て、アルファを見て、またソードを見て、
「た、頼んでもない事すんなや! 偉そうに! それで強いとでも? フン! うちかて、抜けんでもなかったんやで、本気だせば!」
と、プイッと横を向いて、何故か、高飛車な態度をとってみせる。
「そりゃ悪かったな」
アルファは少しムッとして、ソードをまたカウンターに減り込ませ戻した。
「あーーーー!!!! なんちゅう嫌な奴や! 何も戻す事あらへんやろ! 意地悪な奴やな! もっかい抜いてや!」
「ソレは頼んでるのか?」
「当たり前や! 見てわかるやろ!」
「・・・・・・わかんねぇよ」
アルファは面倒そうに、もう一度、ソードを抜き取った。
大きな刃にアルファの顔が映る。
これだけ無駄に擦っても、研ぎ澄まされた刃は鋭く、美しい。
手入れされた剣に、大事なソードなんだとわかる。
大きさの割には軽く、だがそのギャップが個性的であり、障害であり、このソードを扱うのは相当難しいだろう。
余程、剣の扱いに優れていなければ、無理だ。
本当に女であるスピカが扱うのだろうかと疑問に思う程——。
アルファは、スピカにソードを差し出した。
——いい剣だな。
そう言おうと思ったが、スピカの、
「最初から素直に渡せばええねん」
と言う台詞にカチンときて、
「それでも女か?」
と、呟いてしまった。
「なんか言うた?」
「あぁ。少しは女を生かしたらどうなんだって言ったんだ。ガキじゃあるまいし、ベルトはしめろ。そんなんじゃぁ、男は寄り付かないだろ。お前を女として誰も好きにならない」
スピカはムッとして、アルファからソードを奪い取るように受け取り、
「よぉ言うわ! どんなうちでも好きや言うたんは、どこのどいつや!!!!」
と、吠えながら、走って行ってしまった——。
「・・・・・・どこの、どいつなんだ?」
アルファは疑問を口にし、髪を撫であげた。
「それよりテメーはアルファなのか? シンバなのか?」
シェアトにそう聞かれ、アルファはさぁ?という感じで手を上げた。
「シンバ・アルファとか、アルファ・シンバとかじゃないっスか? あのスピカって子、嘘吐いているようには思えないっス」
アダラの意見に、シェアトも頷く。
「まぁ、アルファで覚えちまったからな、アルファって呼ばせてもらうぜ? アルファ?」
そう言ったシェアトに、アルファは、お好きなようにと、再び食事を始める。
「それから次はへーラの教会をやる! あそこはヘルメスより大きい町だ。町の入り口の用心棒もかなりの戦闘術を持っていると見た。当然、教会もデカい。アルファが仲間の内に、デカい教会は潰せるだけ潰す! 記憶が戻れば、俺達の敵になるヤローだからな、今の内、使えるだけ使わせてもらうぜ、EIBELL STRAINの力をな」
シェアトはアルファの肩をポンポンと叩いた。
「俺は飯さえ食えるなら、それでいい」
アルファは肘をついた姿勢で、食べ物を口に運んでいる。
「実行は明日の真夜中! それまで各自、体を休めておけ!」
シェアトは、そう言うと、酒を片手に、ワイン倉へと下りて行った。
「さて! オレッチは厨房の方を片付けて来るっス! みんなはゆっくり食事してていいっスよ」
アダラは、厨房へと歩いて行く。
「なぁ、アルファ」
アルドラは、アルファの隣の椅子に腰をかけた。
「お前、本当はあの女と、どういう関係だったんだ?」
何も答えずアルファは黙々と食事を続けている。
「本当は覚えてんじゃないの? なーんてな。記憶喪失が覚えてる訳ないかぁ。でも可愛かったよな? 見た目だけならタイプど真中なんだけどなぁ。あの突飛な行動とあのデカい剣を扱う所なんて見せられたら100年の恋も冷めるって。なぁ?」
何の反応もないアルファに、アルドラはつまんなそうに、両腕を上に伸ばし、
「あーあ! 久し振りに女見たら、すっげぇ欲求不満だぜー! 金で女買って遊んでくっかなー!」
と、外へ出て行った。
「あ・・・・・・あのさ! アルファ!」
ウェズンの呼ぶ声に、アルファは振り向く。
「アルファが神の使徒達を倒した時、俺、アルファに酷い事言ったよな? ごめんな?」
「・・・・・・酷い事?」
「『化け物』殺すみたいに、人を殺したみたいだって・・・・・・。数分後には爆弾で、死ぬ奴は一杯いて、その爆弾は俺達の仕業なのに、いざ目の前で死体見ちゃうと、怖気づいちゃって、情けないよ」
「・・・・・・あぁ。別にいいんじゃないの? 俺ができる事はお前ができなくても」
ウェズンは、アルファは仏頂面だが、その表情に隠れて、本当は物凄く優しい奴なんだと知る。
「アルファ、このまま記憶なんて戻すなよな! ずっと俺達の仲間でいてくれよな!」
ウェズンは、そう言うと、食べ終わった食器を厨房へ運んで行った。
アルファは食事を終えると、外へ出て、夜空を見上げ、建物に寄りかかり、腰を下ろした。
ふと妙な女の事を思い出す。
スピカ・Z・ポリマ。
どうして、彼女からは生きているエネルギーを感じるんだろう?
それは、彼女が表情をクルクルと変えるから。
生きている。
彼女は生きている。
こんな世で、不思議なくらい、生きている。
「不味い飯を美味そうに食ってたな・・・・・・」
空に浮かぶ三日月に呟く。
「俺は・・・・・・きっと・・・・・・あの女の事は斬れない・・・・・・」
——何故、斬れない?
——昔、同じ気持ちになったような気がする。
——どこかで、俺はこういう気持ちなっていた。
——でも思い出せない。思い出す必要もない。俺には俺の生き方がある筈だから。
夜に浮かぶ三日月に、目を閉じていく——。
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