海に沈んだ未来図書館は古の魔法使い

蟹戦艦G

静かな時に惑う

僅かに眩しさをうっすらと感じて、視界を遮る

まだ寝ていたいと訴える身体を動かさなければならない


雨上がりの晴れは、どうも苦手だ



ゆっくりと立ち上がって辺りを見渡す



どうやら睡眠不足だったらしく

見つけた木陰で

少し休む低度の筈が

二時間も寝ていたらしい


青々とした新緑の葉には雨粒が輝いている

空を見上げると

もう直ぐ、日が暮れてしまう


何故、そう思ったのかは分からないが

少しばかりの焦燥感と、心の内側から湧いてくる不思議な探求心の二つだけ


それだけで、もう生きていけそうな気がした




帰路は時が止まったように静かで、さすがに世界が私を置いて去って行ってしまったように感じでしまう


でも


それは直ぐに否定される



白い毛並みの華奢な猫が商店街を悠々と歩いていた。


此方を振り返ると、一度だけ此方を見つめて奥へと向かって行く



時が止まったような瞬間だった



その口から


『ついておいでよ』



そう、確かに聞こえたのだ



動物と話すという意外な夢を見ている

いや、正しく言えば私は話していないけれど

とにかく、話したことになるのだろうか?



思考がグルグル回る中

謎の魅力を放つ白猫は、一度だけ蒼い瞳で此方を見て嬉しそうにニャンと鳴いて


暫く立ち止まった雑貨屋へと、入って行った



夜になってしまったが、何故か帰る気にならない

楽しそうという気持ちが、門限の決まりより遥かに勝っていた


いつもは両親に、心配をかけたくなくて

門限は必ず守っていたが



それから猫についてくるよう言われたのが不思議で、その真意を知りたくて

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