心ひき裂かれて

 やっと角川の作品を紹介できます。リチャード・ニーリー。面白いんだけどなぁ。ちょっと古いのかなぁ。


 

   ???シンキングタイム???


 今回も難題。難しい問題に挑むには、類推という手法があるのです(偉そう)。

 そうです、和訳企画の今シーズンでは『鏡は横にひび割れて』を扱っています。【鏡+ひび割れた+横に】が正解だったことをふまえれば【心+ひき裂かれる】でしょう。

 なんだ、いけるじゃないか。


 待てよ……「心(は)ひき裂かれて」なのか? それとも「心(を)ひき裂かれて」なのか? アー気にしないようにしよう。


 まず「心」は“heart”だな。うん。

 で、問題は「ひき裂かれる」か……

 さきいか、さけるチーズ、八つ裂き……

 そうか、「裂く」は元々、一つのものを引っ張って細かくしていくことか、とあらためて日本語の勉強。あ、これも正確なところはみなさん、各自でお調べになってください。

 待った。「分裂」は? あ、「裂いて」「分ける」ことか。


 たぶん、~edなんだよ。焼きチーズがベイクドチーズみたいに、裸のポーズがネイキッドポーズみたいに。

 チーズからの連想でスライスチーズ、スライスが浮かんできましたが、これは「切る」「切断」か。

 分裂のほうはなんか出てきそうなんだよな……出てこない。



 というわけで

【The Heart Sliced】

 で、どうでしょう?



 正解は

【A Madness of the Heart】

 でした。



 おや……

 いや待て“a”ってなんだ、“a”って。“the”じゃないのかよ。

 そして、類推作戦がものの見事に見当違い。

 にしても“madness”とは? いや、マッドネスはわかる。マッドでしょ? マッドサイエンティストの。不適切っぽい表現が浮かぶので、迂闊に書かず辞書をひこう、そうしよう。


 madness 狂気、狂乱状態


 ふむ。これはあれだな。直訳よりも内容にふさわしい日本語をチョイスしたパターンだな、おそらく。というか、この邦題は……いや、作品の中身に踏み込むのはやめておきましょう。





   ★★★作品情報★★★


 心ひき裂かれて(リチャード・ニーリィ著/佐和誠訳/角川文庫)


 冒頭で「やっと角川の作品を紹介できます」としたものの、おや、絶版なのか……な?

 リニューアルされた角川公式の文庫サイトから角川文庫解説目録2022を見てみましたが「作者名 に」にはニーチェはあるけど、ニーリィはないです。

 ということは『オイディプスの報酬』も絶版なのか。すると、今、容易に入手できるのはポケミスから出てるデビュー作の『愛する者に死を』になるのでしょうか……いや、あれだって出たの……

 頼む、角川さん、復刊してくれ。『心ひき裂かれて』だけでもいいから。



    !!!単語!!!


 madness 狂気、狂乱状態

 division 分裂、相違、不一致

 split 分裂、仲間割れ

 slice (パン・肉など)を薄く一枚切り取る

 chop (斧・なたなどで)たたき切る

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