第1話『キスマークを付け合いたいです』
夜。
昨日の授業で出た課題を終わらせた後、優奈と一緒にお風呂に入った。
優奈と入浴するのは昨晩、今朝に続いて3度目。髪や背中を洗いっこしたり、湯船の中では抱きしめ合ってキスしたりして。一人で入るのも気持ちいいけど、優奈と一緒の方が気持ちいいと思う。
お風呂から出た後は、俺の部屋に行き、入浴後にいつもしていることをしていく。
また、優奈が普段しているストレッチを俺も体験してみることに。ストレッチなだけあって、体をゆっくりと伸ばす体勢が多くて気持ちがいい。
あと、優奈は俺に優しく丁寧に教えてくれるので、インストラクターになったら人気が出そうだなと思った。
「これで、私がいつもやっているストレッチは終わりです」
「そっか。結構気持ち良かった」
「それは良かったです。習慣にしているので、和真君にそう言ってもらえて嬉しいです。和真君と一緒にやったので楽しかったです」
ニコッと笑いながら、優奈はそう言ってくれた。
「良かった。俺はストレッチの習慣がないけど、気持ちがいいし、風呂上がりにやってみようかな」
「いいと思いますよ。ストレッチをすると、体の疲れが取れてスッキリしますし。あとは体型の維持もできますし。ストレッチのおかげもあって、甘いものを食べても太らずに済んでいるのかなと思います」
「なるほどな。バイトがあった日や体育の授業があった日を中心にやってみるか。そういった日は疲れが残ることもあるし」
「そうですか。今、私と一緒にやったストレッチで良ければ、メモを書いて渡しますが……どうしますか?」
「お願いしてもいいかな。気持ち良かったし。優奈と一緒にやったストレッチをベースに、自分でやるストレッチを考えてみたい」
「分かりました! では、さっそく書きますね」
「ルーズリーフとボールペンを持ってくるよ」
俺は勉強机にあるルーズリーフ1枚とボールペンを、ローテーブルの側にあるクッションに座っている優奈に渡した。
優奈はルーズリーフに習慣にしているストレッチの内容を書いていく。そのときの優奈は何だか楽しそうで。あと、いつもやっているだけあって、ストレッチメニューをスラスラと書いているな。俺はそんな優奈を静かに見守った。
「これで……全部ですね。書き終わりました」
「ありがとう、優奈」
ささやかだけど、お礼に優奈の頭をとても優しく撫でる。お風呂から出て、髪を乾かしてからそこまで時間が経っていないから、いつも以上に髪が柔らかくて、シャンプーの甘い匂いが濃く感じられた。
俺に撫でられるのが気持ちいいのか、優奈はとても柔らかな笑みを浮かべる。
「いえいえ。和真君に合うストレッチのメニューができるといいですね」
「ああ」
色々と試行錯誤をして、自分の体に合うストレッチメニューを作っていきたいと思う。
「……さてと、入浴後にいつもやっていることは終わったから……これから何をしようか。……今夜も……する?」
もちろん、することは肌を重ねることである。優奈にそれが伝わったようで、頬を中心に顔が赤くなっていく。
「……はい。今夜も……したいです。和真君とえっちしたいです」
優奈は俺と目を合わせ、優しい笑顔でそう言った。それがとても嬉しい。あと、えっちしたいってストレートに言われると凄くドキドキするな。
「そう言ってくれて嬉しいよ。今夜も……しよう」
「はいっ」
ニコッと笑って返事をする優奈。
「あと、する前後でも、している最中でもいいのですが……和真君とキスマークを付け合いたいなって思っていて」
「キスマークか」
「はい。昨日えっちしたとき、和真君は私の体にたくさんキスしてくれましたが、優しかったのでキスマークは付きませんでした。そうしてくれたのは嬉しいです」
「大切な優奈の体だから、欲の勢いで強くキスして、キスマークとかを付けたらまずいなって思ってさ。特に服とかで隠しにくい部分だと、友達とかに言われちゃうかもしれないし。そうなると優奈も嫌かなって」
「なるほどです。キスのように優しいですね。私も同じような理由で体にキスするときは優しくしました」
昨日、肌を重ねたときのことを思い返すと……優奈は俺の体にたくさんキスしていたけど、優しかったな。
「それに、和真君は接客のバイトをしていますので、見えるところにキスマークがあるとお客さんや同僚の方からの心証が良くないかもしれませんし」
「まあ……ないに越したことはないな」
大きさによっては絆創膏とかで隠せるだろうけど、鋭い人は隠しているものがキスマークだと気付きそうだし。
「ただ、自分の体に大好きな和真君に付けられた痕があるのもいいなって思えて。和真君の体にも付けたくて」
「大好きな人に付けられた痕……か。そう考えると、俺も優奈とキスマークを付け合いたくなるな」
「そうですかっ」
俺も同じ気持ちだと分かったからか、優奈は嬉しそうな笑顔になる。
「では、キスマークを付け合いましょうか」
「ああ、そうしよう。キスマークのことを話したし、今、付けようか」
