トップランカー請負人~かつてネットで伝説と呼ばれた元ダンジョン攻略配信者は最弱冒険者をランキングトップ配信者にできるのか?~
熊
第1話 伝説的な伝説の幕開け
世界各国に突如として現れたダンジョン、そこから次々と現れるモンスター、そして『スキル』と呼ばれる力に目覚めていく人間。
世界は――
『どーもー! 今回は、渋谷ダンジョン10層まで頑張ってくよー!』
―〈キターー!〉
―〈準備大丈夫?〉
―〈ミルちゃんならいける頑張って!〉
―〈がんばえー!〉
世界は、ライブ配信に熱狂していた。
古代ギリシャでは、猛獣と人間を戦わせる興行が成り立っていた。
そして2000年以上もの時を超えた現代においても、やはり人間の興奮とは変わりようのないものだったらしい。
魔法を使い次々とモンスターたちをなぎ倒していく配信者。倒すか倒されるかの瀬戸際で、剣を握る画面の向こうの冒険者たちをを応援する。
ネットにおいて、ダンジョンとは最大級の覇権コンテンツとして、今や社会の中に溶け込んでいた。
なにしろ、ダンジョンにさえ入らなければ、そしてダンジョンを長く放置しすぎなければ、ダンジョン内部のモンスターが外へと出てくることはないのだから。
だからこそ、娯楽と市民の安全のために、冒険者は今日も今日とてダンジョンに潜る。
そして今、俺もその一人として実に十年ぶりにダンジョンに入っていた。その理由は――
「いいか
「そ、それってすごいの……?」
「すごいに決まってんだろ! これが業界最大手の力だぞ!」
俺は、このダンジョン配信のダの字も知らないような幼馴染を相手にしていた。
なぜかって? 俺にもなぜだかわからない。
ただ、一つ言えば――
「ひーくんはいろんなこと知ってるんだね!」
「これからお前も知ることになる世界だよ!」
俺は、この何も知らない冒険者を――冒険者ランキングぶっちぎりの最下位に立つこの女を――そして、俺の幼馴染であるこの女を、冒険者の中でも一握りの才能が集まるトップランカーへと導かなければならない、ということだ。
「私頑張るよ!」
「ああ、頑張ってくれ。俺だってできると思ったからこの仕事を受けたんだ。あとはお前の頑張り次第だから、せいぜい――それはもうせいぜい頑張ってほしい」
俺の名は
そして彼女の名は
先に言っておくとすれば、俺は巻き込まれた側だ。そして芥もまた巻き込まれた側だ。
なにせ、俺たちは――いや、芥は、実の親から頭がおかしくなるほどの借金を譲られたから。
かつてダンジョンアイドル業界を牽引していたとまで言われた、大手事務所
まともに働いたところで返せる額ではない。
だからこそ、俺は――
「まあ任せろ芥。健気に気軽に気楽に任せてくれ。なんたって俺は伝説だからな」
俺は、芥をダンジョン配信者のトップランカーにしなくてはならないのだ。
♡―――――――――――★
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