秋風

頬を刺すような冷たい冷気

時折見せる生暖かい息吹

いつにまにか季節は過ぎ

秋の陽気になろうとしている

昨日までそばにいてくれたはずのあの人は

いつの間にか遠くに行ってしまった

何を考えているのやら

何も考えていないのやら

私には到底わかることではありませんが

あの人は秋風と共に去っていったのですね


さて私は特別秋が好きな訳では無い

しかし好きな季節を聞かれると

秋と答えてしまうだけなのです

秋になればあの人の匂いを思い出す

鼻につくあの金木犀の匂いを

甘ったるい雰囲気を漂わせ

いつの間にかそばに来て

いつの間にか去っていく

まるで何時しか吹いていた

あの秋風のように

あの人はもういない

私に黙って消えてしまったのだ…


オリーブ色の木の葉は

何時しか紅葉となり

すっかり秋空となってしまった

私は縁側に座っていた

あの人はもうこたつを出して温まっていた

私がまだ早いというと

あの人はもう出してても遅くないという

こたつの中には猫がいて

一緒に戯れていたっけな

もう微かな思い出しかないが

私にとっては楽しい思い出だったよ


秋空が白く染まり始めたら

私はそっと涙を流す

頬を刺すような冷たさが

私を一層苦しめて

  苦しめて

そして縁側にそっと佇んでいた

あなたを思い出すのです

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