怪獣騎士 ジェクト(漫画原作シナリオver.)
碧渡戊武
第1話
1p
〇公園 雨
雨の降る遊具が少ない公園。傘といっぱいに入ったレジ袋を持つ宮田侑奈(16)。侑奈に対面してベンチの後ろの構図
T「その出会いは雨が降る六月の朝のことだった」
侑奈「ねぇ、君。大丈夫?」
ベンチに仰向けに寝そべっていて、裸足でボロボロの布を纏っているだけの少年・ジェクト(10)は片目だけ開ける
ジェクト「……なんだ? 女……」
首をかしげる侑奈
侑奈「君、お父さんか、お母さんは?」
ジェクト「……いない」
体を起こしたジェクトくんのお腹がぎゅるるると鳴る
侑奈「じゃあ……おうちは?」
ジェクト「……ここ」
2p
ラップを半分だけ剥がしたホットドック。(半分に切れ込みを入れたロールパンに、たっぷりの野菜とロングソーセージを挟み、その上に半分に切ったゆで卵をのせたホットドッグ)
侑奈「お腹空いてるの? これ、食べる?」
ホットドックにかぶりつくジェクト
侑奈「おいしい?」
ジェクト「……おい……しい。なんだ……これは?」
立ち上がる侑奈
侑奈「ホットドックだよ。それ、私も大好きなんだ」
ジェクト「……ほっと……どっく」
侑奈とジェクトの対面
侑奈「私、侑奈! 君の名前は?」
ジェクト「……じぇくと」
ジェクトに手を差し出す侑奈
侑奈「ねぇ、ジェクトくん。家に来なよ!」
首をかしげるジェクト
ジェクト「うち……?」
侑奈「そ、あったかいところだよ。ね、行こ!」
ジェクト「……うん、わかった」
ジェクトと手を繋ぎ、相合傘で帰る侑奈
3p
〇侑奈家の一階喫茶店内
侑奈とジェクト
侑奈「ママーただいまー」
食器を洗う侑奈ママ(36)が奥からひょこっと顔を出す
侑奈ママ「おかえりー……あんれ? お客さん連れてきたの?」
カウンターに荷物を置く侑奈
侑奈「あっ、違うのママ。この子、うちに居させてほしいんだけど……ダメかな……」
侑奈ママ「んー……いいわよ」
階段を上る侑奈と後に着くジェクト
侑奈「ジェクトくん、私の部屋に連れてくね」
侑奈ママ「はいはーい」
テレビでニュースを見る侑奈ママ
女性レポーター「昨日、薬物所持で逮捕された19歳の少年は」
押収された液体状の薬とペン型の注射器がテレビに映る
女性レポーター「『薬があれば怪獣に成れる』などと意味不明な供述をしており――」
侑奈ママ「あらやだ、物騒な世の中だこと」
4p
水たまりに映る青空
T「それから、ジェクトくんが家に来て二週間くらい経った」
二階から降りてくるジェクト。Tシャツに短パン姿
侑奈の声「あ、ジェクトくんは何か食べる?」
ジェクト「ほっとどっく……食べたい」
ポニーテールにエプロン姿の侑奈
侑奈「はいはーい、すぐ作るから、ちょっと待っててね」
テーブルにホットドックが4つ乗せたお皿が置かれる
侑奈「はい、おまたせ! 特製ホットドック!」
手を合わせる侑奈
侑奈「いただきます! ……ほら、ジェクトくんも」
同じように手を合わせるジェクト
ジェクト「……いただきます」
微笑む侑奈
侑奈「ふふっ……よろしい」
5p
「ごほっ」とむせる侑奈
ジェクト「侑奈。オレは借りを返したい。オレは何をすればいい?」
困惑した表情のジェクト
侑奈「何? 急にどしたの? でも大丈夫。君はそのままでいいよ」
ジェクト「そうなのか?」
ひらめいた侑奈
侑奈「あっそうだ! デート行こう!」
ジェクト「でえと? それはなんだ?」
満面の笑みを浮かべる侑奈と首をかしげるジェクト
侑奈「ふふふっ、すごく楽しいことだよ」
6p
〇遊園地
観覧車とメリーゴーランドが大きい遊園地
T「次の日」
元気に指をさす侑奈と疲れているジェクト
侑奈「次はあっち行こうよ!」
ジェクト「こ、これが、でえとか……」
人混みの中で目立つ金髪のスキンフェードの不良・藤倉勝遊(16)
侑奈「うっわ……」
ジェクト「どうかしたのか?」
うつむく侑奈
侑奈「うん……ちょっと会いたくない人を見かけちゃってね」
ジェクト「どうしてなんだ?」
学校の教室で「付き合ってくんね?」と言う藤倉と「ごめんなさいっ」と言う侑奈
侑奈「その人にさぁ、この間、告白されちゃってさ」
ジェクト「こく……はく……?」
目を三角にして怒り暴れ狂う藤倉
侑奈「あんまり、いい噂聞かなくてさ」
侑奈「お断りしたら逆恨みされているみたいなんだよねぇ」
ジェクト「そう……なのか」
7p
ジェクトの背中を押す侑奈
侑奈「だからさ、ジェクトくん、あっち行こっか」
振り向く侑奈
侑奈「!?」
ニヤつく藤倉
侑奈M「あっ……しまった……」
8p
〇観覧車前
後ろから侑奈の腕を掴む藤倉
藤倉「まさか、ここにいるとはなァ! 宮田ァ、オメェのせいで俺は笑いもんだよォ!」
藤倉の腕を掴むジェクト
ジェクト「侑奈は悪くない」
ジェクトの横顔
侑奈M「ジェクトくん……」
藤倉「痛ってぇ! なんだァ? このガキィ」
鬼の形相の藤倉
藤倉「宮田ァ俺のことはフッておいてこんなガキとデートかよ。」
藤倉「オメェにそんな趣味があったなんてなァ!」
戸惑う侑奈
侑奈「ちっ、違う……私とジェクトくんはそんなんじゃ……」
9p
頭を搔きむしる藤倉
藤倉「ああ、なんでもいい! むしゃくしゃしてんだ。」
ペン型の注射器を握る手
藤倉「元々、ここで暴れようと思ってたんだよ。オメェがいるなら丁度いい」
慌てる侑奈の横顔
侑奈「ちょっ、何する気!?」
薄気味悪い笑みを浮かべる藤倉
藤倉「こいつはなァ、すっげぇぶっ飛べるヤツなんだ」
左二の腕に注射する
藤倉「何って? こうすんだよォ!」
10p~11p
伸びた犬歯
ゴツゴツしたしっぽ
藤倉の全身の皮膚が赤黒くなり、岩肌のようになった藤倉。
巨大化していき、最終的に二〇メートルくらいの二足歩行型の禍々しい怪獣となり果てる藤倉
足元でへたり込んでしまう侑奈
怪獣藤倉「グゥォオオオオオオオオオオオオオオオ!」
12p
侑奈に手を差し伸ばすジェクト
ジェクト「侑奈! 逃げるぞ!」
下から迫ってくる巨大な怪獣の手
侑奈の目の前で薙ぎ払われてしまうジェクト
観覧車の中心にぶつかるジェクト
崩れる観覧車
侑奈「あっ……あああ! ジェクトくん!」
13p
上体をそらし、雄たけびをあげる怪獣
藤倉怪獣「ウガアアアアアアアアアア!」
侑奈を掴み上げる怪獣
侑奈「……くっくぅ……」
苦しむ侑奈
侑奈M「く、苦しい……このままじゃ死んじゃう」
14p
うつぶせになって倒れているボロボロのジェクト
ジェクト「……このままじゃ、佑奈に借りを返せなくなる」
立ち上がるジェクト
ジェクト「自分に初めて優しくしてくれた人を……」
目が青白く光り、叫ぶジェクト
ジェクト「失いたくないんだあああ!」
15p
青紫色の怪獣となったジェクト
16p
超高速で藤倉怪獣と距離を詰める怪獣ジェクト
藤倉怪獣に右スイングする怪獣ジェクト
怪獣ジェクト「ふっ」
藤倉怪獣に左ボディブローを当てる怪獣ジェクト
怪獣ジェクト「はぁっ!」
藤倉怪獣に回し蹴りをヒットさせる怪獣ジェクト
怪獣ジェクト「てやぁ!」
よろける藤倉怪獣が侑奈を手放し、侑奈は落下し始める
怪獣ジェクト「はっ!」
高所から逆さまで落下する侑奈
侑奈M「こんな高さから落ちたらひとたまりもないな……ジェクトくん今行くからね」
17p
侑奈を掌で受け止める怪獣ジェクト
怪獣ジェクト「侑奈!」
唖然とする侑奈
侑奈「あなた……もしかして ジェクトくん!?」
怪獣ジェクト「……」
噴水広場に降ろされた侑奈
侑奈「ちょっと! 答えなさいよ!」
侑奈に背を向け、走る怪獣ジェクト
ジェクト怪獣「…ハアアアアアアアアアア!」
18p
口から火炎弾を連発する藤倉怪獣
藤倉怪獣「ギャアアアオオオス!」
火炎弾を手刀で撃ち落とす怪獣ジェクト
怪獣ジェクト「ふんっ!」
藤倉怪獣の右大振りをしゃがんで回避する怪獣ジェクト
怪獣ジェクトの左アッパーで上空に打ち上げられる藤倉怪獣
怪獣ジェクト「ハアアアアアアアアアア……!」
藤倉怪獣「グギャアアア!」
19p
右手拳を挙げ、青白いビームを放つ怪獣ジェクト
怪獣ジェクト「ハアアアアアアアアアア……!」
爆散する藤倉怪獣
藤倉怪獣「ガアア……グオオオオオオオオオオ……!」
キョロキョロする侑奈
侑奈M「……あれ? ジェクトくん?」
20p
〇遊園地跡地
仰向けで倒れているジェクト。遠くから侑奈が来る
侑奈「ジェクトくん! しっかり! 早く家に帰ろ」
ジェクトを抱えようとするも手を払い除けられてしまう侑奈
ジェクト「……はぁはぁ……オレは一緒には帰れない……」
困惑する侑奈
侑奈「……え? なんで……?」
21p
汗だらだらで、息を切らすボロボロのジェクト
ジェクト「……知っているのだろ? ……さっきの怪獣がオレだってこと」
もの悲しげな表情の侑奈
侑奈「……うん。知ってるよ」
顔をそむけるジェクト
ジェクト「だから……もう一緒にはいられない……」
ジェクトを抱きしめる侑奈
侑奈「……そんなの関係ないっ! ジェクトくんはどんな姿でもジェクトくんだよ。」
ジェクトの両肩を掴む侑奈
侑奈「それに、私たちは家族なんだよ? 勝手に出てって、前みたいなホームレス生活したら私が許さないんだから!」
22p
はっとした表情になるジェクト
ジェクト「……! 一緒にいてもいいのか……?」
立ち上がり、笑顔でジェクトに手を差し伸ばす侑奈
侑奈「あたりまえじゃない! さ、家に帰ろ? ご飯、何食べたい?」
侑奈の手を掴み、立ち上がるジェクト
ジェクト「……ほっとどっく」
手を握り帰る侑奈とジェクト
侑奈「もう。そればっかなんだから……ふふ」
笑顔のジェクトの横顔
侑奈M「ありがと、守ってくれて。私のナイト・ジェクトくん」
怪獣騎士 ジェクト(漫画原作シナリオver.) 碧渡戊武 @Midorito_bob
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます