第65話 いつの日かもう一度、桜の木に願いをー3

 ~作戦前。


「回復薬はMAXまで持ちました!」

「蘇生の粉塵も持てるだけ持っていくが……これ糞レアなんだよな。お前はもってねぇよな」

「それ買える?」

「いや、特殊素材の錬金。素材自体のレアリティも高いから受け渡し不可……しかも3つ持つのが限界」

「じゃあお前が死んだら終わりか」

「あぁ、だから死んでも俺を守れ、肉壁一号。それと…………はぁこれも持っていくか」

「それ何?」

「絶対使いたくないアイテム」

「ほう……教えて?」「い・や・だ」「なんだよケチ」



~現在



『――少しだけ……本気を……出そうか』 


 剣を地面に突き刺して直後鳴り響く風鈴の音、無の世界。

 に加えて、すぐさま剣を抜き振り切った。


『重ね合わせ。林と風……』


 直後飛んでくる空虚の太刀・風神。

 突然音のない世界が起きたことにより、反応がほんの一瞬だけ遅れた蒼太と龍一は、その空虚の太刀に対して受け身になるしかなかった。


「しくった! 肉壁!! 蘇生おなしゃ!」


 だがそれでも反応できた蒼太は、龍一を突き飛ばす。

 そして背後から空間を無視する刃に切られ絶命、HPが0となる。


「ちっ! ――蘇生の粉塵!」


 すると周囲に真っ白な粉が巻き散る。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

・蘇生の粉塵 

レア度★★★★★(エピック級)


錬金術師が編み出した技術の結晶。

・効果:使用時に周囲10メートル以内のパーティメンバーを復活させる。

ただし死亡確定から5秒以内に使用しなければならない。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「カハッ! 母さんと父さんが手を振ってた!!」

「はやく立ち上がれ、アホ!」


 ポリゴンになりかけた蒼太の体が蘇生し、立ち上がる。

 このゲームでの数少ない蘇生アイテムの一つを消費し、ミスを帳消し。


「重ね、火龍丸に聞いてたけどくっそ面倒ですわ! まじで普通に死んだの悔しいんだが!!」

「初見はしゃあない。次は受けるぞ」

「うっす」



『重ね合わせ。山と風……』



「うわ、それは反則では?……」

「山は完璧カウンター。近づいて殴るな……風は遠距離、近づいて殴れ……矛盾かよ」


 次々飛んでくる空虚の太刀をタイミング良くJUSTし、合間に回復する蒼太と龍一。

 しかし一向に終わらない攻撃にジリ貧と判断し、一転攻勢。

 

 蒼太の右手振り下ろし。

 

 が、当たり前のように、いともたやすく弾かれ、流され、カウンターの刃が迫る。


「はっ! カウンターがくると分かってれば!! 余裕で合わせれるんだよ!」


 そのカウンターに左手に握る剣でさらにカウンター、受け流し、切り返す。


「秘儀! COH×COHUNTER!! そろそろ連載再開おなしゃ……ふぁ? カウンター返し返し!?」


 だが龍王はそれすらも刀の柄頭で弾き返し、両手を万歳のような状態で無防備に腹を見せる蒼太を見る。


 あ、死んだ。


「じゃあカウンター返し返し返しで!」

「ナイス! 助かる!」


 が龍一がすぐさまカバーする。

 それからも幾度となく放たれる重ねに苦戦しながらも善戦を続ける二人。

 戦えば戦うほどに強くなる。

 技を見れば見るほどの上達し、反撃までのラグを失くす。


 そこにいるのは紛れもなく。


「……うひゃぁぁ! 死ぬ死ぬ!! おい、調整班仕事しろ! ノリと勢いでゲームを作るな! 寝不足を言い訳にするな! 納期を言い訳にするな!」

「ちょ、ばか! こっちに逃げんな! 一人で死ね!」


 ゲームを楽しむ二人の少年。


 それを見てシルヴァは涙を流しながら……でも笑った。


「ははは! 楽しそうじゃな」

「はい。二人とも実に……」

「ふふ、いや二人ではない。……まるで昔に戻ったようじゃ。トワとディンを鍛えると毎日楽しそうにしていたあの日のように……見よ。旦那様を」



呵呵呵かかか! 重ね三層! 風林火!!』

「それはやりすぎでしょうがぁぁ!! ぬぁぁぁぁぁ!! 十二連撃!! 全部パーフェクト決めてやるわぁぁ!! ちょ、え? 空虚の太刀も同時!?」

「もう粉塵二つしかねぇ! 死んでも死ぬな!!」

「ありったけを!! 今ここで!!」


 

