魔槍の解放者と聖剣の英雄~終末世界の素晴らしき共依存~

極彩色ブランデー

第1話『謎の青年(拉致)』

聖勇暦751年。

昼下がりのミレパクト王国北部の隣国付近の村にて。


「そろそろ報告のあった村だ!気をつけろ!”はぐれ”は居ないと思うが傭兵崩れが居る可能性は十分にある!班編成の通り動け!」


 馬に乗り甲冑を来た集団が村を訪れるが……人の気配が無い。

 残っているのは、みずぼらしい家々と黄金に輝く麦穂たちだけだ。

 彼女達は、大型の魔物の報告が無い為、数日かけて隣国付近の辺境まで訪れたのだが……まるで神隠しのように人が居ない。

 金髪のショートヘアに黄瞳の隊長らしき女性が隊を止めて村を見下ろす。

 隣から、茶髪の男性が声をかける。


「村人全員が他の村まで退避したのでしょうか…?」

「わからん。だが、それなら麦を収穫して積んでから出発するはずだ。わざわざ残していく意味が分からん。」

「そんな余裕が無かったとか?」

「馬鹿言え。魔物の嗅覚・視力・聴力を忘れた訳じゃないだろう?農民が気づいた頃には襲われてない方が不思議だ。」


 馬上で推論を立てるが、不思議さが募るばかりだ。

 推論が組みあがらずとも、彼女には指示を出す必要があった。


「総員!警戒しつつも、村を調査しろ!現場指揮はフィリップだ!我々、中央班は簡易拠点の設営!及び報告情報の整理に入る!動け!」

「よし!前班と後班は付いてこい!全員固まって行動するぞ!もし”はぐれ”を見つけても遅滞戦闘だ!隊長が来るまでな!」


 フィリップと呼ばれた男は20人程を引き連れて村へと向かう。

 警戒組と探索組に分かれて、家を丁寧にひとつずつ調査する。

 家内はいたって普通であり、すぐさっきまで生活していたようにさえ見える。


(どういう事だ?これなら、夜逃げか神隠しの方が現実味あるが……)


 そのまま2軒、3軒と次々調査するが結果は同じだった。

 そのまま最後の村長宅と思われる大きな家を調査する。


(う~ん、どう報告したものか……ケラヴィノス隊長。成果なしとか言うと怒るしなぁ…)

「フィリップさん!生存者を発見しました!ただ…。」


 生存者の報告を受けてフィリップは二階へと上がる。

 他の騎士を掻き分けていくと、ベッドで寝ている青年を見つける。

 藍髪で肌は白めだ。

 年齢も若い。恐らく10台後半ぐらいだろう。

 体型も引き締まっており、農民よりは戦士を思わせる。

 そして目を引いたのは、隣に立てかけられた剣だ。

 我々の装備するミレパクト工房製のロングソードよりも僅かに短い。


「すぅ……すぅ……」

「どうしますか?」

「……寝ている間に拘束して簡易拠点へ連れて行こう。剣も忘れずにな。もし傭兵や旅人であっても、隊長なら制圧できるだろうしな。」

「わかりました。」


 小声の相談を終えると青年をロープで拘束して、持ち上げる。

 だが青年は起きる事なく寝たままだ。


「こいつ起きないな。俺が持ち上げられたら、びっくらこいて跳ね起きる自信があるぜ。」

「無駄口叩いてないでゆっくり運べよ。お前だって無理矢理起こされるのは嫌だろ?」

「結局起こされるだろうけどな。あぁ、剣は頼む。変わった剣だなぁ。ショートソードか?室内でも十分使えそうだな。」

「そうだな。ん。思ったより重いわね、この剣。」


 謎の青年の武器を持った女騎士が愚痴る。

 騎士として仕事しているのだから、武器である剣に興味を持つのは当然だが。


「それに、よく見たら変わったネックレスしてるな。なんだこれ?四角系の箱のような…金属か?何か変わった宗教でもしてるのか?」

「となると、隣国の傭兵辺りかな。すぐ隣は”ファウダラ連邦”だし、あそこなら他国の傭兵が流れて来てもおかしくないからね。」 

 

 フィリップの調査隊は、謎の青年を推察しながら簡易拠点へと戻るだろう。

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