第12話 彼の無事を祈って

 魔宝石の薔薇色の光の指し示す方向を辿って、私たちはペンダントの行方を探していた。屋敷を出て、小雨の降る庭を抜け、その一角にある古びた塔――その塔の最上階に、光の筋は続いていた。




 塔の周りにはパラパラと、王国魔法騎士たちが集まり始めている。


「アリシア様!ご無事だったのですね!」


 私の姿を見て跪く魔法騎士たち。




「ええ、心配かけてごめんなさい。アーク殿下が私を守って下さったおかげで無事ここまで来れました」


 私の言葉に魔法騎士たちは、アークに向けて言った。


「アーク殿下、アリシア様を送り届けて下さりありがとうございました。ここからは私たちがお守り致しますのでご安心ください」




「承知した。アリシアは、いえアリシア王女は――」


 アークは、私の手を握りしめる。彼の手の暖かさが伝わってくる。




「大変危険ですから、どうかアリシア様は私たちと共に戻られるように」


 魔法騎士の一人が進み出て言う。




 ペンダントを持たない今の私は、魔法が使えない。


 本当はアークについて行きたいけれど、今の私では足手まといになってしまう。きっと、アークを危険な目に遭わせてしまうだろう。




 魔法騎士団の皆にも、迷惑をかけたくない。




「分かりました。ローズクォーツのこと、アーク様と皆に任せます。――アーク様、どうかご無事で」


 私がそう言うと、アークは私の前に跪き、そして手にキスをした。


「必ず見つけて参ります、アリシア王女」


 アークは魔法騎士たちと共に、塔の中に入っていった。






「アリシア様!ご無事でしたか!」


 マリーは私に駆け寄ってくると、雨の中膝をつく。


「大丈夫よ、マリー。私のことはアークが守ってくれたから。――それよりマリー。あなたはどこへ行っていたの?」




「申し訳ありません!恐れながら、アリシア様の荷物を探させて頂いておりました。アリシア様はアーク様とご一緒でしたし、それとアーク様の部下のマークさんという方に、耳打ちされて――」




 平謝りするマリーに、私は、


「マリー、顔を上げて?私は大丈夫よ」


 励ますように言った。


「アリシア様――」




「それで、荷物は無事なの?」


「ええ、ドレスもアクセサリーも無事見つかりましたわ」


「良かった!あとはペンダントだけね」


「アリシア様……」


「大丈夫。きっとアークが見つけてくれるわ」




 ――そう、今はアークを信じよう。


 彼の無事を小さく祈りながら、私はマリーと共に屋敷に戻った。

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