「実に楽しそうに剣を振っておる。のう……火龍丸」

「…………は˝い˝。実に」


◇蒼汰視点


 戦闘開始から30分ほどが経過しようとしております。

 まず一言いうならこのキャラ作った奴は性格が終わってる。

 いや、性格とは時代背景とかはすごい好みだよ? みんなのために戦う王様ってめっちゃかっこいいと思う。

 が、しかしなんですかこのスキル構成は。

 

 遠距離の風、近距離の火、カウンターの山、なんかうざい林。

 しかも同時発動可能とはこれ如何に。

 

「はぁはぁはぁ……何発かは入れたけど……これ倒せんのか?」


 龍王にはHPがない。

 その理由は分からないが、天空のトワイライトの雑魚的からボスは全員HPがあった。

 なのに龍王にはHPらしきものがない。

 それが何を意味するのかは分からないが、特殊勝利系であることは確定だろう。

 

『……よくぞ……我が秘儀。風林火山……よくぞ見極めた……免許皆伝と言いたいが……最後の試練が残って……おる』


 すると龍王が一歩引いて静かに語り出した。

 どうやらあの技達を一定回数受けて生き延びたらとかそういうのかな? もしくは時間かもしれないが細かいことはまぁいい。

 確かに俺達はあの技を見極めた。まぁそれまでに火龍丸達に死ぬほど見極めさせられたというのもあるが。

 

「……なんかやばい雰囲気なんですが」


――――コメント――――

・第二形態きた?

・風林火山のその先といえば。

・ここまでで十分すげぇけど……。

・がんばれぇぇ!!

・龍王倒して100億てにいれよう!

・今一番熱い。

・トレンド一位おめでとう!

・かてぇぇ!!

・余裕っしょ

・あまり強い言葉を使うなよ。

・さて、紅茶でもいれようか。

   ・

――――――――――――


 すると龍王が、その眼の眼帯をゆっくりと取る。

 その奥には光り輝く目があった。

 真っ黒な目と光の眼、その両目で俺達を真っすぐとみる。 


『この世の全ては……かげひかり。夜に輝く光のように……陰あるからこそ光は強く世界を照らす……』

「解読頼む」

「いやわからん」


 俺達は何かわからないが悪寒を感じ、全力で警戒する。


『それが陰、陽すなわち太極の極意なり……止めて見せよ。超えて見せよ。トワ! ディン! これにて終幕! 我が至高を、我が極致を!!』


「こっからは情報なし……集中しろ!」

「初見クリアはゲームの花よ! ばっちこいや!」


『……知りがたきこと陰の如く……闇堕のツクヨミ』

 

「――!?」

「――!?」


 突然俺達の視界が真っ暗になる。


「龍一! 死ぬかも!」

「あぁ!」


 直後、文字通り完全に闇になる、何も聞こえないし、何も感じないし、何も見えない。

 横にいたはずの龍一もいない、手に持っていたはずの刀の感覚もない。なんだ……これ。


 怖い。


 まるで闇に落ちていくようで……怖い。

  

 なんでもいい。

 なんでもいいから何か情報をくれ。

 なにか……光を……。



 いや、何かが見える。

 

 光だ。 

 

 眩しくて……目を背けたくなるような……あれは……眩い……。


「「――!?」」


 気づけば世界は光を取り戻し、俺達は前のめりに倒れそうになっていた。

 顔を上げれば先ほどの位置で、刀を終おうとしている龍王。

 つまり攻撃は終わり、俺達は切られていたようだ。あぁ、まじか。ぬかった……。何が起きたかもわからねぇ。


――――コメント――――

・はぁ?

・なにそれ

・はい、糞げーでした!

・まぁ100億ってそういうことよ

・ギリギリになったら絶対無理な攻撃と。

・やはりアテム

・おい待て、天龍の時もそうだったぞ

・でもこれは流石に

・はい、くそーーー!!

・GG

・いや、まぁ夢は見れた

・おつでした!

・次頑張ろう! GG!

   ・

――――――――――――



『重ねて、天地開闢……天照大神アマテラス


 そして俺と龍一のHPは0になった。

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