第1章

Divive1「動き出す歯車」

 地球の中心部で発見された鉱石「インフィニットストーン」

 無限とも言えるエネルギーをもたらし世界全体にで問題視されているエネルギー問題を解決に導き、これを利用し新たなる居住区として世界各地に人工島が開拓された。それと共に技術が発展し進歩した時代、そうN.Gネオ・ジェネレーション。時代は移り変わっていくのであった…………。


 N.G50、物語はここから始まる――――――――





 ――――――――――――――



 誰かの涙のごとく降る雨、誰かの怒りの様に鳴り響く雷、木は倒れ大地は抉れていた。機械のような鎧を纏った2体が、互いを睨み合っていた。1体は青く、もう1体は多少小柄で赤みがかったピンク色をしていた。


 青い方が右手に持っていた折れた剣の先端を握りしめ、赤い方は左手に持ったブレードを握りしめ、一気に走り出した。2体が激突すると一気に目の前が真っ白な光に包まれ―――



 ―――――――――――――


「はっ………!またこの夢か………一体何なんだ?」


 青みがかった黒髪の少年、銀河レッカは目が覚めベッドから起き上がり頭を抱え膝を抱えながら座り込んだ。


 毎度、毎度、毎朝こんな夢で目が覚めるなんて……俺が一体何をしたっていうんだ………?


 夢のせいで眠りが浅い。目を擦って立ち上がりクローゼットの扉を開けた。ため息を吐きながら白いワイシャツに灰色のブレザーの制服に着替えて部屋の扉を開け階段を下りていった。


 リビングまで降りると台所に向かい朝はこんなもんでいいかとばかりに冷蔵庫からカップサイズのヨーグルトを取り出して蓋を開けてそのまま垂らす様に飲み込んだ。


 壁に掛かっている時計を確認すると時刻は7時30分、ヨーグルトの容器をゴミ箱に捨て慌てて玄関へと走り出した。


「ふぁ~あ」


 玄関の前では栗色のセミロングヘアの少女、星城渚せいじょうなぎさが欠伸をしながら壁にもたれ掛かっていた、彼女は昔から付き合いのある幼馴染だ。毎朝こうして俺を待っている。


「あっ、おはようレッカ君。今日はちょっと遅いね」

「あぁ…悪ぃ、最近変な夢に悩まされて全然眠れなくてさ」

「それってちょっと前に言ってた?」


 話をしながら学校へ向かって行く。コレが俺達の日課ってやつさ。その道中渚に夢の話を始めた


「それがさ、2体のPSパワードスーツが戦ってさ、だけどその夢には俺がいないんだよな。なんて言うか……他の誰かの夢みたいな」

「なんか変な夢だね。夢の中なのに自分がいないって」


 自分でも不思議に思うぐらいに訳の分からない夢だ。何時から見始めたのか自分でも思い出せないままだ。


「なっ変だろ?急にその夢を見始めてから眠れないわ、全然食欲も湧かないわで……」

「あっ!!もしかしてレッカ君、またちーっちゃいヨーグルトだけで朝ごはん済ませてるんじゃないの!?」


 図星を付かれ、俺は距離を少し離してそっぽを向いた。


「もぅっ、朝ごはんはちゃんと食べないとダメだよって何時もいってるじゃん!それじゃお昼前に倒れても知らないからね」

「へいへい、そりゃ悪ぅございましたね~」


 からかう様にして笑いながら俺は彼女の方を見た。


『続いてのニュースです。先日またしてもベテルギウスシティにゴーレムが出現、しかしG.O.DゴッドのPS部隊がそれを撃退、被害は最小限に抑えられたとの事です』


 宙に浮かぶ立体映像からニュース番組が流れ始め、その内容に俺は立ち止まってその映像を見つめていた。


「………」


 この人工島、ビクトリアアイランドには謎の生命体「ゴーレム」が出現する。奴らは脈絡もなく人を襲いしまいには食う時だってある、控えめに言って最悪なモンスターさ。


 それと戦うのが防衛部隊、GlobalグローバルOffenseオフェンスDefenderディフェンダー通称G.O.Dだ。彼らは人型戦闘スーツ、PSを身に纏い日夜戦い続けている。そう10年前のあの時から。


