湖畔
目を覚ますと
私は湖畔に来ていた
肌寒く感じる季節
少量の風が吹いて
湖畔は波が少し立っていた
ゆらゆらと
水面に浮かぶ
船は揺れる
風は一層強く
寒さを増している
まるで私の心情を表すかの如く
湖畔は私に問い掛ける
だが私は言葉を聞き取れぬ
波が話しかけても
私には分からぬ
何事も分からぬのだ
段々と声は
風に掻き消されていく
気の所為だろうか
湖畔が一瞬寂しい表情をしていた
きっと心が病んでいるのだろう
たまたまそう見えてしまったに違いない
湖畔に感情などないのだから
自然は好きだ
感情などという
馬鹿げたものがないのだから
私はただ風の音を聞き
草木の揺すれる音を聞いて
心を休めるだけでいいのだ
寧ろそれしか求めておらぬ
人語など雑音に等しい
自然の音こそが
私の心情を落ち着かせるのだ
他ならぬ私を
人間として認めてくれる
自然こそ生命の原点なのだ
だのに人間は何故自然破壊などを犯す
一体何故だ
私達の祖先を壊しているようなものである
その残虐な行為を私は見逃しておけない
自然こそこの世の理であり
私達の生命であるのだ
私はもう命が尽きようとしている
皆々様はなんにも思わないだろうが
自然は私を暖かく迎えてくれるだろう
私は静かに目を閉じて
自然の脈を感じながら
命の途切れ目を待っているのだった
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