死と隣り合わせ

「死にたい」

 気を抜くと、ぐるぐるとその甘美で魅惑的な言葉が頭の中でずっと渦巻いた。

 最初は「病気が私の頭の中で酷いことを言っているのだ」と思っていた。だがいつしか、段々と自身の自信が無くなっていって、「これが自分の本当の心の叫びなのではないか」と思う様になった。

 もういつ自分が死んでもおかしくはない。私は本気でそう思っていた。それくらい当時の私は強い希死念慮に囚われていた。

 『死』がずっと背後でひたひたと背中を這う感覚が大変恐ろしくて、しんどくて、辛くて、逃げたくて。その感覚を消し去ってしまいたくなるたびに、私は『消えたい』という強い思いに駆られた。

 それくらい情緒不安定だった当時の私は、精神的にかなり追いつめられていた。

 そんな折、院長先生から「デイケアに参加してみないかい?」という提案を受けた。

 デイケアという言葉を知らなかった私は最初、頭の上にクエスチョンマークが浮かぶばかりで、院長先生に返事をすることが出来なかった。

「デイケアって何ですか?」と私がポツリと尋ねると、院長先生はデイケアについて詳しく書かれたパンフレットを一枚、すっと手渡してくれた。

 何でもデイケアとは、病気や障害のある人々が共同の生活や作業を通じて、社会復帰を目指す、という病院が行っている取り組みの一つらしい。

 家に居てもしんどくて、苦しいだけだと思っていた私は、現状を少しでも改善することが出来るのであればと、半分縋るような想いで、デイケアに通う事を決心した。

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