作品楽しく拝見いたしました。
嫌なこと 少し忘るる 水仙の
この一句に興味を持ったのは、俳句と短歌がもともと和歌から派生していったものだということを思いださせてくれるものだったからです。
俳句と短歌のちがいは17音か31文字のちがいです。
「嫌なこと少し忘るる水仙の」の詩句の「少し」「水仙」の、す、という音の反復の調べもさることながら「水仙の」と詠まれたあとに、77の後半をあれこれと想像したくなる点にあります。
俳句の定石として体言止め、つまり単語、とりわけ季語で一句を終えることがあります。
この一句は「水仙の」のあとは読者にゆだねるかのように終えられています。
俳句の一句の間は作中にひとつ、またはなしで読まれる。そして目立たないけれど末尾にもうひとつの間があります。
「水仙の」というあとに77の部分があれば短歌となるかもしれない感じる余韻が生まれています。
一句に読者があれこれ想像をめぐらせることができる余白が余韻となるなら「水仙の」という一句の終わりかたは、おもしろいと感じました。