Ep.?
埴輪メロン
カミサマ Ep.?
忘れられた神は―――
Ep.? カミサマ
――昔は、よかった。
人々は我を崇め、畏れ、共生した。
何をするにも、何を見るにも、我等の存在を見出し社を建て、称え、感謝し続けてきた。
それが、とても心地よかった。
それは威厳や威張りからくる邪な快感ではない。それはたとえるならば友人と夜が明けるまで下らない話を肴に酒を飲み明かしたときのような、あのなんとも言えぬ“楽しさ”。
我々にとって人は下等生物でもなんでもない、助け助け合う友人だったのだ。
しかし、西洋の物が多く入ってきたころからだったか。
人々の産物は少しずつ進化していき、少しづつ我等を必要とする人間は少なくなっていくとともに、少しづつ我等を忘れていった。
――ああ、今年は凶作でこの村も食っていけるかわかりませぬ...
――〇〇様、どうか我らに恵みを。
そんな昔の人間たちの声を思い出しながら私は酒を独り飲む。
――ああ、恵みの雨だ。
――〇〇様の御救いだ
そう言って、私と共に感謝し、酒を飲んだ。
昔は闇で覆われていた寂しい村は燦然と輝く町へと進化し、今となっては何処にでもある石でできた大きな建物で埋まっていた。
いつしか、月日がたち侘しくなった社に拝みに来る人はいなくなっていた。
そんなある日の事だった。
久々に、多くの人間が社に訪れた。
――ああ、私の存在を思い出してくれたのか。今酒をもって来よう。前のように夜が明け太陽が
しかし、久々に顔を見せた友人は私に見向きもせず、光る鉄の板を皆で覗きながら話していた。
ここなら見渡しがとてもよく別荘に――
〇〇山を開発するための拠点として――
私には友人がなんの話をしているかはわからなかった。
しかし、唯一つ、わかることがあった。
――...嗚呼、我が友人は、人間は、私の存在を忘れてしまったのだな。必要としなくなったのだな。
数日後。妖怪のような鉄の塊と大勢の人間たちが私の社を囲った。
そして、社を壊し始めたのだ。
――嗚呼...あの頃は...楽しかったな。
***がくれた花の末裔は踏みにじられ透明な袋に入れられた。
***たちが作ってくれた石板は鉄の怪物によって粉々になった。
***が3日寝ずに、己の身を削ってでも作りなおしてくれた小さな石垣は人の手により跡形もなくなってしまった。
そして、私が座っている社は
私ごと、食われた。
様々な人が助け合い、生きる力となった小さな社は、
――人の子よ、健やかであれ...
頼られていた友人に忘れられ、助けた恩を忘れされて尚、人を思った神は、
消えた。
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