世界中の神様たちから一つずつ能力をもらったら、全知全能になりました

鳥猫

EP1 力の体験

 異世界に来た。

 自分がそんな立場になるとは思わなかった。


 さっき、神様を名乗る人たちが僕をここに送り込んだんだ。

 プレゼントに、神様一人が一つの能力をくれるという条件で。


「一人ひとつといっても、その能力の内容によっては大したことないんじゃないの」

 そう言ったのだが、みんな滅茶苦茶強いのをくれた。

 例えば「すべての武器を、プロを圧倒する強さで使いこなせる」とか。

 しかも、その神様の数がすごい。なんたって、僕の転生元は日本だ。どんなものにも宿っていて、「八百万の神」と呼ぶくらいたくさんいる。


 さて…何をしよう?出来事を思い出していたから周りを見ることを忘れていたが、この辺りは草原が広がっていた。ここはどんな場所なんだろう…もしかして無人だったり?


 いずれにせよ、このままいるより町などを探そう。そう思って異世界の一歩を踏み出した、その瞬間。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタ…


「地震?」

 立ち止まると、すぐに地響きは鳴りやんだ。

 転移してすぐに地震というのも、場合によってはあり得るだろう。しかし、好奇心と「自分は特別なんだ」という自負が頭をもたげてきた。


 おそるおそる、次の一歩を踏み出す。


 ガタガタガタガタ…


 まただ。やっぱり、自分は特別だった。

 そう確信したとき、ちょうど遠くに人影が見えた。「視力をすごく上げる」能力のおかげだ。

 その人影はだんだんと近づき、同時に数が増えていった。

 そして、声がギリギリ聞こえない程度の距離で、輪をつくって僕を観察し始めた。

 間違いない、座標計算で震源地を特定された。


 そのうち、お腹がすいてきた。何か食べ物を探したいが、下手に動けばまた怪しまれる…そうだ、作ればいいのか。


 ポン、と、無からバナナを創造した。もちろん能力のおかげだ。空中に出来たバナナをつかもうとした瞬間…


 バナナが、手に触れて消えた。一瞬何が起きたかわからなかったが、直後に焦げ臭いにおいが鼻を突いたことで確証が持てた。

 手が速すぎて、バナナが摩擦熱で蒸発したんだ。どうやら、さっきの地震と言い、僕の身体強化の能力は、制御ができる代物ではないらしい。


 突拍子もない出来事に唖然としていると、周りの人々が騒ぎ出した。

 どうやら、さっきバナナを取ろうとした拍子に物凄い風圧が起き、誰かが焦げ臭いにおいを感じ取ったらしい。あるいは、バナナが一瞬で出現し、また一瞬で消え去ったことに驚いているのかもしれない。…たぶん後者だ。


さて、この何とも言えない状況をどうしようか。

つづく

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