静養と転機
次の日、病院を再度訪れた私と母は、院長先生から詳しい私の病気の説明を受けた。
そして院長先生は母に、「暫くの間、お嬢さんは静養が必要です。そして定期的に病院に通院する必要がありますね」と話した。
こうして月に二回私と母が一緒に病院に通う生活が始まった。
母は最初、一緒に病院に行く度に戸惑いを感じている様子だったが、辛抱強く、毎回病院に通う私の付き添いをしてくれた。
私はその頃から、家の自室に引きこもるようになった。毎日描いていた絵はほとんど描かなくなり、部屋の中で物を投げたり、暴れたり、奇声を上げて泣き叫ぶようになった。
「自分は本当に狂ってしまったんじゃないだろうか」としょっちゅう考えが思い浮んで、悩んだりもした。
だがそんな状態になっても、私の絵への憧れは消えなかった。
「美大生になりたい」
自身の状態がどんなに悪くなっても、その想いだけは何故だか消える事はなかった。
初診から約一年半、院長先生の指示に従い、服薬と通院を続けた。すると少しずつだが症状は回復していった。
最初は描けなかった絵も、短時間なら描けるようになった。
そこで私は二〇〇八年に関西の美術大学を受験する事にした。
入学試験の際、私は余り良いコンディションではなかった。そして私には、一年半の間ほとんど絵を描いていないという大きなブランクがあった。
なので、きっと不合格だろうと、私は内心そう思って諦めていた。
だが結果は、合格だった。
そして合格発表から約一ヶ月後、私は一度通院していた心療内科に通う事をストップして、単身関西へと引っ越しをすることにした。
だがこの選択が、大きな間違いである事に私は後で気が付くのだった。
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