永遠の課題
笠井 野里
永遠の課題
私は、夏休みの宿題を出せなかった
教師によって対応は結構違う。毎日、一時間近く
だいたい彼らの論理的に正しい説教は、忘れてしまった。しかし一つ、ある先生の怒り方は、忘れられない。
あれは、小学校のいつか、確か二か三年の担任だった。女で、少し太め。若いのに目元にうすいほうれい線のようなものさえあって、顔つきからは良い印象を持たなかった。性格に関しては、全くと言っていいほど、印象がない。
例に漏れず、その担任のときも、課題を出さなかったのだけど、彼女のあの癖が、私には忘れられない。
彼女は毎朝、朝の会(懐かしい響き!)の時間に、課題を数える。
委員会のお知らせのときでさえ、彼女は、課題の数を数えている。何回も数えるのだが、毎回私の分の課題は増えていない。皿を数える女妖怪のよう。一枚、二枚、三枚。そうして数えて、結局一枚足りない。顔色は何一つ変わらない。ただ数え直す際、毎回書類を机に当てて整えるのだが、その音が教室中に鈍く響く大きい音だった。音に明確な、凄まじい怒気のような
「え、そんな音してる?」
とキョトンとした顔をして、訊き返すものだから私は酷く驚いたし
そうして先生の話になると、だいたい
それどころか大学生になった、今でもたまに、その音が聞こえるのだ。ドスン、ドスン。その度、私は激しく憂鬱になり、罪を
永遠の課題 笠井 野里 @good-kura
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