「レッカ君?」

「うわぁっ!?なっ……なんだよ?」


 距離を詰めて来た渚につい驚いてしまい後ずさった。


「ほら、早くしないと学校遅刻しちゃうよ!」

「あっ……あぁ、そうだな」


 時刻は7時40分、映像に表示された時刻を目にした2人は慌てながら、一気に学校へ向かって走り出した。




 ―――――――――――――――



「ふぅ……とりあえず間に合ったと!」

「よっす、レッカ!!相変わらず疲れた顔してんな~」


 俺が教室のドアを開けると1人の男子が声をかけてきた。


「よぅお前はいっつもテンション高いよな、何か秘訣でもあるのか?」

「よく食って、よく風呂入って、よく寝る!こんなん誰にだって出来る事だぜ~」

「なるほど、全く参考にならん」


 軽く受け流すしながら俺は後ろの席に座った。その瞬間、背中を突かれ後ろを振り返った。


「おっはよ~ねぇねぇ今朝のニュース見た?」


 後ろからやってきたオレンジブラウンの短髪に小鳥の形をしたヘアピンが目立つ少女が声を掛けて来た。


「あー、あんだけ目立って流れてたら嫌でも見るわな」

「だよね、全く困ったものだよ。これじゃ安心して出かけられないよ」

「ホントだよな~あーあ、何時になったら平和になるんだか」


 俺たちみたいな一般人にとっちゃ迷惑な話だ。突然現れて人々を襲って戦いになる、不安や不満を抱くのも当然だ。


積姫つみきちゃん、何か予定でもあったの?」

「あっ、渚ちゃーん!いやさぁ、次の休みとかにベテルギウスシティまで出かけようかなって思った矢先にあのニュース、参っちゃうっよね」


 クラスメイトとの他愛もない会話を遮る様に扉が開いた。

 担任のお出ましだ。


「お前ら、授業を始めるぞー今朝のニュースを見たと思うがこっちは平常運行だからなー」


 授業は始まり時間はあっという間に過ぎていった。









 ――――――――――――――


「終わった~さてっ!この後どうしますか………」

けいってば相変わらず呑気だよね~まぁでも、ちょっとは気晴らししたいね。レッカと渚ちゃんはどうするの?」


 放課後、帰る準備をしながら他愛のない会話を膨らませていた。窓に写るオレンジ色に染まる夕焼けを眺めながら言葉を返す。


「あー俺はそのまま帰るよ。疲れたからな」

「私は買い物して帰るかな。ごめんね、今日特売日なの」

「そっか、じゃぁ今日は大人しく解散だね」

「ちぇ~」


 そのまま教室を出て階段を降りる最中、渚に声を掛けた。


「なぁ、買い物大変そうなら手伝おうか?どうせやる事ないし」

「いっ……いいの?それじゃ、お願いしようかな!」


 渚が嬉しそうに微笑んでいる表情を見て、つい慌ててそっぽを向いてしまった。こうしているとゴーレムが現れる事なんて嘘みたい、そう思える瞬間がここにあった………はずだった。





――――――――――――


 買い物へ行く道中、買う予定の物が記されたメモを見て俺の口がふさがらなかった。米に大量の野菜にその他諸々……1人でこれ買いに行く予定だったのか……?最初から俺に頼むつもりだったのか?

