第40話 目指せ、龍人の里ー1

――――コメント――――

・おじゃ

・おじゃ

・待ってました

・今日も相変わらず裸なんですね。

・黒豆ちゃーん!

・龍人の里、さっそく結構色んな人がいってるみたいよ

・さぁ、張り切ってまいりましょう!

――――――――――――


 さすが有名配信者に足を踏み入れた俺、一瞬で同時接続が一万近くまで上昇したぞ。

 正直まだちょっと緊張するが、全員俺のセクシー配信を見に来たと思えば愛すべき変態だなという気分で落ち着ける。

 

 相変わらずスカイディアでは、歩いているだけでも結構話しかけられるので手を振りながら答えていく。

 スターとはこんな気持ちだろうか、メンドクサイから早く地上でモンスター達と戯れたい殺し合いたい


「黒豆、お前は相変わらず俺の頭の上が好きだな」

「ワン!」


 だが、黒豆にはとても助けられている。

 実は、霊峰イカロス山頂は、防具やアイテムで熱無効・小以上を付与していなければ熱によるダメージを受けるのだ。

 溶岩の上ほどではないが、HPがドットで減っていく。

 のだがなんと黒豆が近くにいることによって俺に付与される加護の黒炎の加護はそれを無効化する。


 つまり裸に対してのシナジーがすごいのである。

 聞くところによると氷系統のステージがこのタイタニア大陸の北のほうにあるらしいがそこでもおそらく無効化されるのだろう。


「これも運命ってやつか? 俺がお前を見つけたの」

「ワン?」

「はは、ただの偶然だな。んじゃいくか!」

「ワン!」


 そして俺は霊峰イカロス麓へと転移門から移動した。

 龍人の里は、ここからイカロスをぐるっと回って向こう側にあるらしい。

 結構距離があるし、この山を越えてから圧倒的な難易度に切り替わるらしいが楽しみだな。


 こちとら頂点にすら認められた勇者よ、モブ敵ぐらいに苦戦するわけあらず!!







――――コメント――――

・wwwww

・フラグ回収早すぎワロタ

・天龍にあの戦いしたのに、俺でも勝てる相手に負けるとはこれいかに

・★1武器だからですかねー。

・圧倒的DPS不足ですね

・物量に押しつぶされたパンイチ勇者

・火蜘蛛はめんどいし、きもいよねー。

――――――――――――


 うん、モブ敵強い……。

 いや、強いと言うか固い。俺が戦ったのはフレイムスパイダーという名のキモさを炎を纏うことで若干抑えた虫っぽい敵である。

 攻撃モーションも平凡だし、戦闘自体は余裕なのだがいかんせんダメージが足らない。圧倒的DPS不足である。

 

 倒すのに時間がかかると、どんどん仲間が増えていき最終的には避けるスペースが埋め尽くされて死亡。

 ……になる前にとりあえず今は逃走した。

 ってか前死んだ時にわかったが、俺が死んだ場合は黒豆はそこに残り続ける。

 一応こいつもモンスターなので、モンスターに狙われたりするんだろうか。だが当たり前だがこの世界のモンスターは死んだら復活できない。

 黒豆があの蜘蛛共に咀嚼されるのはちょっとショッキングすぎるし、既に相当愛着が湧いてしまっている。


 なので、ソロ活動中はそう簡単には死ねない。

 しかし困った。

 さすがに★1の鉄の剣と骨の剣では、これ以上進むのは中々厳しいか。


 ピロン♪


 む? 龍一からゲーム内メッセージか。

 えーっとなになに?


――――メッセージ――――

FROM:ドラゴン


龍人の里たのちぃー!! 

解放してくれてサンキューな。

で? お前はまだ?ww

まぁゆっくりこいよww

――――――――――――ー


「…………」


『ユーザをブロックしますか?』

▶はい。


 いつ以来だろう。

 ここまで殺意を覚えたのは。

 

 中学の頃、試合後にねちねち一時間ぐらい説教食らった時以来だろうか。

 あのチクチク大魔王、人を煽る才能だけは天下一品である。

 フィーバーさん的にいえば、煽るのが好きなのだろうか、糞みたいな才能だな。

 あれか、わさびサーモンの仕返しか。クールぶってる癖に子供みたいなやつだな


「ふぅ……深呼吸深呼吸」 


 be cool、be cool、冷静に、冷静に、煽りは反応したら負け。無視だ無視……。







「ぬらぁぁぁ!」

 

【火狼を撃破! 小炎骨×1を獲得!】

【火狼を撃破! 小炎骨×1を獲得!】

【火狼を撃破! 小炎骨×1を獲得!】

 

「ふんぬらぁぁぁばぁぁぁぁぁ!」


 ピッケルでガンガンガン!!


