第3話 戸惑いと約束

「お父様!婚約者ってどういうことですか?私、一言も――」


 私が戸惑いながら言うと、お父様は、


「こほん!アリシア、アーク殿下はだな、婚約者であるアリシアのことを少しでも知りたいとお考えになり、わざわざローズクォーツへの留学を決められたのだ。婚約者同士、仲良くするのだぞ、アリシア」


機嫌よく笑いながら言った。




「お母様、私は――」


 私はお母様に、助けを求める。


「アリシア。わたくしが陛下と婚約したのはいまのあなたと同じ15歳の頃。親同士が決めた結婚でしたが、王族の務めと思い覚悟しておりました。アリシア。あなたも王族としての自覚を持たなければなりませんよ」


いつになく厳しいお母様。




 私は、ちらりとアーク殿下のほうを見る。


「アリシア王女、ご心配なさらないでください」


 アーク殿下のサファイアブルーの目が、私を見つめる。


「私は、どんなことがあっても、貴女のことをお守りしますから」




 ――信じて、いいんだろうか。


 アーク殿下とは、初めて会ったばかりだというのに。


 私はまだ、戸惑っていた。




「お約束しますよ、アリシア王女」


 真剣な表情で、アーク殿下は言った。




「――分かりました」


 私はお父様、お母様に向かって言った。




 そう、これは私を大切に育ててくれたお父様、お母様との約束。


 私がアーク殿下を好きになれるかは、分からないけれど。




「よし、そうと決まれば、話は早い」


 お父様が言った。


「二人には、一緒の馬車で出発してもらおう」




 ええっ!?お父様!?




「実はもう、用意させてあるのだ。婚約者同士仲良くするのだぞ!」




 ――聞いてないんですけど!?

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