番外編その1 とある宗教 ???視点
「みなさん、朝の時間になりました。今日も私達の父にご挨拶をしましょう。」
私がそう言うと家族達が神様である父に挨拶をする。「父さん今日もかっこいいです。」と目を輝かせる女性もいれば「パパごめんなさい!ごめんなさい許してパパ!」と泣きながらひたすら謝る女性もいる。その数は私を合わせたら百はいる。
みんなの気持ちも分かる。私も私達の神様である父に今なお心酔しながら懺悔しているのだから。
私達と父は血縁関係者ではない。父は元々身寄りのなかった私達を人間界の様々な場所から拾って連れて帰り独り立ちできる様に強く育ててくれた。父が言うには私達は英雄になれる素質が有ったらしい。
私達は平民未満だった、もちろん一般常識すら分からず剣も持ち上げられないほど弱かった。だけどそんな私達を娘の様に父は厳しく優しく育ててくれた。
そんな父の教育を受けて立派に育った私達は父から貰った愛を忘れずに父の目標である人間界をどんな者でも幸せに暮らせるより良い世界にしようと皆で誓い合った。私達は各地へと散らばり人間界の平和を保っていた。
だがそんな平和もここで終わる。ある日突然一人の男が現れた。ソイツは後に私達の世界を潰す存在だった。私達はソイツを殺さなければならなかったのに不甲斐ない事に全員揃いも揃って魅了にやられた。その後はそいつの都合のいい様に動かされた。それに私達の初めてもソイツに捧げてしまった。
そして平和だった人間界の殆どを荒らし回ったソイツは父を邪神の使者と決めつけて殺そうとした。それを私達はそれに賛同して協力してしまって父に奇襲を仕掛けると言う恩を仇で返す真似をした。
そして私達の攻撃を受けた上でカウンターをした父の一回だけの攻撃で私達は皆死にかけていて、父のその一撃だけでソイツにかけられていた魅了が解けた。
正気に戻った私は父に謝ろうと最後の力を振り絞って父の方を見る、しかし父は私達の事なんて興味が無いと言う様な瞳を向けていた。そして私達に何も言う事なく私達の前から去っていった。
父の中で私達はもうどうでもいい存在になったと言う事実に私は発狂して死に絶えるまで狂った様に笑った。私以外にもその瞳を見てしまったのだろう狂った私の周りからも永遠に父を呼ぶ声や奇声や狂った笑いが聞こえて来た。そして突然下から湧き出て来た父の毒に全てを溶かされながら私達は死んだ。
そして私達は全てを忘れた状態で地球へと転生した。前世の記憶を全てを思い出したのはあの放送を見た時だった。私達の世界の創造神の後ろに父は居た。それから私達の行動は早かった。
まずは私達は全員で集まって父を崇拝する宗教を作った。
そのためにこの先邪魔になるであろう今世で手に入れたものを全部捨てた。
金も権力も今世の家族も友好関係も。私達の中には結婚を約束していた人や結婚している人もいたがまだ行為をやっていなかったのですぐさま離婚したり別れたりして私達は全員無事に集まった。
そして私達だけで父を崇拝する宗教を作り出した。廃墟になった教会に。
その後私達は食費などの生活費を稼ぐためにダンジョンに入ったり、今やっているように父に崇拝や懺悔を何時間も言っている。都合のいい事に私達は前世を思い出した事で前世の力を再び使えるようになったのでダンジョンで稼ぐのは楽だった。
「みなさん、挨拶の時間が終わりました。今日も活動を頑張りましょう。いつかここに私達の父を迎え入れて幸せな毎日を送るために。」
その為には私達の父を縛る者達を始末しなければいけない。父は私達を魅了から解放して助けてくれた、だから次は私達があの創造神とか言う女から父を解放して助ける番だ。ついでに私達の敵になりそうな地球の勇者も殺そう。勇者は二人もいらないし。
「待っててください、私達の父。貴方の娘である私達がすぐに助け出します。」
その呟きは誰に聞かれるわけでもなくまだ懺悔している家族達の声に掻き消された。
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