『異世界[ODW-146-Noctasia]に生息する動植物に関する調査レポート』

名無しの報告者XXX ▋: ^ )

――本文

タイトル:ODW-146-Noctasiaノクタシア REPORT


20***/**/**


作成者:エマ・ウィルソン


私は、G.A.T.E.S.(Group for Adventurously Transdimensional Exploration and Study)の異世界生生物研究部門に勤務する生物学者で、私たちG.A.T.E.S.は、この世界と異世界とを繋ぐ"ポータル"と呼ばれる出・入・り・口・を介して異世界を探索することを主な活動目的としている。今回の私たちの任務は、"*ODW-146" 別名:Noctasiaノクタシアと命名された異世界の動植物を調査・記録し、それについて報告書を作成する事である。

*ODWとはObserved Different Worldの略


この探索で、私たちはさまざまな生物を観察し、データを収集した。ODW-146は我々が住む世界と同じ惑星型の世界で、大気も地球と似ており、生命を育むのに適した環境である。しかし、いくつかの点でこの世界とは異なる部分がある。


ODW-146の最も顕著な特徴のひとつは、恒星からの光が地球よりも弱く、一日中夜の状態が続いている事である。朝から夕方にかけて、微弱ながらも日が昇る瞬間があるが、その光も薄明り程度の非常に弱いもので、日光のような明るさはない。この世界では夜間が最も長く支配的であり、陽の光がほとんど上らないため、夜行性の生物が全体を占め、中には眼の退化したものも存在する。


また、もう一つの大きな特徴として、生物発光する動植物の多さが挙げられる。多くの生物たちは発光器官や発光色素を持ち、夜の闇の中で、幽玄な輝きを放っている。例えば、森の奥深くで咲く光る花々や、水中で舞う輝く魚たち、光る星のような昆虫たちなど、多様な生物が放つ発光によって、森や草原は光に包まれ、美しい景観が広がっている。発光は彼らの生存戦略の一部であり、コミュニケーションや求愛、捕食、威嚇、自身を保護するため、など様々な目的で利用されており、生きるために欠かせない要素となっている。


ODW-146に生息する生物が行う生物発光のメカニズムは謎に満ちており、恐らく、我々の住む世界とは異なる原理、方法によって生物発光が行われている可能性が高い。


以下に今回、我々が見つけたODW-146に生息している生物をいくつか紹介する。ODW-146の総合的な危険度はランク:1(安全)で人間に対し敵対的な種族や生物もおらず、比較的穏やかで静かな生物が多い。


【ODW-146の生物】


――[植物相]

ノクタシアルミナスウィロー(Noctasia Luminous Willow):

青白い蛍光色の光を放つ、枝の垂れた柳に似た樹木。その様子は光を放つベールを思わせ、この樹が密集してる場所は怪しく幻想的な雰囲気に包まれている。


ノクタシアルミナフラワー(Noctasia Luminaflower):

光を発する白い花を咲かせる植物。分布範囲が広く、至る所で見る事ができる。


ノクタシアグローイングマッシュルーム(Noctasia Glowing Mushroom):

森の湿地部で多く見る事ができる発光するキノコ、他にもエレファントグローイングマッシュルームという大型の亜種がいる。


ノクタシアクリスタサキュレント(Noctasia Crystasucculent)

Echeveriaに似た大型の多肉植物、クリスタルのように硬質で、宝石のような輝きを放つ。


ノクタシアグローモス(Noctasia Glowmoss):

地表や洞窟に生える光るコケの一種。彼らの集まりは暗い場所を照らし、地表や洞窟内を幻想的な光の庭園に変える。


エレファントグローイングマッシュルーム(Elephant Glowing mushroom)

巨大な発光するキノコ、その大きさは数10メートルに及び、周囲の植物や木々と比べても圧倒的な存在感を持つ。全体が明るく発光し、この夜の世界において特に目立つ存在である、


グローイングオーブブロッサム( Glowing Orb Blossom)

球状の花を咲かせる特徴的な植物で、個体によって赤や青、オレンジや黄色、紫やピンクなど様々な色が存在し、夜の世界を色鮮やかな発光色で彩る。


ノクタシアサファイアバイン( Noctasia Sapphirevines)

深い森林に生息するつる性植物で、他の樹木に巻き付くように生えている。深い青色の発光する葉をもち、暗闇でその青い葉が発光している様子は幻想的で不思議な魅力を放つ。


ピンキーノクタシアロータス(Pinky Noctasia Lotus)

