第3話 1階層 スライム

おれとヒメシュウレイのふたりの生活が始まった。


「心! 起きてください!」」

「ん? ああ」


ヒメシュウレイに起こされた。

目が覚めて可愛いヒメシュウレイが目の前にいるのは悪くない。


「おはよう」

「おはようございます、心」

「ヒメシュウレイ起きるの早いな」

「はい、洞窟に行けると思ったら早く起きてしまいました」

「そ、そうか」


ヒメシュウレイは興奮しているんだな。


「心、朝食の準備ができていますよ」

「ありがとう」


おれは着替えをしてリビングにいった。

リビングのテーブルには朝食が用意されていた。

パンに昨日の残りのシチューだ。

そして、サラダが用意されていた。


「ヒメシュウレイ、用意してくれてありがとう」

「いえ、シチューが残っていたのでなにも作っていません」

「でも、用意してくれてありがとう」


ヒメシュウレイは頬をピンク色に染めていた。

褒められると頬がピンクになるようだ。

嬉しいということだな。

わかりやすくていいな。

おれはシチューにパンをつけて食べた。

昨日のシチューよりトロッとしていて、とても美味しかった。


「ヒメシュウレイ、昨日のシチューと一緒なのか?」

「いえ、パンにつけられるように少しアレンジしています」

「そうか、だから昨日と少し違うんだな」

「違いがわかるんですね」

「まあ、昨日と違うくらいはね」

「ふふっ、これから作りがいがあります」


まったりとした朝食の時間が終わり、いよいよ魔物退治に洞窟に行くことになった。


「ヒメシュウレイ、準備はいいか?」

「はい、もちろんです」

「では、いざ洞窟へ」


おれはヒメシュウレイの案内で洞窟までやってきた。

カンテ国王さまにもらった剣と盾を持って洞窟の前に立った。

ヒメシュウレイは自前の短剣を腰につけている。

いったいどんな魔物が現れるのだろうか。

緊張してきた~


「ヒメシュウレイ、行くぞ!」

「はい、心」


おれとヒメシュウレイは洞窟に入っていった。

洞窟の中は真っ暗ではなかった。

少し暗いがちゃんと光が照らされていた。

歩いて進むには何も問題はない感じだ。


「心!」


急にヒメシュウレイが構えた。


「ヒメシュウレイ、どうした?」

「前方に魔物います、気をつけて!」

「そう……なのか」


おれにはまったく見えなかった。

少し歩くとヒメシュウレイが言ったとおり、魔物が現れた。

すごいな、少し先の魔物がわかるんだな。

これはヒメシュウレイの特技なのかな。


「心、わたしが倒します」


よくみると、スライムだった。

異世界でレベルが低いときに現れる魔物って、スライムというのは定番だよね。

ここは、おれの練習のためにもヒメシュウレイではなくておれが倒さなければいけないのでは?


「ヒメシュウレイ、ここは練習のためにおれが倒す」

「はい、わかりました」


倒すっていったけど……この錆びた剣で倒せるのかな?

まあ、やってみるしかないか。

おれはスライムに立ち向かった。

そしてスライムの前に立ち、剣を上から振り下ろした。

ザクッ!

スライムを倒した。

ふう~

この剣、錆びているけどなかなかの切れ具合いだったな。


「心、お見事です」

「そ、そうか」

「はい、初めてにしてはすごく上手でした」

「そうかな」

「わたしが初めてスライムを倒したときは上手に倒せませんでした」

「なんでだ?」

「スライムってぬるぬるしているから剣をうまく上から振り下ろさないとぬるっとかわされてしまうんです」

「そうなのか?」

「はい、わたしはそれで何度も失敗して何度も何度も練習しました」

「そうか」

「心は初めてですごいです」


ヒメシュウレイに褒められておれは嬉しかった。

それと同時にカンテ国王さまにもらったこの剣のおかげなのではないかと思っていた。


「よし、先に進もう」

「はい」


おれたちはスライムを倒し続け、洞窟を進んだ。


――――


しばらく進むと扉を発見した。


「ヒメシュウレイ、あそこに扉があるぞ」

「心、今まであんな扉はありませんでした」


やはり、ひとりでは進めないようになっているのか。

いよいよ、ヒメシュウレイもいったことのない先に進むということだな。

慎重に行かなければと思った。


「ヒメシュウレイ、進もう」

「はい」


おれとヒメシュウレイは恐る恐る扉を開けた。

すると、そには大きなスライムが1体と小さなスライムがうじゃうじゃいた。


「わぁ! これをふたりで倒さないと部屋から出られないってことだな」

「心、どうしましょう」

「とりあえず、大きなスライムを警戒しながら小さいスライムから倒そう」

「はい、わかりました」


おれたちは小さいスライムを倒し始めた。

ザクッ!

ザクッ!

……

……

ようやく、小さいスライムをすべて倒した。

やはり、大きなスライムは襲ってこなかった。


「心、このスライムはわたし任せてください!」

「お、おい待て! ヒメ」


ヒメシュウレイは戦略もたてずに大きなスライムに向かっていってしまった。

ヒメシュウレイは大きなスライムの頭上に飛び上がり短剣を突き刺そうとした。

すると、短剣は刺さりもせずヒメシュウレイは跳ね返されてしまった。


「きゃあ!!」

「おい! ヒメシュウレイ大丈夫か?」


ドンッ!


おれはヒメシュウレイに近寄った。


「おい、大丈夫か?」

「はっはい、すみません大丈夫です」


ヒメシュウレイは軽いけがをした。

しかし、短剣が刺さらないとはどうしたものか。

おれの剣なら刺さるのか?

試してみるしかないよな。


「ヒメシュウレイ、ここで休んでいてくれ」

「で、でも」

「大丈夫だ」

「は、はい」


おれはスライムの前に立った。

そして、剣を構えた。

すると、スライムから手のようなものが伸びてスライム玉を打ってきた。


わぁ!

おれはよけた。

危ない!

あの玉にはあたったらいけないんだろうな。

よけながら後ろに回るか。

おれはスライムが打ってくる玉をよけながら、スライムの後ろに回った。

そして、後ろからブスッとスライムに剣を突き刺した。

すると、大きなスライムはパンッと消えた。

倒せたのだ。

ふう!

やった!

そして、部屋の真ん中に宝石箱が現れた。


「心! お見事です」

「そうか」

「はい、すごいです」

「倒せてよかったな」


おれとヒメシュウレイは宝石箱を開けた。

箱を開けると、中には傷回復の薬と毒回復の薬そして宝石のような石が入っていた。


「ヒメシュウレイ、これを」


おれは傷回復の薬をヒメシュウレイに渡した。


「いけません、こんな大事な薬を……」

「いいから、今飲むときだろ」

「ありがと……う」


そういうとヒメシュウレイは傷回復の薬を飲んだ。

すると、すぐに傷は回復した。

ほんとにすぐに回復するなんてすごいな。


ふと見ると、先ほどまでなかった次への扉が開いていた。


「ヒメシュウレイ、あそこから次のステージに行けるみたいだ」

「はい、今度は油断しませんから」

「ああ」


おれとヒメシュウレイは次なるステージに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る