 ルンルン気分で歩く渚の姿を見て、苦笑いが止まらなかった。


「ん………?」

「レッカ君、どうしたの?」


 上空から隕石の様の物体がこちらに向かって降り注ごうとしていた。危険を感じた俺は渚の手を掴んで落下してくる反対側の方へ走り出した。やがてその物体は地面に落下し、そこから手が生え顔を出し雄たけびを上げ始めた。


「ウォォォォォォォォォォ!!」


 3mにも及ぶ岩石の様な巨体、不気味に光る赤い瞳に触れる物全てを破壊しつくしそうな巨大な腕を持った怪物ゴーレム。 拳を地面に叩きつけその衝撃で起きた風が吹き荒れる。


「ゴー………レム!?」


 その強靭な巨体を前に俺は一瞬立ち止まってしまった。

 目の前に人類の脅威がそこにいる。全身の震えが止まらない、それでも俺は逃げる事しか考えられず再び走り出した。ふと渚の方を振り返ると不安そうな表情をしていた、だから安心させまいと俺は声を掛けた。


「大丈夫だ……!アイツらは足が遅い、このまま逃げてれば大丈夫だ!!」

「うっ……うん!」


 俺達は走り続けた、それ以外に術がないのだから、それと同時にこんな事しか出来ない自分の無力さに苛立ちを覚えていた。


「レッカ君、前!!」

「おい、嘘だろ………!?」


 目の前にもう1体、ゴーレムが飛び出して来た。巨大な手をこちらに伸ばし襲い掛かろうとした瞬間、俺は咄嗟に渚をその手を反対側の方へ突き飛ばした。


 その手は俺達を分断する様に地面を叩きつけ俺の方をエサを見る様な目で見て来た。


「レッカ君、大丈夫!?」


 不安そうな声で渚が叫んだ。それと同時にゴーレムはそちらの方に顔を向けようとした。俺は彼女を危険な目に遭わせない為に目の前にあった石をその巨大な顔に投げつけた。


「お前だけでも早く逃げろ!!」

「でっ、でも………!」

「いいから――――!!」


 渚が走って逃げていく姿を見てどこか安心していた。俺はどうかって?正直………怖い、だけど今やる事はただ1つ、あの化け物を渚に近づけさせない事だ。


「ほら、俺が食いたいんだろ?だったら来いよ!!」


 挑発を受けたゴーレムはこちらに向かって前進しようとしたその時、奴の顔面に何かが投げつけられ即座に爆発した。それと同時に俺の目の前に全体がアッシュグレーにベレー帽を思わせる頭部が特徴的な量産型PS、ウォーリーが飛び出して来た。


