第7話『母親達にマッサージ』
それからも、母さん、彩さん、雛子さんそれぞれの新婚時代のことを中心に談笑していく。そんな中で母さんが、
「肩凝ってきた。和真、肩を揉んでくれる?」
と言ってきたので、俺は肩のマッサージをすることに。
肩が凝ってきたと自己申告するだけあって、母さんの肩は結構凝っている。凝りがほぐれるようにマッサージしよう。
「久しぶりに和真にマッサージをしてもらうけど気持ちいいわ」
「気持ちいいですよね。私、肩が凝りやすい体質なので、定期的に和真君にマッサージをしてもらっているんです」
「そうなのね。和真は上手だし、これからもどんどんマッサージしてもらいなさい」
「はいっ」
優奈はとても嬉しそうに返事する。
優奈の言う通り、優奈には定期的にマッサージしている。マッサージするとき、優奈はとても気持ち良さそうにしていて。マッサージが気持ちいいと母さんに言ってくれることに嬉しい気持ちになる。
「2人がそう言ってくれて嬉しいよ。ただ、母さんも俺にマッサージをしてほしいときにはいつでも言ってくれよ」
「うん。ありがとう、和真」
母さんは顔だけをこちらに向きながらお礼を言った。
優奈ほどではないけど、母さんも肩凝りしやすい体質で、実家にいた頃は母さんにマッサージすることが多かった。徒歩圏内とはいえ、実家を出てこの家に住んでいる。母さんにあと何回マッサージできるだろうか。前回、母さんにマッサージをしたときには考えなかったことだ。
母さんや優奈達と話しながらマッサージをしていたので、気付けば母さんの肩の凝りはすっかりとほぐれていた。
「母さん。ほぐれたよ。どうだろう?」
そう言い、俺は母さんの肩から手を離す。
母さんはゆっくりと肩を回す。さあ、肩の凝りは取れているかな?
「うん、取れた。ありがとう、和真」
母さんはスッキリとした笑顔で俺にそう言ってくれた。久しぶりにマッサージしたのもあって、これまでよりも嬉しいな。
「いえいえ。良かったよ」
「梨子さん、とても気持ち良さそうでしたね。……ねえ、長瀬君。今の梨子さんを見たり、優奈からもマッサージの話を聞いたりしていたから……私にも肩のマッサージをお願いしてもいいかな? 私も肩が凝りやすい体質で、今も凝りを感じていて」
彩さんは俺のことを見つめながらそうお願いしてくる。
俺のマッサージに興味を持ってくれたか。純粋に嬉しいな。あと、彩さんも肩が凝りやすい体質なのか。優奈の体質は彩さんの遺伝なのかな。
「分かりました。では、彩さんにもマッサージをしますね」
「ありがとう」
彩さんはニコッと笑いながらお礼を言う。その笑顔は娘の優奈や陽葵ちゃんと重なり、可愛らしい。
俺は彩さんの背後まで動き、彩さんの肩に両手を乗せる。
「では、始めますね」
「お願いします」
俺は彩さんの肩のマッサージを始める。彩さんにするのは初めてなので、最初は優しい力で。
「あぁっ……」
彩さんはそんな甘い声を漏らす。
「大丈夫ですか? 痛かったですか?」
「ううん、そんなことないわ。痛さだけじゃなくて気持ち良さもあって。もうちょっと強くしても大丈夫よ」
そう言うと、彩さんは顔だけこちらにチラッと振り返り、微笑みかけた。
「分かりました。……このくらいでどうでしょう?」
「……うんっ。凄く気持ちいい。この強さでお願い……」
「分かりました」
彩さんが気持ち良く感じられる力の強さを見つけられて良かった。
母さんと同じで、自己申告するだけあって彩さんも肩に凝りがあるな。彩さんもスッキリできるようにマッサージしよう。
肩を揉んでいるからなのか、彩さんから優奈に似た甘い匂いがしてくる。
あと、凄く気持ちいいと言っているだけあってか、彩さんは時折「んっ」とか「あっ」とか「気持ちいいわ」といった声を漏らして。その声は……イチャイチャしているときの優奈の声に似ていて。ちょっとドキドキする。
「本当に気持ちいいわ、長瀬君」
「ありがとうございます」
「長瀬君のマッサージが最高だって優奈がメッセージしていたのも納得ね。さっき、梨子さんが気持ち良さそうにしていたのも……」
「とても気持ちいいですよね、お母さん。和真君のおかげで、肩が凝るのもあまり嫌ではなくなりました」
「ふふっ、そうなの」
「主人も真央も上手ですが、和真が一番上手だなって思います。彩さんも遠慮なく和真にマッサージをお願いしてくださいね。彩さんにとっても和真は息子なのですから」
「母の言う通りです。俺で良ければ遠慮なく言ってください」
「ありがとう、長瀬君」
彩さんは顔をこちらに向けてお礼を言った。そんな彩さんの頬は赤くなっていて。それを含めて可愛らしい。今の彩さんの顔も優奈と重なる部分があって。親子だなって思う。
「あ、あの。梨子さん」
「何かな? 萌音ちゃん」
井上さんは真剣な面持ちで母さんを見ている。どうしたんだろう?
