第13話 王国の女魔法騎士
「あらアリシア、何があったのかは知りませんけれどひどいお召し物ね?」
ずぶ濡れのドレスを着た私を見て、見下すようにロザラインが言う。
ロザラインは余裕を見せているふりをしているが、その表情は引きつっている。
――まさか、今回のことはロザラインが?
考えたくはなかった。
「ロザライン様、アリシア様に失礼だと思いませんか?」
私をかばう様に反論するマリーに、
「あら、アリシアは召使の躾も悪いのね?それで王女が務まると思ってますの?」
くすりと不敵な笑みを、口元に浮かべるロザライン。
「マリーは召使ではなく、侍女です」
私は訂正する。
「侍女なら尚更のこと、弁えることね? 我がアメジスト公爵家に逆らったらどうなるか、覚えていらっしゃい」
圧をかけるように、ロザラインの紫の瞳が凄みをきかせる。
――その時だ。
「アリシア様、ロザライン様。この度の事態、大変なことになっていますね。特にアリシア様は、大変危険な目に遭われたとか」
騎士服を着た金髪に緑の目の女性が、進み出て言った。
「失礼いたしました。私は王国魔法騎士のミシェル・クリスタルと申します。非常事態につき、アリシア様とロザライン様の警護を申し使っておりますので、お見知りおきを」
そう言ってミシェルと名乗った女性は、私たちの前に跪いて礼をした。
「――ところで、今回、より警護が必要なのは、アリシア様のほうと思われますので、私はそちらの警護に専念いたします。ここは、部下の者に任せます。それで良いですね?」
そう言ってミシェルは、ちらりとロザラインに視線を向ける。
「――っ」
ロザラインはきつそうな表情を崩さずとも、出る言葉が無い。
「行きましょう、アリシア様」
「――ありがとう、ミシェル。私とマリーだけではどうしようもなかったわ」
私はミシェルにお礼を言う。
「申し訳ありません、アリシア様」
マリーが平謝りする。
「――そういうところ、変わってないわね、マリー。貴女だって、ムーンストーン男爵家の令嬢だし、魔法学院は主席で卒業しているんだし、もっとプライド持っていいのよ?」
「そうでしょうか?」
「それくらいじゃないと、アリシア様は守れないわよ?」
ミシェルの言葉に、私の脳裏にアークの姿が浮かぶ。
――アーク。彼は無事かしら……。
そう言えば、さっき彼とは抱きあってしまった。――勢いというか、不可抗力だとはいえ……それに。
別れる時の、約束のキス。手だけれど、彼の感触が、忘れられない。
――アーク。どうか彼が無事で戻りますように。
私は再び、小さく祈った。
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