「そうしましょう。……付けるのはどこがいいですか? 漫画やアニメなどは首筋とか胸にキスマークが付いているシーンがありますけど」
「俺もそういうシーンを見たことがあるよ。バイトのことを考えたら、服で隠せる場所がいいな」
「では、胸に付けましょうか。服で隠しやすいですし。自分で見るときは鏡を使わずに見られますから」
「そうだな。じゃあ、胸に付けてもらおうかな」
「はいっ! それで、和真君も私の胸に付けてくれますか? 同じ場所に付けたらお揃いな感じがしていいなと思いまして」
「それはいい考えだな。じゃあ、胸にキスマークを付け合おう」
「はいっ!」
優奈は元気良く返事をする。
キスマークを付けた経験は今までないので、何だかドキドキしてくる。優奈がいいなと思えるキスマークを付けたい。
「では、まずは私が和真君にキスマークを付けますね。私がキスマークのことを提案しましたし」
「分かった」
胸にキスマークを付けてもらうので、俺は寝間着の上着とインナーシャツを脱ぐ。そのことで上半身裸の状況になる。優奈には入浴のときや肌を重ねるときに全裸の姿を見られているけど、ちょっと緊張する。
俺が上半身裸になったからか、優奈は恍惚とした様子で俺のことを見つめていた。
「……和真君の素敵な体にキスマークを付けると思うと、ドキドキしますね」
「ははっ、そっか。可愛いな。じゃあ……お願いするよ、優奈」
「はい」
優奈がキスマークを付けやすいように、俺はローテーブルの周りに置いてあるクッションに座る。
優奈は俺のすぐ目の前で、俺と向かい合う形で座る。上半身裸になっているのもあり、優奈の生温かな吐息が感じられて。そのことにドキッとする。
「では……付けますね」
優奈は俺のことをそっと抱きしめ、俺の左胸に唇を触れた。そして、
――ちゅーっ。
と、俺の左胸を吸っていく。特に痛みはない。こういう感覚を味わうのは初めてだけど、優奈によってもたられているものだから不快感は全くない。
優奈は同じところ何度か吸っていく。その姿がとても可愛く思えた。
「……赤く付きました」
何度か胸を吸った後、優奈はそう言った。
左胸を見てみると……一カ所、先ほどまではなかった赤い痕がポツンと付いていた。その部分は唾液で湿っていて。これが、優奈が俺に付けてくれたキスマークなんだ。
「付いたな。蚊に刺された痕に似ているけど、優奈が付けてくれたものだから凄くいいなって思える」
「そう思ってもらえて嬉しいです。私も和真君の体に自分の付けたキスマークがあるのが嬉しいです」
優奈はそう言い、右手でキスマークに触れると、ニコッと笑う。優奈が嬉しく思えるものが自分の体にあると思うととても嬉しい気持ちになる。
「優奈、キスマークを付けてくれてありがとう」
「いえいえ」
「じゃあ、今度は俺が優奈にキスマークを付けるよ」
「お願いします」
優奈は桃色の寝間着の上着と、水色のブラジャーを脱ぐ。そのことで俺と同じく上半身裸になる。さっき、お風呂で優奈の裸を見たけど、こうして改めて見ると……綺麗だなって思う。
優奈は俺と向かい合う形でクッションに座る。
「下着で隠せる部分にキスマークを付けてもらえますか。体育で着替えるとき、下着姿にはなりますから」
「そうか。分かった」
「このあたりなら大丈夫です」
優奈は右手の人差し指で自分の左胸に触れる。
胸にキスマークが付いていたら、親友の
「分かった。じゃあ……キスマークを付けるよ」
「はい。お願いします」
俺はさっきの優奈のように、優奈のことをそっと抱きしめる。優奈が指し示した左胸のところに唇を当てて、
――ちゅーっ。
と、キスマークを付けるために吸い始める。その瞬間、優奈の体がピクッと震え、「んっ」と可愛らしい声が聞こえた。キスマークを付けているだけでもドキドキしているのに、今の可愛い反応されたからさらにドキドキする。
10秒ほど吸って唇を一度離すと、優奈の白い肌に赤い痕が。ただ、優奈が俺に付けてくれたキスマークほど濃くはないので、再び吸う。
吸って。痕はどうなっているか確かめて。それを何度か繰り返して、
「……付いたよ、キスマーク」
優奈の左胸にキスマークが赤く付いた。優奈の肌は白くて綺麗だから、赤いキスマークが結構目立つ。優奈の言う通り、下着でも隠せる部分に付けて正解だったな。
「……赤く付きましたね。凄くいいですね。嬉しいです」
優奈は左胸にあるキスマークを見ると、とても嬉しそうな笑顔でそう言ってくれた。そのことに嬉しくなるのと同時に、ちょっとほっとした。
「良かった。あと、キスマークが付いた優奈もいいな。こういう言い方は良くないかもしれないけど、俺のものって感じがして」
「ふふっ。少なくとも私はいいなって思います。和真君のお嫁さんですし。和真君だけのものですから」
「俺も優奈だけのものだから。優奈の旦那さんだし」
「嬉しいです。キスマークを付けてくれてありがとうございます」