「……梨子さんの胸を堪能してみたいです。一度も触れたことがないので……」
あぁ、胸か。井上さんだもんな。井上さん以外の女性陣はみんな「ふふっ」と笑う。
これまで、井上さんと母さんが会ったのは、優奈と俺の引っ越し作業のときだけ。あのとき、真央姉さんの胸は堪能していたけど、母さんの胸は堪能していなかったな。
「梨子さんの胸も結構な大きさなので、どんな感じなのか体験したくて。引っ越し作業のときは初対面だったので、お願いする勇気が出なくて。真央さんのように接客される形で会ったこともなかったですから」
「ふふっ、そうだったのね。いいわよ。私の胸にも興味を持ってくれて嬉しいわ」
「すみません、うちの娘が。娘は女性の胸が大好きでして。特に大きな胸が……」
「お母さんの胸が大きいからね。一番好き」
胸の話題になったので、つい雛子さんの胸を見てしまう。……確かに結構大きいな。母親の大きな胸が好きだから、井上さんは女性の大きな胸が特に好きになったのか。何か納得した。
「長瀬君。あなたのお母さんの胸を味わっちゃうけど……いい?」
「全然かまわない。ご自由に」
「ありがとう!」
井上さんはとても嬉しそうにお礼を言った。母さんの胸を堪能したい気持ちの強さが窺える。
あと、俺に許可を求めなくてもいいんだよ。それに、母さんの胸を堪能してもいいかって訊かれると、俺が母さんの胸が好きみたいに思われちゃうじゃないか。俺が好きな胸は優奈の胸だけだ。
「萌音ちゃん、おいで~」
「はいっ」
井上さんは両手を広げている母さんのところまで行く。両手で母さんの胸を少し触った後、母さんのことを抱きしめて顔を胸に埋めた。
「あぁっ……柔らかくて気持ちいいです。あったかくて、いい匂いもして。とてもいい胸です。さすがは真央さんのお母さん……」
「ふふっ、良かったわ。萌音ちゃんが気に入ってくれて嬉しいわ」
母さんは嬉しそうに言い、井上さんのことを抱きしめる。右手で頭を撫でていて。
時折、井上さんは母さんの胸に頭をスリスリさせる。
「あぁ、幸せです」
「良かったですね、萌音ちゃん」
「うんっ!」
「ふふっ。萌音ちゃんは小柄で可愛いし、胸に顔を埋められると……実の母親の雛子さんの前でですが、母性本能が湧いちゃいますね」
「ふふっ、そうですか。萌音のためにありがとうございます」
「いえいえ」
何だか、母さんの胸に顔を埋めている井上さんを見ていると、井上さんが俺の妹のように思えてくるな。母さんも嬉しそうだし。
井上さんと母さんの一幕の間もずっと彩さんの肩を揉んでいたため、彩さんの肩はすっかりとほぐれていた。
「彩さん。肩がほぐれました」
「ありがとう」
俺が手を離すと、彩さんは両肩をゆっくりと回す。揉んだ感じでは凝りは取れた感じがするけど、彩さんにとってはどうだろうか。
「……うん! 凝りが取れてる。だから、スッキリしたよ。ありがとう、長瀬君」
彩さんはこちらに振り返ってお礼を言ってくれた。スッキリしたと言うだけあって、彩さんの笑顔は明るいものになっていて。スッキリとした様子も優奈のようだった。
「そうですか。良かったです」
「良かったですね、お母さん」
「ええ。とても気持ち良かったわ。優奈が羨ましいわ」
「ふふっ」
彩さんに羨ましいと言ってもらえたからか、優奈はとても嬉しそう。そんな優奈の反応を見ていると俺も嬉しい気持ちになるよ。
「長瀬君。私も肩のマッサージをお願いしてもいいかな? 私も興味出てきちゃった。それに、おっぱい大きいし、歳を取ったから肩凝りやすくて。今もちょっと凝ってるの」
「分かりました」
「ありがとう」
まさか、雛子さんの肩まで揉むことになるとは。
ただ、自身も肩が凝りやすくて、母さんと彩さんがマッサージされる光景を見ていたら、どんな感じなのか興味を持つのも当然のことなのかな。雛子さんはワクワクとした表情になっている。
俺は雛子さんの背後まで移動し、両肩に手を乗せる。
「では、始めますね」
「お願いします」
雛子さんへの肩のマッサージを始める。さっきの彩さんと同じくらいの強さで。
しかし、始めた瞬間、雛子さんは「あっ」と小さな声を漏らして、体をピクリと震わせる。
「痛かったですか?」
「結構気持ち良くて。ちょっと痛いけど、痛気持ちいいって感じだから、今の揉み方でマッサージしてくれる?」
「分かりました」
痛気持ちいいと思える強さで良かった。
母さんや梨子さんほどではないけど、雛子さんも肩が凝っているな。雛子さんの肩の凝りもほぐしていこう。