水辺に生える水生植物で睡蓮に似ている。ピンク色の花が発光することで水面に魅惑的な美しい景観を作り出す。


――[動物相]

ノクタシアグローフィッシュ(Noctasia Glowfish):

淡水に生息する小さな魚で、群れを作って泳ぐ。体全体が発光し、水中を明るく照らす。その様子はまるで、水面に映る星空のように見える。また、発光色の異なる個体がいくつか存在し、現在までに黄・赤・青・紫・緑・白の種類が確認されている。異なる発光色同士のグローフィッシュが集まり、色とりどりの発光色で水面を彩る事もある。


ノクタシアグローアント(Noctasia Glowant):

闇の中で生息する発光するアリに似た昆虫で、群れで生活し、狩りを行う。


ノクタシアシャインフライ(Noctasia Shine Fly):

集団で空中を舞っている、光を放つ小型の羽虫。彼らの光る舞踊は夜空を彩り、星々の輝きと調和する。


スカイリッパー(Sky Rippers)

青色の小型の鳥で、主に水辺に生息する。四枚の美しい色の翼を持っており、羽毛の模様は暗い場所で発光する。肉食で主に水中を泳ぐ魚を獲って食べる。四枚の羽を器用に羽ばたかせ、高い場所から水中に滑空し、水中にいる獲物に襲いかかる。この時、鋭い爪と先がフック状に曲がった嘴で獲物を捕らえる。


エリアスジェルゴースト(Aerius Jellghost)

淡い光を放ちながら空中を浮かぶアマクサクラゲ(Sanderia malayensis)に似たような外見の浮遊生物。1メートル以上ある長い触手を靡かせながら、暗い森の中を漂う姿はさながら幽霊のようである。


エレクトロクラブ(Electrocrab)

水辺に住む甲殻類、カニの様なハサミはない。甲羅から電気の様なエネルギー物質を放つ事ができる。主にそれは脅威を感じる時に使われ、明るい黄色の光を放ち近づく敵を威嚇する。


グローイングホーン(Glowing Horn)

シカの様な生物、オスは発光する長い角を持つ、また体毛にある斑模様も発光する能力を持っている。主にノクタシアグローイングマッシュルームを食べている。


ノクタシアラット(Noctasia Rat)

中型のネズミの様な陸生の生物。紺色の体毛と発光する薄紫色の縞模様を持つ。雑食で木の実や地中にいる発光するミミズ型生物などを食べている様子が確認されている。


ステレカラペース(Stele Carapace)

リクガメと甲虫を合わせた様な6本足の生物。主に水辺に生息し、甲羅には淡い青色に発光する模様が入っている。その模様は文字の様にも見える。


ノクタシアファントムスクイド(Noctasia Phantom Squid)

半透明な白っぽい体をしたイカ型生物で、主に淡水に生息する。地下水が流れ出す場所では目が完全に退化している個体も発見された。


ノクタヴァイパー(Noctaviper)

コブラ(Naja)型の肉食生物で、黒い体表に発光する模様を持っている。肋骨を使って頚部の皮膚を翼の様に広げることができる。普段は静かに樹上の陰に隠れ獲物(主に小型の小動物)が近づくのを待ち伏せする。獲物が近づいてくると頚部を広げて滑空して獲物に飛びつく、獲物に飛びつくと牙の毒で麻痺させ、動けなくなったところを捕食する。頚部を広げると大型動物の顔を思わせる様な模様が発光し、獲物を怯ませる役目を持っていたり、威嚇に使われる事もある。闇の中を蠢く彼らの姿は、神秘的であると同時に恐怖を抱かせる。


ここで紹介した生物はほんの一部であり、ODW-146にはこの世界と同じようにここでは紹介しきれない数の多種多様な生物が生息している。また今回我々の調査する事ができた領域はポータル付近の数㎞圏内の範囲でしかなく、調査する事ができた動植物も、その領域内に生息していたもののみに限定されている。


全体として、ODW-146へのミッションは大成功を収め、この探検で収集されたデータは、今後の異世界研究の進展に大いに役立つ事だろう。今後はさらに調査の範囲を広げ、より多くのODW-146に生息する生物を発見し、その動植物の調査、探究と生態の解明を進めていきたい。


エマ・ウィルソン博士

G.A.T.E.S.異世界生生物研究部門

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『異世界[ODW-146-Noctasia]に生息する動植物に関する調査レポート』 名無しの報告者XXX ▋: ^ ) @user_nwo12n12knu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