「いえいえ」
「……初めてキスマークを付けましたし、写真を一緒に撮りませんか? これからもキスマークを付けることは何度もあるでしょうけど、初めては今回だけなので」
「ああ、いいぞ」
その後、優奈のスマホを使って、互いに付け合ったキスマークが見える形でツーショット写真を撮った。その写真はLIMEというSNSアプリで俺のスマホに送ってもらった。
自分のスマホに今の写真を表示させると……俺も優奈も左胸に赤くキスマークがついている。同じような場所だから、付ける前に優奈が言うようにお揃いって感じがしていいなって思う。そう思いながら、保存ボタンをタップした。
「写真ありがとう」
「いえいえ。……じゃあ、そろそろえっちしませんか? キスマークを付け合ったら、えっちしたい気持ちが結構強くなってきていて」
「そうだな。俺も優奈に触れて……したい気持ちが膨らんでるし。……するか」
「はいっ。昨日よりも積極的に動きたいです。昨日以上に和真君には気持ち良くなってほしいですし、和真君は明日バイトがありますから」
「ありがとう、優奈」
「はいっ」
優奈はニッコリと笑って返事をすると、俺のことをぎゅっと抱きしめてキスしてきた。
それからは、俺の部屋のベッドの中で、俺は優奈と肌を重ねた。
左胸にキスマークがあるからか、昨日よりも優奈が大人っぽく、優奈をより独り占めできている感じがした。キスマークを付けて良かったなって改めて思う。
積極的に動きたいと言っていたのもあり、昨日よりも優奈がリードすることが多くて。優奈のおかげで昨日以上に気持ち良くて。普段は大人しいタイプだから、このギャップにキュンとなる。
肌を重ねる中で、優奈と好きなどと気持ちをたくさん言葉にして。それもあって、優奈はたくさん笑顔を見せてくれた。
「……今夜も気持ち良かったですね」
「そうだな。優奈のおかげで昨日以上に気持ち良かったよ」
「嬉しいですっ」
優奈は俺の方に体を向けた状態で横になりながらそう言ってくれる。そのときの優奈の笑顔がとても可愛くて。
右手で優奈の頭を優しく撫でると、優奈の笑顔はより可愛らしいものに。
「優奈の動き……とても積極的で良かったよ」
「ありがとうございます。気持ち良かったですし、えっちする前にキスマークを付け合いましたから、興奮してたくさん動いちゃいました」
「ははっ、そうか。する前にキスマークを付けて正解だったな」
「そうですね。えっちする中で、和真君に付けたキスマークが見られて嬉しかったです」
「俺もだよ」
もしかしたら、キスマークを付けて、その流れで肌を重ねるという流れが、俺達にとっての定番の一つになっていくかもしれないな。
「今日は優奈と一緒にゆっくり過ごして、キスマークを付けて、肌を重ねたから……明日のバイトを頑張れそうだ。これから一緒に寝るし」
「それは良かったです。明日のバイト、頑張ってくださいね」
ニコリと笑いかけながら、優奈は俺に激励してくれる。今の言葉でより頑張れそうな気がする。そう思える俺はとても幸せ者だ。そう思いながら、俺は再び優奈の頭を優しく撫でた。
「ありがとう、優奈」
「いえいえ」
「……今夜は優奈を抱きしめて寝てもいいかな。そうしたら、明日のバイトをもっと頑張れそうな気がするから」
「いいですよ」
優奈は可愛い笑顔で快諾してくれた。嬉しいな。
俺は優奈に近づいて、優奈をそっと抱きしめる。そのことで優奈の温もりや甘い匂いがより強く感じられて。優奈の体の柔らかさも直に感じるから、とても気持ちがいい。
「こうしてベッドの中で和真君と身を寄せ合うと、初めて一緒に寝たときのことを思い出します」
「ゴールデンウィーク中の、雷が鳴った夜だったよな。あのとき、優奈は顔を埋めてたな」
「何度も雷が鳴りましたからね。怖さもありましたけど、和真君が側にいてくれたおかげで何とか眠れました。今となってはいい思い出です」
「そうか」
怖がっている雷絡みのことがいい思い出になったか。一緒に住む夫として凄く嬉しく思うよ。
「これからも、夜に雷が鳴ったときは顔を埋めさせてくださいね」
「ああ、もちろんさ」
今後、雷が鳴ったときは、優奈がなるべく怖い思いをしないで済むようにしよう。
今日もベッドの中で体を動かしたし、優奈を抱きしめているのが気持ちいいから、段々と眠気が襲ってくる。だから、あくびも出て。
「ふふっ。眠くなってきましたか」
「抱きしめるのが気持ち良くてさ」
「そうですか。明日は和真君はバイトがありますから、このあたりで寝ましょうか」
「ああ。おやすみ、優奈」
「おやすみなさい、和真君」
夜の挨拶を交わし、俺の方からおやすみのキスをした。
ベッドのライトを消して、俺はゆっくりと目を瞑る。目を瞑ったことで、眠気がどっと強くなって。それもあり、優奈の可愛らしい寝息が聞こえ始めたところで眠りに落ちていった。
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