「あぁ……気持ちいい。梨子さんと彩さんが気持ち良さそうにしていたのも納得です」
「良かったね、お母さん」
これまで母さんの胸を堪能していた井上さんは、こちらを向いてそう言った。
母さんの胸に満足したからなのか、さっきに比べて井上さんの肌にツヤがあるような。そういえば、以前に優奈や真央姉さんの胸を堪能した後も、彼女の肌ツヤが良くなっていた気がする。彼女にとって、女性の胸は美容効果があるのかもしれない。
「梨子さん、おっぱいをありがとうございました」
「いえいえ。胸に顔を埋めたくなったらいつでも言ってね」
「はいっ」
「娘のためにありがとうございます、梨子さん」
「いえいえ。とっても可愛い娘さんですね。和真のマッサージで気持ち良くなっている梨子さんも。可愛らしい親子です」
「ふふっ。いくつになっても可愛いと言われるのは嬉しいですね。ありがとうございます」
そう言うと、雛子さんはこちらに振り向いてニコッと笑った。その笑顔は娘の井上さんに負けないくらいに可愛らしい。
雛子さんの凝りは母さん達ほどではなかったので、彼女の肩から凝りがなくなったように思える。
「雛子さん。凝りがほぐれたと思いますが……どうでしょう?」
「どれどれ……」
俺が両手を離すと、雛子さんは両肩をゆっくりと回す。
「うんっ。取れたよ! ありがとう、長瀬君!」
雛子さんは俺に向かって笑顔でお礼を言ってくれる。その笑顔は胸を堪能した後の井上さんのような可愛い笑顔で。2人は親子なんだなぁと実感した。
母さんや彩さんはまだしも、雛子さんの肩まで揉むことになるとは思わなかった。一度に、こんなにも多く母親達にマッサージをすることは今後そうそうないんじゃないだろうか。
母さん達のマッサージをした後は、再びコーヒーやスイーツを楽しみながら、6人で談笑した。俺がマッサージしたからか、母さん達はさっきよりもスッキリとした表情になっていた。
そして、午後4時半頃。母さんと彩さん、井上さん、雛子さんは帰ることに。
「優奈、長瀬君、今日は楽しかったわ。長瀬君のおかげで肩がスッキリしたし。ありがとう」
「私も楽しかったわ。今度会うのは……和真は三者面談で、優奈ちゃんとは父の日になるかしら」
「そうなるかな。当日は優奈と一緒に父さんにプレゼントを渡したいし」
「ですね。お母さんと次に会うのも父の日になりますね」
今度の日曜日の父の日当日は俺の実家、優奈の実家それぞれに赴き、父さんと
「……あっ、そうだ。当日はお父さんが午前中に仕事があるから、午後に来てもらえると有り難いわ」
「分かりました。では、午前中に和真君のご実家、午後に私の実家に行きましょうか」
「そうだな。うちの方は大丈夫か?」
「うん、大丈夫よ、和真。午前中に2人が来るってお父さんと真央に言っておく」
「分かった」
自分の実家も優奈の実家も、結婚指輪を見せたり、母の日のプレゼントを渡したりしに行ったときが最後だ。楽しみだな。
「そっか。次の日曜日は父の日か。私もお父さんに何かプレゼントを用意しようかな」
「いいわね。お父さん、きっと喜ぶと思うわ」
井上さんも父の日にプレゼントを用意するのか。西山や佐伯さんはプレゼントを用意したりするのだろうか。
「じゃあ、私達はこれで。父の日にまた会おうね、優奈、長瀬君」
「またね、和真、優奈ちゃん」
「2人ともまた明日ね」
「今度はうちに遊びに来てね。あと、長瀬君はマッサージをありがとう」
「いえいえ。俺も楽しい時間でしたし、マッサージで気持ち良くなってもらえて嬉しかったです。スイーツ、ごちそうさまでした」
「萌音ちゃんやお母さん達と話せて楽しかったですし、美味しいスイーツも食べられて幸せな時間でした。ありがとうございました」
その後、優奈と俺は母さん達を玄関まで見送った。家を後にするとき、母さん達はみんな笑顔で。4人もここでの時間が楽しかったんだな。
母さん達と2時間ほど過ごしたのもあり、久しぶりに日常に戻った感じがする。
「楽しかったですね」
「ああ、楽しかったな。まさか、母さん達3人にマッサージすることになるとは思わなかったけど」
「ふふっ、そうでしたか。まだ4時半ですし、まずはカップとかを片付けて、その後に課題をやるのはどうでしょう?」
「うん、そうしよう」
マグカップやテーブルなどを片付けるためにリビングに戻る。
母さん達が帰ったからだろうか。今も優奈が側にいて、それがずっと続いていくことがいつも以上に幸せに思えるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます