第2話『義妹からの呼ばれ方』
それからはアイスティーやスイーツを楽しんだり、学校生活のことを中心に談笑したりして、6人で楽しく過ごしていく。
6人の中では陽葵ちゃんだけが年下だけど、みんなとの会話に楽しく参加している。今日初めて会った西山ともさっそく仲良くなっているし。さすがは明るくて、元気な性格の陽葵ちゃんだなと思う。
また、6人全員が観ている現在放送中のラブコメアニメの最新話を観た。いつも優奈と2人で話しながら観るのもあり、6人でワイワイと喋りながら観るのも結構楽しかった。
「最新話も面白かったぜ!」
「面白かったよな、西山」
「今回は主人公の妹が活躍していたわね。良かったわ」
「そうだね、萌音。妹メイン回を陽葵ちゃんと一緒に観られたのが良かったよ」
「そうですか。嬉しい気持ちになりますね! あたし、あの子が一番好きですから。あと、義理ですが、今はあのこのように和真さんというお兄さんもいますし」
「ふふっ。陽葵のように可愛いキャラですから、私も結構好きですよ。なので、今週のエピソードはとても楽しかったです」
今観た最新話は、主人公である兄のことが大好きな妹と一緒に遊んだり、兄に甘えたりするエピソードだった。優奈の実妹であり、俺の義妹でもある陽葵ちゃんも一緒だったのもあってか、優奈達もとても楽しく観られたようだ。
「俺も楽しかったよ。あと、優奈と結婚して、陽葵ちゃんっていう義理の妹ができたから、アニメやラノベとかで妹キャラが出てくると、前よりもいいなって思うようになったな」
「ふふっ、そうですか。あたしも和真さんっていう義理のお兄さんができたので、アニメとかのお兄さんキャラが気に入るようになりました」
「私も真央さんという義理のお姉さんができたので、以前よりもお姉さんキャラが好きになりましたね」
「そうなんだ」
優奈と陽葵ちゃんも同じような変化があって嬉しいな。
真央姉さんにとっては優奈と陽葵ちゃんっていう義理の妹ができたけど、創作物に登場する妹キャラが以前よりも好きになったのだろうか。ちなみに、姉さんは俺がいる影響か弟キャラが大好きである。特にそのキャラに姉がいると。
「そういえば……陽葵ちゃん。アニメを観て思ったんだけど、陽葵ちゃんは長瀬君のことを『和真さん』って呼んでいるわよね」
「そうですね、萌音さん」
「アニメのキャラのように、お兄ちゃんとかって呼んだことはあるのかしら?」
「いいえ、ないですね。確かなかったですよね、和真さん」
「そうだな」
出会ったときから、陽葵ちゃんは俺の呼び方を『和真さん』で通している。お兄ちゃんといった兄を連想する言葉で呼ばれたことは一度もない。
ちなみに、今観たアニメに登場した主人公の妹は、主人公のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ。主人公を呼ぶシーンが何度もあったから、井上さんは陽葵ちゃんの俺への呼び方について気になったのかも。
「お姉ちゃんが『和真君』と呼ぶので、その影響もあって『和真さん』にしていますね。年上ですから、さん付けがしっくりきて」
「そうなんだね」
「俺も和真さんって呼ばれるのはしっくりきてるよ。いいなって思ってる」
「良かったです」
「ただ……陽葵ちゃんが俺を『お兄ちゃん』って呼んだらどんな感じなのかは興味があるかな。義理だけど俺の妹だし」
それに、陽葵ちゃん以外は妹がいないから、そもそもお兄ちゃんって呼ばれたことが全然ないし。
「和真さんがそう言うのであれば、呼んでみましょうか?」
「うん、お願いするよ」
陽葵ちゃんからの『お兄ちゃん』呼びか。どんな感じになるのか楽しみだな。
陽葵ちゃんは体ごと俺の方に向け、ニッコリと笑って、
「和真お兄ちゃん!」
陽葵ちゃんらしく、元気良く俺をお兄ちゃん呼びしてくれた。
「……おおっ」
可愛い! 物凄く可愛いぞ!
