愛しのサボテン

サボテンの針が指に刺さった。

抜いたはずなのにいつまでもチクチクする。

痛くて不快なのに、刺さっているはずの所に針はない。


君がホームセンターから買ってきた玉サボテン。

真ん丸なその姿が可愛くて、いつも目に付く場所に置いた。


「大切にするからね!」


あーあ、あんな事言うんじゃなかった。


サボテンはすくすく育った。

水やりを忘れたって、くれた人がいなくなったって…すくすくすくすく。


ある日ふと目をやるとてっぺんがぽつぽつと赤く色づいていた。

病気にでもなったのだろうか?


え、枯れちゃう?え?え?


長くひとつ屋根の下にいたのだ。相手はこちらと同じ『生き物』。

同居人が病気になった…。どうしよう、一体どうすれば…。

身体の他の部分はいつも通り。

ツヤツヤのグリーンのボディに、挑発的にに生える針。


日を追う事に、赤は鮮やかになり、膨らんでいく。

そして…。


開花した。


あまりの美しさに、部屋で一人泣いた。

見せたい、君に見せたい…。


いつの間にか陶器の鉢にヒビが入っている。

一回り大きな鉢に植え替えをする事にした。


いてっ…!


サボテンの針が指に刺さった。

指先に滲んだのはあの花と同じ色。




/// おわり ///




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