裏切り者。

※シナリオ『裏切る魔物と欺く怪物。』の原作です。


いつから気付いてたのかって?

いやいや、僕は気付いてなかったよ。

まさか君が裏切ることになんて気付いてる筈ないだろ?

ただ、僕はそう考えていただけさ。

僕はこう見えて用心深い性格でね。

常にかもしれないを考えている。……かもしれない。

おいおい、そんなに睨むなよ。

僕は君が裏切ることを笑って受け入れてるというのに、裏切る君が怒り出すなんて不公平じゃないか。

僕だって傷つくんだよ。

今まで一緒に頑張ってきた。辛いことも楽しいこともたくさん経験したよね。お互いに昔のことも話したし、将来だって語り合った。あんなに心を通わせあったというのにね。

君はそれを踏みにじった。あぁ、悲しい。

ふふふふふ。

そういう風に振る舞ってきた? 仲間に見えるように? 君じゃなくて僕が?

あぁ、それは心外だね。

別に僕は君を疑ってた訳じゃないよ?

寧ろ信頼していたし、信用していた。

実際君はいい奴だったし、正直好きだったかもしれない。

けれど、僕は仲間より大事なものを知っているからね。

世界を、秩序を守るために僕は戦ってるんだ。

その為には最悪のシナリオを考えなくてはならない。僕が死んでしまったり、僕以外が死んでしまったらどうするか。

それに、誰かが裏切るとしたら。

僕はいつも考えていたんだ。そして、君が裏切るとしたら今ここしかないと思った。勝利を祝いお互いを讃えあって、満たされた状態の今このとき、背後から命を奪おうとするってね。

ああ、君ならきっと後ろからくるって。僕たちにそうと悟らせずに殺しにくるだろうって。

それくらい分かるよ、仲間だもん。君のことを知り、愛していたからこそ君の考えが分かったんだ。そう思わない?

……そうか。

でも、気付いてたなら止めることも出来たって?

出来ないよ。僕は君の、君たちのやりたいことを止めたりしない。仲間だからね。

ただ、僕は僕のやるべきこともやり遂げなければならない。だから、残念だよ。ほんとに。

泣かないで、顔を上げて。

僕は君のそんな顔見たくないんだ。

ふふ。

……さようなら。大好きだったよ。

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