魔法王国の王女なのに魔法の使えない私が婚約者の王子様に溺愛されています
りむ
第1話 お母様からもらったペンダントが、きっと私を守ってくれる
「アリシア様、出発の準備は全て整いました」
侍女のマリーがそう私に声をかける。
「ありがとう、マリー。出発する前にお父様、お母様に挨拶をしてこないと」
ドレスに着替えた私は、そう言って机の上にある王家の紋章が入った銀の宝石箱から、ペンダントを取り出す。
薔薇色の宝石がはめこまれたペンダントには、ローズベリー王家の紋章が刻まれている。
これは、ローズベリー王家の王女が代々引き継いでいる王家の証のペンダントだ。
そう、私、アリシア・ローズベリーはローズベリー王国の王女だ。
お父様は国王リチャード16世、お母様は王妃エレノア、お父様の従姉にあたる。
でも、私には秘密があった。それは、ペンダント無しには魔法が使えないこと――。
ここ、ローズベリー王家の王侯貴族なら、誰しもが魔法を使える。
魔法を使って国を、民衆を守る。それがローズベリー王国の王侯貴族の責務だ。
魔法を使えるのは王侯貴族だけで、平民には使えないということになっているからだ。
でも、私は子供のころ、いくら家庭教師から魔法の使い方を教わっても、魔法を使うことができなかった。
そんな私に、お母様は王家の証のペンダント、ローズクォーツを渡したのだ。
「アリシア。このペンダントは今日からあなたのもの。このペンダントがアリシアをきっと守ってくれるわ」
不思議なことに、ペンダントを手にしたその日から、私は魔法が使えるようになった。
お父様もお母様も、喜んでくれた。
――でも。
ずっと不安に思っていた。私が魔法を使えるのは、このペンダントに秘められた力のおかげなのかもしれないって。
もし、そうだとしたら、なぜ私は――。
でも。
お父様、お母様は私のことを大切に育ててくれた。
それだけで、十分よ。
そう思い、私はペンダントを身に着けた。
私は王立ローズウォーター魔法アカデミーに入学することになっている。
ローズベリー王国の王侯貴族なら誰しもが入学することになっている魔法アカデミーだ。
ペンダント無しでは、魔法が使えないことでいろいろ不利になることがあるかもしれない。
――それでも、私は頑張るから。
だって、お父様お母様が大切に育ててくれたんだもの。
「行きましょう、マリー」
私はお父様、お母様に挨拶するために、部屋を出ていった。
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