台詞・ナレーション・朗読集
音佐りんご。
ファンタジー系
異世界日記。
エヘンバーム歴1259年 陽節 58日。
今日は通りすがりのドラゴンに、蹴られた。
先日立ち寄ったロバナ村でやっていた地鎮祭の時に貰った赤いローブが原因だ。
その昔、赤いマントの騎士に襲われて激闘の末、翼を擦りむいたとのことで、それ以来赤いヒラヒラしたものを見るとイラっとくるようになったらしい。
その土地の守り神であるという妖精を模した赤いローブによってこの災難を被ったというのは、なんとも皮肉な話だ。
しかし、悪いことばかりでもない。
超重量級のドラゴンに蹴られ、一回や二回ではなく五、六発は貰ってたぶん骨も何本か折れていたのは本当に辛かったけど、幸いにして旅の僧侶(美女)にエロい……スゴい回復魔法をかけて貰えたのでラッキーだった。
けれど、えげつない額の治療費を吹っ掛けられたので、渋々支払い、悔し紛れにセクハラをかましたら額を割られてそれは回復して貰えないままなのでやはり良いことばかりでもない。
それはさておき、ドラゴンから怪我をさせたお詫びに、と薄汚い剣を貰った。剣を置いていくとドラゴンは翼を打って舞い上がっていった。
巻き上げられた砂利が目に入って痛かった。
ちなみに剣は随分古いものに見える。大したこと無さそうだが、売ったら酒代くらいにはなるかもしれない。
質屋に行こうと決意。
追記。
エヘンバーム歴1260年 陰節 7日。
まさか、あの時の剣が伝説の勇者のものだとは知る由もなかった。僕は勇者になり損ねた。
けれど、めちゃくちゃ金になったので、まぁいっか。
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