働く意欲と就労継続B型事業所
デイケアに慣れて少し時間が経ったころ。病院のスタッフさんから、「今度、『就労に向けた準備講座』を行うんですけれど……。良かったら参加してみませんか?』というお誘いを受けた。
何でも他県から講師の先生を招いて、五日間、就労に関する勉強会を行うらしい。
今まで一度も働いた事がなかった私は、「就労をする」という事に強い憧れを抱いていた。
だが自身の病気の事を思うと、怖くて中々就労への第一歩を踏み出せずにいた。私は講座に参加する事に大きな不安を憶えた。だが周囲の助けや励ましもあり、私は後日、五日間の講座を受けることを決心した。
五日間の勉強会を無事に出席する事が出来た私は、『働く事の大切さと働く事の意味』を知った。そして出来ることならば、私も実際に働いてみたいと思う様になった。
その事を院長先生に相談したところ、初めは就労継続B型事業所に通う事を勧められた。何でも就労継続B型事業所とは、障害があったり、一般企業に就職する事が難しい人が、雇用契約書を交わさずに、自身が行った作業(仕事)に対して工賃を頂くという事業所らしい。
働いた経験が全くないまま大人になった私にはピッタリの仕事場だった。
院長先生のアドバイスの後、私は何カ所か就労継続B 型事業所を見学しに行った。
私は一度も働いた事がない人間である。自分の特性もまだ全然把握出来ていなかったし、自分にどんな仕事が向いているのかも、皆目検討が付かなかった。
そこで私は、「自分が得意な分野ではなくて、自分に出来ない分野のお仕事を体験してみよう」と考えることにした。
当時私は全く料理が出来なかったので、調理が出来る就労継続B型事業所に行くことに決めた。
通い始めた就労継続B型事業所は、お昼ご飯のお弁当作りを行う事業所だった。私は初め、月に二回事業所にいくプログラムを組んだ。
私は環境の変化に極度に弱い人間だった。なので、初めは少ない日数を通い、少しずつ通所する日数を増やしていく計画を立てた。
しかし、この計画は、初めは全く上手くいかなかった。
事業所に通所する日が近づくと、パニック発作が起こる、または過呼吸が起こるのである。結局最初の半年間は、私はほとんど事業所に通う事が出来なかった。
事業所を休む度に私は「自分は何て出来損ないの、駄目な人間なのだろう」と強く自分自身を責めた。最初は自責の念がとても強く出た。中々自分の失敗を、素直に昇華する事が出来ず、自分自身にイライラする事が多かった。
しかし周囲の人達のアドバイスや支援のおかげで、段々と客観的に自分を見つめ直す事が出来るようになった。
「無理はしないで、出来る事からコツコツとやっていきましょう!」
支援者さん達の根気のある温かい声援と支援のおかげで、私は何とか少しずつ事業所に通えるようになっていった。
今思うと、本当に有難い事だと思う。
引きこもりで家から出られなかった私がここまで来るのに、もう六年ほどの月日が流れていた。
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