【炎石×1を獲得!】

【炎石×1を獲得!】 

【大炎石×1を獲得!】


「どっせぇぇぇぇいいいよっしゃぁぁぁぁ!! 死ねぇおらぁぁぁ!!」


【大火狼を撃破!】


 怒りのアイテム集めRTAをぶちかまし俺は素材を集めに集めた。

 今なら怒りで目覚めたスーパーなあいつの気持ちもわかるわ。

 





「ビビえも~ん!! ドラゴン君がいじめるんだぁぁ!! 地球破壊爆弾をあいつの頭上におとしてよぉーー」

「ワンワン!」


「あらあらあら、勇者様と子犬ちゃんのお帰りね。泣きべそかいてどうしたのよ」


 そのまま俺はスカイディアへと帰ってきた。

 クラン・ヘファイストスへと向かって武器を調達するためである。

 

「しかし見たわよ、天龍戦。震えたわ、というかそそり立ったわ」

「何がですか」

「ナニがよ」

「これ以上は聞かないことにします!」

「うふ♥」


 ナチュラルにセクハラを受けた気がするが、俺は配信中なので華麗にスルーさせてもらう。

 そして集めた素材をありったけと、骨の剣と鉄の剣を前に出す。


「武器が欲しくて! 霊峰イカロスの向こう側に行っても戦えるぐらいに。これでつくれるっすか?」

「あら、結構集めたわね。これなら……そうね……うん、炎系の太刀ができるかしら」

「まじですか! ぜひ!!」

「ええ、勇者様の御頼みとあれば最優先で」


 そういって鍛冶場へと俺とビビヤンは向かう。


「龍人の里にはもういった?」

「今その話題はとてもセンシティブなんでNGです」

「あらそうなの? 明日当たり私もちょっと繰り出してみようかなって思ってるのよ」


 既に龍人の里には多くのプレイヤーがなだれ込んでいる。

 なのに解放した俺がいけないのはこれ如何に。

 ムカつくので龍人の里に関する情報は完全にシャットアウトすることにした。ネタバレNGで。


「霊峰イカロスの向こう側は一般的なプレイヤーなら★3以上の武器が推奨されてるわ、★1は流石に無謀という奴ね。いかにPSがあってもダメージが通らなきゃ無理よ」

「身をもって体験してきました」


 すると俺がたくさん集めてきた素材を見ながらビビヤンが考え込む。

 このアイテムで何ができるか、おそらくビビヤンの頭には全て入っているのだろう。

 このゲーム、ほぼ無限レベルでアイテムの組み合わせがあるので日夜、新しいレシピが開発されている。


「この素材なら……モンスター系統は★3まで余裕。鉱石は……ちょっと足りないけど、★3以下のアイテムは受け渡し可能だから、ちょっとだけおまけしてあげる」

「何から何まですんません!」

「うふ♥ いいのよ。私ね、嬉しいの。私の見る目が間違ってなかったってわかったし、目を付けたメンズが成長していくのは心躍るものよ。素敵なメンズに尽くすのが乙女の喜びなんだから」

「性自認については、炎上する可能性が高いので触れないでおきます」

「あら。もう立派に配信者ね、炎上には気を付けるのよ。ほんとに怖いんだから」


 そして鍛冶場で俺はビビヤンの鍛冶を眺める。


 トントンカンカン。


 相変わらず見ているだけでも心奪われそうな見事な鍛冶。

 この世界の鍛冶スキルが人気なのもわかるな。

 ただ没頭して刀を作ると言うのはこれもなかなか面白そうだ、いつか挑戦したいな。


 するとものの10分ほどで二つの刀が用意された。


「これが★3の武器か……」


 燃えるような紅き刃。

 片方は火狼の素材をふんだんに使う骨系に属する炎系統の刀。

 もう一本は、火山でとれる鉱石を使った鉱石系に属するやはり炎系統の刀。


「早く試し切りしてぇ……」


 辻斬りとはこんな気分だったんだろうな。


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・狼刀『炎』 攻撃力:35、炎属性:5

レア度★★★(レア級)


火狼の骨と牙を使った太刀。荒々しく狼のような獰猛な刃をしている。

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・鉄刀『赤』 攻撃力:30、炎属性:10

レア度★★★(レア級)


火山地帯の鉱石を大量に使用し、冷やしてなお熱を帯びる赤き鉄刀。

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