第18話
白石さんは勉強すると言ってたにもかかわらず、私が借りている催眠の本を読んでいる。
「そんなにその本が読みたいなら持って帰れば?」
「これ図書館の物でしょ?」
「そう。だからついでに返してきてよ」
「いつまで借りれるの?」
「確か……明後日?」
明後日と聞いて呆れたという表情をしている。
「それなら美咲から勉強することにするわ」
と言い出して私の隣まで移動してきた。
「それってどういうこと?」
「はい私の人差し指を視て」
「催眠術を掛けて催眠術を教えさせるの?」
私はあまりにも面白い発想に笑ってしまった。
「昨日はいけたから……」
「それは私がわざと掛かりやすくなったからだよ。本来はそんな簡単には掛からないからね」
「そんなー」
明らかに残念そうな顔をする白石さんの頭を撫でて笑いながら「ごめんね」と言っておく。
「本当……ずるい」
「自力で勉強することだね」
「……」
謝ったのに何故か目線を反らして少し距離をとられた。
「何で離れるの?」
「別に」
「怒ってる」
「別に。宿題取ってくる」
宿題を持って部屋に戻ってきてからずっと無言で宿題をしている。
よくよく考えたら白石さんって宿題とか勉強するとこ想像できないよね。あんな真面目な表情するんだ……。
「なに?」
「いや……真面目な表情が綺麗だなーと」
「ふーん」
気まずい……私にずっと目を合わせようとしてくるからずっと下を向いていることしかできない。
「夕飯にしようよ」
「あ……そうだね。それじゃあ下りようか」
「私は宿題を終わらせたら下りるよ」
「オッケー……」
一人で考える時間ができるしいいか……。
白石さんを自室において一階に下りる。改めて冷蔵庫を見るけれど、これじゃあお腹は満たせないな。仕方ないけどインスタント食品とカップ麺で誤魔化すか。
明日は業務スーパーにでも行って買溜めしようと計画を建てながら、ポットに水を淹れてボタンを押す。
私が台所で待ち時間をスマホでのネットサーフィンに使っていると、いつの間にか私の隣まで白石さんが来ていた。
「何してるの?」
「SNS」
「ふーん……知らない人ばっかだ……知り合い?」
「う~ん……一応有名人かな」
「そうなんだ」
それから少しの沈黙の後に私から「勉強とかは終わったの?」と質問をする。
「まあまあかな」と曖昧に返された。
夕食を取った後、勉強をするからとすぐに二階へ戻って行った。
私は土曜日に買った香水と紅茶を準備して白石さんの居る自室に持って行く。
「入るよー」
「うん」
「うわ、何で本なんて読んでるの?」
「うわって何?やることやって暇になったから本を読んでただけですけど」
そう言って白石さんはニコニコしながら催眠療法入門をヒラヒラとさせて私に見せつけてくる。
思い出したかのように私は話題を変えて「今日はお風呂入る?」と質問をする。
「お昼に入ったし遠慮しとく」
「了解ー」
持ってきた紅茶をベッド前の机に置く。
それなら私も遠慮しといて今からパジャマに着替えるかと、クローゼットを開けてタンス隣にハンガーでかけてあるパジャマをベッドに投げ置いて、シャツを脱ぐ。
「え、何してんの?」
「何って寝間着に着替えてるだけだけど」
「そう……て下まで脱いで!」
「何言ってるの、ズボンも着替えるに決まってるでしょ?あ―もしかして意識してるの?」
「そんなわけないし!」
「それじゃあ、ちゃんと私を視て話しできるよね?」
白石さんの反応が面白いから、わざわざ彼女の横まで移動する。
「ちょっとこっち向きなよ」
「何で下着姿でこっち来るの……」
「まあまあ何でもいいじゃん。お風呂で裸見てるし、キスもしてきたのに下着姿は恥ずかしくて視れないの?」
「恥ずかしくないし」
「耳まで真っ赤なのに?」
そういうと何も言い返さずに赤面しながら私を睨み付けてくる。
ここまで煽ればいけるだろうと、いまだに睨み付けている白石さんの顔までしゃがんで目線を合わせる。
振り向いてくれるまで催眠術を掛ける百合 km黒 @kmkuro
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