003
電子ドラッグの売人と思われるチルドを捕らえ、リズムたちは軍警察署へと戻っていた。
チルドの尋問は、捕らえたリズムと彼女の所属する第三班の班長ブラッド・オーガニックで行われることになる。
それが気に入らないのか、パロマはへの字口で眉間に皺を寄せて苛立っていた。
「なんで怒ってんだよ?」
そんな彼女に向って、共にチルドを追っていたムドが声をかけた。
ムドは、逃がしてしまいそうになった目標をリズムが捕らえてくれたのだからよかったじゃないかと、何故パロマが不機嫌なのかわからないようだ。
他人に手柄を取られてヘラヘラしている彼を見て、パロマは思う。
そもそもこいつさえしっかりしていれば、チルドに逃げられることもリズムに手柄を横取りされることもなかった。
馬鹿のうえに役に立たん奴だと、彼女は内心で毒づく。
そして、パロマはムドに顔を向けることなく言う。
「それよりも、いつまで私の後をついて来るつもりだ? 仕事は終わったんだからさっさと消えてくれ」
「お~い、今のはいくらオレでも傷ついたぞ……。ブラッド班長が言ってだろう? なるべく班行動を心掛けろって」
「それは仕事での話だろう? それぐらいもわからんのか、お前は?」
パロマはムドにそう言い放つと、彼をおいて足早にその場を去って行った。
そんな同僚の背中を見ながら、ムドは「はぁ」とため息をつく。
「喋りとコミュニケーションには自信があったんだけどなぁ……。うまくいかねぇもんだねぇ……」
ムドと別れ、パロマは軍警察署内にある医務室へ向かっていた。
(リズムの奴の力……。あの
全部で三つに班があり、その班長は三人とも普通の成人した人間だが、すべての班員たちはまだ十代前半くらいの少年少女だ。
その理由は、現在のようにすべての国が連合国として機能する前に世界を統べていたバイオニクス共和国の負の遺産――。
人体実験で生まれた特殊能力者たちの多くが、まだ幼い子供たちだったからだった。
ムド·アトモスフィアは共和国の研究施設出身で、軍警察の局長から適性を見込んで
しかし、同じ班にいるリズムやもう一人の少女――シヴィル·エレクトロハーモニー、そして、パロマはムドたちとは違い、特別な事情がある。
「もっとマシーナリーウイルスの濃度を上げる必要があるな……」
パロマはそう呟くと、辿り着いた医務室の扉にノックをした。
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