第2話 クエストを受けよう
かくして異世界生活が始まったわけだが、ヤマト自身まだこの街『ノーブン』のことどころか、この世界についてもまだまだ何も知らない。
なので、話しかけてきた男性からいろいろと聞こうと思ったのだが、彼は忙しいということなのでリュックからノートを取り出し、『ノーブン』の街の地図を大まかに書いてもらった。
「この地図の中だと教会と酒場兼冒険者ギルドっていうのが気になるな。
よし!まずは、酒場兼冒険者ギルドに行って冒険者になれるか聞いてみよう。」
しばらく自転車を漕いでいると、酒場らしき石造りのなかなかに大きな建物が見えた。その建物の近くまで来ると、何やらそこにはこんな看板がささっていた。
『魔王軍討伐のため 義勇兵もしくは冒険者の 新規加入受付中』
「こんなアルバイトみたいに募集しているのか。てか、冒険者って書いてあるし、やっぱりここが酒場兼冒険者ギルドか。」
そんなことを呟きながら酒場の扉を自転車と共に押した。
「あっ、受付ならこちらでーす!」
その可愛らしい声に導かれるように野上ヤマトは、受付に向かった。
「冒険者の新規登録の方ですか?」
「は、はい。」
そこには、少し日に焼けた白い髪の女性がいた。今までヤマトが肉眼で見てきた誰よりも美人だったため、言葉を詰まらせた。しかし、この現実離れした麗しい見た目をした女性により、彼はより一層異世界に来たという感覚が強くなった。
( 異世界にはこんなに顔がいい子ばっかりなのかぁ!? )
鼻の下を長くしながら、そんなくだらないことを考えていると。
「すいませーん!ボーっとしてますけど、話聞いてますか?いま大切な話をしているので聞いて欲しいのですがー。」
「す、すみません。もう一回聞かせてください。」
「次は聞き逃さないでくださいよっ。...ここでは冒険者ギルドと義勇兵の募集をしています。義勇兵になるには冒険者として一定以上の能力をもっている人しかなれないので気を付けてください。 お兄さんはまだ冒険者として登録されていないので、こちらの紙にサインと20ゴールドの契約金をいただきます。」
「お金とるんですか?」
「はい。20ゴールドですっ。」
この時にヤマトは、自分自身が一文無しだということに気が付いたのだ。その途端、恥ずかしさ襲いでここからいなくなりたいと思ったが、なんとか顔を真っ赤にしながら話を続けた。
「あっ、あの。俺、お金持ってないんですが...」
「なら、その背負っている大きなカバンの中身を売ってみるのはいかがでしょうか。」
「どこで売れますかね?」
「魔物の素材なら、向かいの酒場と同じ石造りの建物の取引所で売れます。紙や本類ならこちらを出て右の方に行くとお店の前に本が置いてある場所があるのでそちらの本屋で売るといいですよー。他の物になると万屋に売るのがいいとおもいます。」
( リュックの中は、教科書、ノート、筆箱だから行くなら本屋だな。 )
「ありがとうございます!」とヤマトは言うと、砂埃を舞い上げる勢いでギルドから出ていった。「まってますよー!」と言う受付のお姉さんの声が聞こえてはいたが今は、ここからすぐに立ち去りたいと強く思うヤマトだったので、返事をする間もなく道をとてつもない速さで自転車を走しらせた。
「そんなにいそがなくても...」と受付の女性は、口からもらした。
息を切らしながら本屋に着くと、そこから一人の老人が顔を出した。
「お兄さん、うちに何か用かい?」
「はい。こちらを売りたくて。」
と言うとリュックの中に入っていた教科書を全て本屋のお爺さんに渡した。
「こっ、これは!」
( たのむ!高校の教科書だが売れてくれっ。 )
「すごい!こんな綺麗な紙で作られた本がこんなにたくさん。」
「これって売れますよね...」
「もちろん。何が書いてあるかはわからんが、こんなにきれいに作られた本ならきっと素晴らしいな事が書いてあるのじゃろう。 そうじゃな、この本全部で10000ゴールドでどうじゃ。」
( そこらへんの本が一冊100~150ゴールドってことは日本円に換算で0が一つつくと考えると... 5冊で10万円!?)
「そんな高値でいいんですか?」
「これじゃあ足りないくらいじゃ。もってけもってけ!」
野上ヤマトは 生意気だが 10000ゴールドを 手に入れた 。
こうして生意気にも大金を手に入れた野上ヤマトは、意気揚々とギルドに戻った。
「お待ちしておりました。 ではこちらにサインと20ゴールドをいただきます」
ヤマトは、きっかりの20ゴールドとサインを書いて渡した。
一度サインを書いた紙を見るともう一度ヤマトの方に顔を向けて話し始めた。
「はい、これでヤマト君は冒険者の仲間入りですっ。て言いたいところなんですが
ヤマト君が冒険者としてやっていけるのかこちらのクエストを受けてもらい、このクエストを無事に達成すれば、冒険者として認められます。それでは、頑張ってください!」
野上ヤマトはこんなにも簡単に申請できることにおどろいていたが、彼はまだ知らない剣の重さを、異世界に来たところで腕力が上がっているわけではないと。どうする?野上ヤマト!きみが持って振り回せるのはせいぜいゲームのコントローラーぐらいだっ。
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