第14話

週末 土曜日の12時30分。何もする気にはならない時間だった。出かけるには中途半端だったし、おまけに 曇ってる。全く何もする気にはなれなかった。忙しさを理由に何もできないとかそういうのじゃなくて ただ12時半という中途半端な時間だから 時間だけを理由に何もしなくてもいい そういう時間だった。体調やなまけ 心ではなく、時間だけを理由に何もしなくても許される時間だった。土曜日の12時半なんて本当に中途半端な時間だった 何かを始めるに遅すぎるし 諦めるにはちょっとばかり 早すぎる。 そんな中途半端な本当に中途半端な時間だった。ナマケモノには好ましい時間だったのかもしれない時間だけを理由に何もしなくても許される時間。12時半はそういう時間だった。

この時間に一番 ぴったりくる事って何だろう。遠くには行けないけれど、近いところなら行ける。あまり面倒なことはできないけど、簡単なことならできそうだ。近くの本屋にでも行って女の子に声をかけることぐらいなら できそうだ。ただいつも問題なのが声をかけたくなるような女の子がそう簡単にはいないということだ。いつもそうだ いつも それで困ってしまう。僕がしたいのはナンパじゃないんだということだ。ナンパはいつだってできる。ただ僕がしたいのは 恋だからそう簡単には行かない いつも それで参ってしまう。まぁ恋まで簡単にできてしまうようになったらそれはそれで問題だろうけど。土曜日の12時半 この中途半端な時間 悩ましい時間だ。ナンパには意味がなくて恋はなかなかできやしない 全く悩ましい時間だ。何でもできそうな気分でいたのに結局何もできやしない。結局俺はつまらないやつなんだ。自分で自分をどうにかできない どうすることもできない つまらない男なんだ。彼女のあのちょっとした仕草や表情 それが欲しくてたまらない。彼女の表情のちょっとした違いが、僕を天国にも地獄に落ち着き 落とす。恋は何て力を持っていやがるんだ。こんなに 我を忘れて夢中になれるものなんて他にない。遠くから彼女の姿を見かけるだけで、胸が高まり呼吸を忘れる。彼女のまつ毛のほんのささやかな 動きで心臓が動きを止める。

彼女の唇のなんと 艶やかで美しい桜色。僕はこれ以上に美しい桜色を見たことがない。彼女の唇に吸い付いて全てを吸い出して 自分のものにしたいと思った。あんなに何かを欲しいと思ったことはなかった。

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