「っく……一般人がゴーレム相手に何言いだしてるのよ!」

「なっ!別にアンタに関係ないだろ!!」


 説教じみた事を言われ俺はつい言い返した。するとそのPSは驚く様にしてこちらを見ていた。


「アンタもしかして……レッカ!?」


 そいつは俺の名前を知っていた。思い出してみるとそいつはどこか聞いた事がある様な声だった。咄嗟に名前が浮かび俺は思わずその名を口にした。


「ん………あっ、お前もしかして沙織か!?」


 PSのヘルメットを外して現れたのは少女、銅月沙織あかつきさおりだった。昔の友人を前に俺は唖然としていた。


「お前……ディバイダーになってたのか!?」

「あぁ、もうそんなのいいから!アンタはさっさと逃げていいわね?」


 沙織は俺の背中を強く叩いて逃げる様に促した。


「あっ………あぁ悪いな!」


 俺が走り去るのを確認しながら沙織はヘルメットを再び取り付け、ゴーレムにマシンガンで攻撃を行った。

 逃げる最中、3個の破壊されたコンテナを発見した。その中の1つからはPSの腕らしきものが見えた。


「これは一体…?」


 コンテナを見つめていると俺の頭の中に声が聞こえて来た。

「こっちに来て」と、俺を呼んでいる?そんなまさかと背を向けようとした時、最初に現れたもう1体のゴーレムがこちらに近づいて来ていた。


「マジかよ……!?」


 不気味な口を開き大きく息を吸い込む様にすると口の中にエネルギーの様な球体が生成されていく。


「しまっ――!!」


 危険を感じ現れたゴーレムと反対側の方に走り出そうとするがそれと同時に溜め込んだエネルギーが放たれその衝撃で前方へ吹き飛ばされた――――――


「なっ……何!?」


 爆発音が聞こえウォーリーが振り返る。その隙を突かれゴーレムの拳の一撃の直撃を受け壁に叩きつけられてしまう。


「きゃぁっ―――――!?」





 ―――――――――――――――





 ……目を覚ますと目の前は瓦礫で覆われ、地面は抉れていた。額に手を当て少し離すと手の平に血が纏わりついていた。そこにゴーレムが大きな足音を鳴らしながらゆっくりとこちらに近づいて来る。頭がぼーっとする、視界もぼやけて見える、周りの音も籠って聞こえる、身体に力が入らない、足の感覚もない。

 俺は……死ぬのかこんな所で?何も出来ていない一歩も前に進めていない。こんな所で終わりたくない!力……力があれば…あいつらを倒せる、誰かを守れる、一歩前に進むことのできる力が俺にあれば――――!!


 拳を握りしめようとした時その手の近くには端末の様な物が近くに転げ落ちていた。これは偶然か?その時また声が聞こえた。「それを手に取って、力を貸してあげる」と。


 何がなんだか分からないが今はこの声に従うしかない。最後の力を振り絞ってその手に掴み取った。するとそれは突如と光り輝き始めた。その光を遮る様に背後からゴーレムの拳が振り下ろされた。


「嘘でしょ……?」


 レッカがゴーレムの拳の下敷きになる瞬間をアタシは目の当たりにした。助けられなかった悔しさを拳にぶつけながら俯く事しか出来なかった。どうしてアイツがあんな目に………?


「………?」


 更にゴーレムが拳を地面にめり込ませ様とした時、何やら違和感を感じていた。その時、突然ゴーレムは持ち上げられそのまま放り投げられた。


「あっ……あれは?」


 地中から青と白を基調とし、頭部のU字アンテナが特徴的なPSが飛び出し、地面に着地しゴーレムの方を視線を向けていた。


「アンバー……まさかアイツが!?」


 青いPS、アンバーリベリオンを目の前にアタシは驚きを隠せなかった。今目の前で何が起こっているのか、自分でも理解できずにいるぐらいに。


「………!!」


 ゴーレムがアンバーに向かって拳を振りかざした。その攻撃を軽々とジャンプで回避し、背後に回り込んで背中に蹴りを入れた。だがゴーレムには効いておらずすぐさまこちらを振り向いた。そのまま掴みかかろうとした時、その腕は一瞬にして何かに斬られ地面に落ちていった。アンバーの右手には緑色の光がサーベル状に展開された武器を手に握っていた。


「一瞬で………アレがアンバーの力なの…?」


 睨む様にゴーレムを見ていると、前からもう1体のゴーレムが現れた。腕の失っている方が口の中にエネルギーを溜め込もうとした時、手に持った武器を口の中に投げ込んだ。エネルギーは暴発し口の中で爆発を起こしてゆっくりと崩れる様に倒れた。

 すかさずもう1体に向かって前進し、左肩に取り付けられている柄を取り外しそこから緑色のサーベル状の光が展開される。それに対して拳を叩きつけようとするが軽く飛び跳ねて腕の上に着地し、そのまま顔面に向かって前進していく。

 頭上までたどり着くとそのまま大きな頭上に目掛けてサーベルを振り下ろした。


「オォォォォォォォォォォォ………っ!」


 雄たけびの様な悲鳴にも聞こえる声を上げと共にゴーレムは頭から真っ二つにされ、そのまま地面に叩きつけられる様に倒れ、塵の様に消滅した。


「2体のゴーレムをあんなに…」


 腕を抑えながらアンバーの前に近づいてみた。するとそのまま気を失う様にして倒れ、その装甲は粒子となって消えていった。

 そこに現れたのは………レッカだった。

 やっぱり……アンタが……でもどうして?だってアンタには適性が………


 To be continued…

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