少年と少女、森の奥深くにて

 太陽系、地球からはるか離れた星系。


 そこに存在する惑星エランの西方、ゴディカ大陸の暁闇。


 大陸で覇を唱えるエイダート公国に程近い森の奥深くで、一角の空間が揺らいだ。


 浮かび上がった極小の銀色の球体は、徐々に大きさを増していく。森の変化に驚き、一斉に羽ばたく鳥達。

 

 球体は接地した瞬間に消え、その中から黒髪の少年と銀髪の少女が姿を現した。


 周りを見渡した銀髪の少女、レラがポニーテールをふるり、と揺らしながら少年に話しかけた。



「ユウ、今回は何故呼ばれた? 何を為す?」

「レラも一緒にいたよね?」

「私の役目は、そこではない」

「言い切った!」


 もう。


 ユウと呼ばれた黒髪の少年は、呆れ交じりに瞳を伏せ、思い起こすように説明を始めた。


「んー、『星の意思』を通して原因の始まりから見てきたんだけど」

「ふむ」

「この星、『エラン』の環境を整えている『神樹』に目をつけた国があって、囲い込んで力をここ数十年吸い上げ続けたみたい。その結果、星が悲鳴を上げたんだ」


 眉をひそめ、首を傾げるレラ。


「……数十年で揺らぐ星など、どうにもならないだろう。寿命僅かな星の声が何故届いた?」


 ユウと行動を共にし、星々を巡ってきたレラ。そんな二人が、もともとその星が持つ寿僅かな星の叫びや悲鳴が聞こえた事など一度もないのだ。

 

 突発的な事象に星がダメージを受け、星が叫びを上げる。そしてその声にユウが反応し、レラとともにその星に降り立つという事がほとんどなのである。


 そこにユウが、言葉を継いだ。

 

「本当はね、星の命は十分にあった。だけど」


 指を一つずつ折り曲げながら、レラに説明する。


 

 神樹からの搾取による国力の向上。

 効率的な搾取手段の開発。

 計画性のない搾取により、漏れ出る力。

 漏れ出た力を帯びた。周辺の生物の変異。

 神樹を目指す生物と国との戦争。

 結果、神樹からの更なる搾取によって……



「ユウ」


 ユウの言葉の途中で、レラが言葉を挟んだ。


 くるぅ。


 それに合わせてレラの腹が可愛い音を立てる。


「私にひもじい思いをさせるな」

「あ、はい。飽きてお腹も減ったんだね」


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