第1話『義妹からの質問』
誰かがうちに遊びに来たときはリビングで過ごすことが多い。なので、事前に、定期試験の勉強会のときのように、リビングにあるローテーブルと俺の部屋から持ってきたローテーブルをくっつけ、周りにそれぞれの部屋から持ってきたクッションが置いてある。
陽葵ちゃん達はクッションに腰を下ろし、みんなが持ってきてくれたお菓子をローテーブルに置いた。
また、優奈と俺は6人分のアイスティーを淹れ、それぞれの前にアイスティーの入ったマグカップを置いていく。その後に俺達は空いているクッションに座った。
ちなみに、座っている位置は、俺から時計回りに西山、佐伯さん、井上さん、陽葵ちゃん、優奈だ。俺と優奈、井上さんと佐伯さんは隣同士で座っている。
クッションに座ると、みんなは優奈と俺が淹れたアイスティーを飲む。今日は曇っているけど、蒸し暑いのもあってかみんな美味しそうに飲んでいる。
「今日は来てくれてありがとうございます、陽葵」
「いえいえ。お姉ちゃんと和真さんが好き合う関係になったから、2人の様子を見たくなって。それで、遊びに行きたいってお姉ちゃんに連絡したの」
「そうだったんですね」
結婚の話をしたとき、優奈は俺といつか好き合う夫婦になりたいと言っていた。その場には陽葵ちゃんもいて。そして、実際にその関係になれたので、陽葵ちゃんは俺達の様子を見たくなったのだろう。
「お姉ちゃん。和真さん。一緒に住んでいますから、毎日ラブラブイチャイチャな夫婦生活を送っているんですか?」
と、陽葵ちゃんは興奮気味に問いかけてきた。これを俺達に訊きたいのも、うちに来た理由の一つかもしれないな。
ラブラブイチャイチャな夫婦生活……か。そう言われると、優奈とキスしたり、一緒にお風呂に入ったり、主にベッドの中で優奈と肌を重ねたりしたことを思い出してしまう。それもあって、頬を中心に顔が熱くなってきた。
「そ、そうですね。和真君とはラブラブイチャイチャな夫婦生活を送っていますよ」
優奈は真っ赤になった顔に笑みを浮かべてそう答える。この様子からして、優奈も俺と同じようなことを思い出していそうだ。俺も頬中心に顔が熱いから、優奈みたいに顔が赤くなっているんだろうな。
「優奈とはとても仲良く暮らしているよ。ラブラブイチャイチャ……してる。ここに住まわせてくれているおじいさん達に感謝だよ」
大好きなお嫁さんと一緒に毎日過ごせて幸せだし、嬉しいからな。
「ふふっ、そうですか。あと……2人の顔の変化から、2人がどこまで進んだのかだいたいの見当が付きましたよ~」
陽葵ちゃんはニヤニヤしながら俺達にそう言ってくる。さすがに俺達の妹だけあって、俺達の様子を見て進展具合に察しが付いたか。
「俺もだよ、陽葵ちゃん。2人は一緒に住んでいる夫婦だし、好き合う関係になってからの様子を見ていたらなぁ」
西山は落ち着いた笑顔でそう言う。学校を中心に一緒にいることが多いから、西山も感付いていたか。もしかしたら、優奈と俺が最後までしたんじゃないかと考えている人は何人もいるかもしれない。
また、俺と優奈が肌を重ねたことがあるのを知っている井上さんと佐伯さんは微笑みながらアイスティーを飲んでいる。他の人にはこのことを話さないでほしいとお願いしているから、2人は何も言わないでいてくれるのだろう。
陽葵ちゃんは俺達の妹だし、西山は親友だ。2人とも感付いているし、2人なら話しても大丈夫そうかな。その前に優奈に確認するか。
「……優奈、言ってもいいか?」
優奈にそう耳打ちする。吐息がくすぐたかったのか、優奈は体をピクッと震わせて。その反応が可愛らしい。
優奈は俺の方に顔を向け、俺の目を見つめながら小さく頷いた。……よし、じゃあ俺から言おう。
「……最後までしたよ」
陽葵ちゃんと西山に交互に見ながらそう言う。言葉にするとドキドキしてくるなぁ。体がさらに熱くなる。
「そうですか、やっぱり」
「俺も想像通りだった。親友&推し夫婦がとてもラブラブで何よりだ」
「ですね、西山さん」