可愛さの衝撃が強く、心がキュンとなって、思わず声が漏れてしまった。義理ではあるけど、妹からお兄ちゃんって呼ばれるのってこんなにもいいものなのか。頬がどんどん緩んでいくのが分かる。
「……凄くいいよ、陽葵ちゃん。とても可愛い」
「そうですか! そう言ってもらえて嬉しいです、お兄ちゃん!」
えへへっ、と陽葵ちゃんは嬉しそうに笑う。お兄ちゃん呼びしてくれたのもあって本当に可愛いな。俺の義妹ってこんなにも可愛いんだな。
「ふふっ、嬉しそうですね、和真さん」
「……今までの人生で、お兄ちゃん呼びは全然されたことがないからな。陽葵ちゃんが言ってくれたのもあって、本当に嬉しいよ」
「そうですか。良かったですね」
ふふっ、と優奈はいつもの優しい笑顔を向けてくれる。お兄ちゃん呼びに喜ぶ夫の姿を見てどう思うかちょっと不安だったけど、気持ち悪いとか思われていなさそうで良かったよ。
「陽葵がお兄ちゃんと呼ぶところは見たことがなかったので、新鮮でしたし、可愛いなって思いますね」
「可愛いよな、有栖川。俺も陽葵ちゃんみたいな妹が欲しくなったよ。長瀬が羨ましいぜ」
「あたしもだよ。陽葵ちゃん可愛いし、初めて会った2年前から思ってた」
「ふふっ。優奈をお姉ちゃん呼びするのも可愛いけど、長瀬君をお兄ちゃん呼びするのも可愛いわね」
みんな、陽葵ちゃんが俺にお兄ちゃん呼びしたのを可愛いと思っているようだ。呼ばれた身として嬉しく思う。
「陽葵ちゃん。お兄ちゃんって呼んでみてくれてありがとう」
「いえいえ!」
「何かお礼がしたいな。陽葵ちゃんは何か希望はある?」
「では、頭を撫でてほしいです。前にお姉ちゃんが、和真さんに頭を撫でてもらうのが気持ちいいと言っていましたから」
「そっか。じゃあ、頭を撫でるよ」
「はいっ! ありがとうございます、お兄ちゃん!」
お礼に絡めて「お兄ちゃん」って呼ばれるのもキュンとくるものがあるな。陽葵ちゃんが満足してもらえるように頭を撫でよう。
俺は陽葵ちゃんの側まで行き、陽葵ちゃんの頭を優しく撫でる。姉の優奈と同じく、陽葵ちゃんも髪が柔らかくて撫で心地がいいな。
「あぁ……気持ちいいです」
まったりとした笑顔になってそう言う陽葵ちゃん。
「良かった」
「お姉ちゃんが頭を撫でられると幸せな気持ちになると言っていましたけど、それも納得の気持ち良さです」
「ふふっ、そうでしょう」
優奈はちょっとドヤ顔になってそう言う。優奈がこういう表情を見せるのは珍しい。なので、可愛いのと同時に新鮮さも感じられる。
「幸せな気持ちになってきました。和真お兄ちゃん」
「そう言ってくれて俺も幸せだよ」
何て可愛い義理の妹なのでしょう。とても可愛いから、時間の許す限り陽葵ちゃんの頭を撫でてあげたいよ。
その後も陽葵ちゃんの頭を撫で続ける。撫で心地もいいし、陽葵ちゃんが気持ち良さそうにしているから癒やされるなぁ。そんなことを考えていると、
「あ、あの。和真さん」
優奈が俺のことを呼び、俺の左肩をポンポンと叩いてくる。頬をほんのりと赤くして、俺のことをチラチラと見ていて。どうしたんだろう?
「私も……お兄ちゃん呼びをしてみたいのですが」
「へっ?」
予想外のことを言われたので、思わず間の抜けた声が出てしまった。だからか、西山と井上さん、佐伯さんは楽しそうに笑う。
「陽葵にお兄ちゃん呼びされたときの和真さん、嬉しそうでしたし。お礼にと和真君に頭を撫でられる陽葵を見ていたら羨ましくなって」
「なるほど。そういうことか」
陽葵ちゃんからお兄ちゃん呼びされる一連の流れを見ていたら、陽葵ちゃんに嫉妬したのか。だから、自分もお兄ちゃん呼びして、俺に頭を撫でてもらいたいと。可愛いなぁ、俺のお嫁さん。俺と同じようなことを考えているのか、陽葵ちゃん達はみんな優奈に優しい笑みを向けている。
お嫁さんからのお兄ちゃん呼びか。陽葵ちゃんがとても可愛かったので、優奈に呼ばれたらどんな感じなのか興味が出てくる。
「分かった。じゃあ、お願いしようかな」
「分かりました!」
嬉しそうな様子で返事をすると、優奈は体を俺の方に向けて、俺のことをしっかりと見つめ、
「和真お兄ちゃん」
と、いつもの優しい笑顔で俺のことをお兄ちゃん呼びしてくれた。
優奈らしい笑顔で呼んでくれたのもあってとてもキュンとなる。夫婦という関係でありながらお兄ちゃん呼びされることにそそられるものもあって。凄く可愛いから、陽葵ちゃんのときと同じく頬が緩んでいく。
「とてもいいよ、優奈。可愛い」
「良かったですっ。喜んでもらえて嬉しいです」
優奈は言葉通りの嬉しそうな笑顔を見せる。
「まさか、お嫁さんからお兄ちゃんって呼ばれる日が来るとは思わなかったよ。ありがとう、優奈」
そう言って、俺はさっきの陽葵ちゃんのように、お兄ちゃん呼びをしてくれたお礼として優奈の頭を優しく撫でる。
優奈はとても柔らかい笑顔になって。頭を撫でられるのが好きだから、段々と嬉しそうな笑顔へと変わっていく。これで少しでも優奈が満足できていたら嬉しい。
「あたしに嫉妬するのを含めて可愛かったよ、お姉ちゃん」
「可愛かったよなぁ、陽葵ちゃん。有栖川にもお兄ちゃんって呼ばれるなんて、長瀬は幸せ者だな」
「ああ。本当に幸せだよ」
「優奈が嫉妬する姿は全然見たことがなかったから、新鮮で可愛かったわ」
「そうだね、萌音。長瀬のことが凄く好きなんだって分かるよ。あと、優奈はしっかりとしたお嫁さんだし、陽葵ちゃんのお姉ちゃんだから、長瀬をお兄ちゃん呼びするのはギャップがあって可愛かった」
「そう言われると、何だか照れてしまいますね」
えへへっ、と優奈ははにかむ。そんな優奈も可愛くて。照れている優奈には悪いけど、井上さんと佐伯さんの言葉に心の中で頷いた。
陽葵ちゃんが遊びに来ると決まったとき、優奈&陽葵ちゃん姉妹からお兄ちゃん呼びされるとは想像もしなかったな。嫉妬する優奈を見られたのも含めて、とてもいい時間を過ごせた。
それからも、みんなが知っているアニメを観たり、うちにあるテレビゲームをやったりして、陽葵ちゃん達が帰る夕方頃まで楽しい時間を過ごすのであった。
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