誓いの指輪
ぴろわんこ
第1話
「おれは何があっても、きみを守るよ」
おれは結婚式場で、こう言って妻になる女性に誓いの指輪を嵌め、誓いのキスをした。本当にそういう効力のある指輪なのだ。
実はおれの妻は軽度の知的障害がある。だがおれの口から言うのも何だが、かわいい外見をしている。悪い奴が寄ってくるかもしれないし、何か困った時は助けに駆けつける必要があると思ったのだ。
会社で仕事中、妻が指輪に向かって助けてと呟いた。おれは妻の所へ瞬間移動した。この指輪はそういう力があるのだ。
見ると若い男が、しきりに妻を口説いていた。
「私はこの女の夫だ。家の妻に何か用か?」
おれはできる限り凄んでみせた。
「え、そうなんですか。いつの間に、あなた来たんですか?あ、いやとにかく奥さんの荷物が重そうなので持ってあげようかなと…」
「要らん気配りだ。そんな見上げた精神があったら老人相手に使いたまえ。さあ帰るぞ」
若い男は、しらけた様子で帰って行った。
「ありがとう、あなた。あの人しつこくて」
「なあに、いいよ。家まで送るよ」
妻を家まで送り届けた後、おれは電車に乗り会社に戻った。大幅な時間のロスが生じ、仕事に穴が空いた。
それからも詐欺に遭いそうになったのを、おれが駆けつけ未然に防いだり、銀行や役所での書類のやりとりが分からなくなり、おれが瞬間移動して助けるといったことが何度もあった。
おれは疲れてきた。いやおれ一人だけのことならなんてことはないのだが、おれがいない間は会社に迷惑をかけてしまう。それがどうにも気が引けてくるようになった。
仕方がないのでおれは指輪をもう一つ買い、気色悪かったが上司にキスをした。これで上司が助けてと呼べば会社に瞬間移動できるようになった。迷惑を最小限に抑えれるようになった。
大地震が起きた時も、逃げるという発想ができなかったらしいので、おれが駆けつけて助けてあげた。指輪があって本当によかった。
これからもいろいろ大変だろうが、命さえあれば何とかなる。妻と力を合わせて生きていこう。
誓いの指輪 ぴろわんこ @pirobigdog
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