予想通りだったからか。それとも、最後までするほどに優奈と俺の仲が良くなっていたのが分かったからか。陽葵ちゃんも西山も朗らかな笑顔になっている。
「ちなみに、あたしと萌音は、好き合う夫婦になってから最初に登校した日に優奈から教えてもらったよ」
「まあ、私は優奈と2人きりに言い当てたんだけどね。胸の感じが違ったから」
「そうだったのか。理由が井上らしいな」
「ふふっ。伊達に2年以上優奈のおっぱいを堪能してませんよ」
ちょっとドヤ顔になってそう言う井上さん。理由が井上さんらしいって言われたのが嬉しいのかもしれない。
「陽葵ちゃんも西山君もこのことは誰にも言わないようにね。私達も誰にも言わないでってお願いされているし」
「分かりました!」
「分かったよ」
「2人ともありがとう。内容が内容なだけに、これまで西山に言えなかったよ。ごめん」
「気にするな。言えないことだってあるだろう。有栖川のことでもあるし」
西山は持ち前の爽やかな笑顔でそう言ってくれる。そのことに安心感を抱いた。
「これからもラブラブイチャイチャに過ごしてくださいね。もし、あたしが叔母さんになることになったら、そのときは精一杯にサポートしますから!」
「俺にも遠慮なく言ってくれていいからな」
「ありがとう、陽葵ちゃん、西山」
「ありがとうございます」
陽葵ちゃんも西山も優しいな。この前、佐伯さんも同じようなことを言ってくれたし。井上さんもきっと同じような気持ちだろう。
優奈と俺は優しい人達に囲まれている。だからといって、子供ができてしまわないように気をつけないと。結婚しているとはいえ、俺達は高校生だし。
「好き合う夫婦になりましたし、お二人がキスしている姿を見たいですっ。また見たことありませんし!」
「キ、キスですか? まあ、和真君さえ良ければいいですが……」
頬を赤くし、俺をチラチラと見てくる優奈。
これまで、優奈とキスしたのは主に優奈と2人きりのときだ。だから、陽葵ちゃん達の前でキスするのは緊張するけど……陽葵ちゃんのお願いを叶えさせてあげたい。
「俺も……いいよ」
「分かりました。では、私からしますね」
「ああ」
優奈の方に顔を向けると、優奈は赤らめた笑顔を俺に近づけ……キスしてきた。
唇が重なった瞬間、陽葵ちゃんの「きゃーっ!」という黄色い声が聞こえてきて。西山達の「おおっ」という声も。だから、緊張やドキドキもあるけど、優奈の唇の柔らかい感触といつもより強い温もりが心地良くて。
少しして、優奈から唇を離す。すると、目の前には真っ赤に染まった優奈の笑顔があった。凄く可愛い。だから、俺からも「ちゅっ」とキスをした。
俺からキスされるとは思わなかったのか、俺が唇を離すと、優奈はちょっと驚いた様子になっていて。ただ、俺と目が合うと、優奈は嬉しそうに「ふふっ」と笑った。
「良かったですっ! お二人のキスを見てドキドキしちゃいました! 好き合う関係になったんだって実感しました」
頬をほんのりと赤らめながら陽葵ちゃんはそう言った。そんな陽葵ちゃんは嬉しそうで。口と口のキスは好き合う人達を象徴する行為だし、実感するって陽葵ちゃんが言うのも分かるかな。
「そうね、陽葵ちゃん。私もドキドキした」
「あたしもだよ。優奈と長瀬が大人な感じに見えてくるよ」
「佐伯の言うこと分かるなぁ。俺、キスしたことないし」
西山達はそんな感想を口にする。
3人の言うことも分かるなぁ。中学時代に、友達が恋人とキスしているところを見たことがある。そのときはドキッともしたし、それ以降はその友達が何だか大人っぽく見えたから。
「陽葵に良かったと言ってもらえて良かったです。人前では全然しないので緊張しましたが、とてもいいキスでした。和真君から不意打ちのようにされたキスも」
「そう言ってくれて嬉しいよ。俺もいいキスだと思ったよ、優奈」
もしかしたら、これからは周りに人がいる中でキスすることが増えるかもしれない。真っ赤にしつつも笑顔でいる優奈を見ながらそう思った。
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