トップランカー請負人~かつてネットで伝説と呼ばれた元ダンジョン攻略配信者は最弱冒険者をランキングトップ配信者にできるのか?~

第1話 伝説的な伝説の幕開け


 世界各国に突如として現れたダンジョン、そこから次々と現れるモンスター、そして『スキル』と呼ばれる力に目覚めていく人間。


 世界変革アルティメットレボリューションと呼ばれた(誰が呼んだのかは知らないけど)現象から早30年。


 世界は――


『どーもー! 今回は、渋谷ダンジョン10層まで頑張ってくよー!』


―〈キターー!〉

―〈準備大丈夫?〉

―〈ミルちゃんならいける頑張って!〉

―〈がんばえー!〉


 世界は、ライブ配信に熱狂していた。


 古代ギリシャでは、猛獣と人間を戦わせる興行が成り立っていた。

 そして2000年以上もの時を超えた現代においても、やはり人間の興奮とは変わりようのないものだったらしい。


 魔法を使い次々とモンスターたちをなぎ倒していく配信者。倒すか倒されるかの瀬戸際で、剣を握る画面の向こうの冒険者たちをを応援する。


 ネットにおいて、ダンジョンとは最大級の覇権コンテンツとして、今や社会の中に溶け込んでいた。


 なにしろ、ダンジョンにさえ入らなければ、そしてダンジョンを長く放置しすぎなければ、ダンジョン内部のモンスターが外へと出てくることはないのだから。


 だからこそ、娯楽と市民の安全のために、冒険者は今日も今日とてダンジョンに潜る。


 そして今、俺もその一人として実に十年ぶりにダンジョンに入っていた。その理由は――


「いいかあくた! これが人気アイドル冒険者というモノだぞ! 見ろ、この画角を意識した戦い方を! 決してモンスターの血に汚れず、しかして圧倒しすぎず、ギリギリのところで苦戦を演じるこの表情を! 更には意識的なパンチラによって、見える見えないのラインを保ち続けている! 俺の見立てじゃ、彼女は50層まで行ける猛者だと見た、間違いないね!」

「そ、それってすごいの……?」

「すごいに決まってんだろ! これが業界最大手の力だぞ!」


 俺は、このダンジョン配信のダの字も知らないような幼馴染を相手にしていた。


 なぜかって? 俺にもなぜだかわからない。


 ただ、一つ言えば――


「ひーくんはいろんなこと知ってるんだね!」

「これからお前も知ることになる世界だよ!」


 俺は、この何も知らない冒険者を――冒険者ランキングぶっちぎりの最下位に立つこの女を――そして、俺の幼馴染であるこの女を、冒険者の中でも一握りの才能が集まるトップランカーへと導かなければならない、ということだ。


「私頑張るよ!」

「ああ、頑張ってくれ。俺だってできると思ったからこの仕事を受けたんだ。あとはお前の頑張り次第だから、せいぜい――それはもうせいぜい頑張ってほしい」


 俺の名は虚居うつろい非佐木ひさぎ。気軽にひーくんと呼んでくれて構わない。


 そして彼女の名は廉隅れんぐうあくた


 先に言っておくとすれば、俺は巻き込まれた側だ。そして芥もまた巻き込まれた側だ。


 なにせ、俺たちは――いや、芥は、実の親から頭がおかしくなるほどの借金を譲られたから。


 かつてダンジョンアイドル業界を牽引していたとまで言われた、大手事務所廉隅れんぐうプロダクション。しかし、そんな偉大なる父親が芥に残したのは、実に十億の借金であった。


 まともに働いたところで返せる額ではない。


 だからこそ、俺は――


「まあ任せろ芥。健気に気軽に気楽に任せてくれ。なんたって俺は伝説だからな」


 俺は、芥をダンジョン配信者のトップランカーにしなくてはならないのだ。





♡―――――――――――★


これは期待できると思っていただければいいねを!

面白いと思っていただければぜひ評価をぽちりとお願いします!


あなたの応援がやる気に変わり、今日も今日とて書いていきます!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る