春夏秋冬物語り×二人

天川 七

第1話 春夏秋冬物語り×二人

図書館の紙擦れ音は楽し気な 椅子引き合わす春の休日 


黒い字を辿る指先繊細に 吹き込んでくる爽やかな風

 

膨らんだバッグ二つの春夕焼 期待の重み振り子のように


待ちきれず寄り道しよう喫茶店 ショートケーキに小説添えて


甘すぎて抹茶もとめる恋バナは 浮き立つ心羽でくすぐり

 


なけなしの体力削る炎天を 本好きがゆく書店の歩み


買いこんだ参考書達種となり 向日葵級の夢を描いて


照り返るホワイトボード塗りつぶし 創作を知るある夏休み


大海へ潜って探す書き出しを 文字のパズルを集めるために


青空をつめて飛んでくシャボン玉 四つの目には書くという意思



降りかかる紅葉の雨はくるくると 手を振る人よメビウスの輪へ


過去作を火種に燃して秋刀魚焼く いただきますと飢餓が微笑む


秋近しプロット破きもう一度 髪をといてく君の優しみ


焼き芋をおやつ片手に練り直す 時間忘れる空想旅行


茜色染まった空に目を覚ます 努力の跡にくしゃくしゃの文字



学校の曇りガラスに息を吐き あなたに書いた隠しメッセージ


ホッカイロしのぶポッケと待ち合わせ スマホ開けば着信が鳴り


初めての感想届き大騒ぎ 寒さ忘れて駅を飛び出し


手袋をわけて歩いた帰り路は 記憶の中で無邪気にひかり


にらめっこ冴えた日差しが画面撫で 作家気取りが目頭をもむ

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