AI×ホラー(ミステリー含む)
みなと劉
かかえちゃんと学校
「あ~、まぁ大雑把に言えばこんなところじゃろうか」
そう言ってお爺さんは、僕の書いたメモを読み返して確認する。……なるほどね。
僕は納得し大きくうなずいた。
「ふむふむ、それで?」
先を促すように言うと、老人は再び話を始めた。
「まずこの手の話には共通点がある。それは"共通項を意識的に作る"という事じゃ。そしてその共通項を作る事で、読み手を恐怖へと誘う」
そう言われてもイマイチピンと来ないんだけど
そう思っているとお爺さんは、僕の表情を見て察したのか説明を続けた。
「つまりじゃな……
例えばこの『トイレの花子さん』にしても、ある特定の場所から始まっていて、そこから様々な場所へと繋がるといったような話の展開にして行くんじゃ。
例えばAの女子トイレで1回ノックをして『花子さーん!』と言う するとBの個室からもノックが返ってくる Aでは花子さんが居て Bでも花子さんが居る 更にCでもDでも花子さんが出てくる……そんな具合じゃ」
「えっと、何ですかそれ……」
僕にはよく分からない感覚である。
「仕方ないのう、では儂が取っておきの『怪談話』をしてやろうかの」
と、いい
老人の『怪談話』が始まった。
「これは、儂が昔に聞いた話なのじゃがな場所はとある『学校』の階段の数なのじゃが『夕方になると』『登り』と『降り』で段数が違うというのじゃ」
なにそれ怖い
老人は話を続ける
「ある時『学校帰り』の生徒達が数人『学校の七不思議』の噂話をしていたらしい。
その時に出てきた話が、『夕方になる度に増える階段』『放課後の階段』『誰もいない階段』『屋上への階段』『音楽室への階段』『開かずの間』……等など、沢山出て来たらしい。しかしどれもハッキリとした形ではなく曖昧だった為、結局ただの噂として片付けられてしまった。
ただ『学校の階段が増える』という話だけは皆の頭の中に残っていたらしく、いつの間にか消えていったようじゃった。……と、まぁこんな話があったそうなのじゃが、どう思う?この話を」……いや、どう思うって……なんとも不思議な話である。まるで本当に誰かいるかのような感じさえしてくるくらいだ。
でも実際そんな事があるはずもなく、多分ただの偶然なんだと思うけどね……。でもそれが噂話にまでなるんだもんな。やっぱり世の中広いようで狭いよね。
なんて思いながら、お爺さんの話を聞いた。
すると老人は突然ニヤリと笑い言った。
「ちなみに今お前さんがいる場所はどこなのか分かるかい?」
はっ!?しまった!ついお爺さんの語りに引き込まれてしまって、全然気が付かなかった!!
ここはどこなんだろ?
辺りを見渡すがやはり真っ暗で、周りがよく見えない状態である。
しかし少し目を凝らすと暗闇に慣れてきたのか、ぼんやりとはだが見えてくるようになってきたようだ。
そして僕はその景色を見て絶句する事になる。
目の前に広がる光景はまさしく"学校"だったのだ。
それも自分が通っている高校、そのものだったのである。
そして同時に僕は悟る これは夢だと。
だっておかしいもの 僕達はさっきまで、お爺さんのお店で買い物を済ませ、帰路についていたはずだから。
なのに何故僕は学校に居るのだろう?
お爺さんに話を聞こうとしたら
「え!?あれ?お爺さん!!?」
老人の姿はどこにもなかった。
ただ一つ言える事は、ここに居たはずのあの老人は偽物だということである。
でも、もし本物だったとしてもそれはそれで困ってしまう。
だって今のこの状況で僕だけが本物という証明は出来ないのだから。
「ど、どうしよう……」
そんな事考えていても仕方ないので『学校』に入ることにした。
別に好奇心とかじゃないよ 何か面白いことがあるかもしれないと思っただけだからね!うん! とりあえず一階から順に見回ってみる事にした。
1階には特にこれといって変わったものは無かった。
2階に上がると今度は2年3組の教室へと入ったのだが 中に入ってみるとそこは"無人"で誰も居なかった。
3階の職員室にも人っ子一人おらず また3年のクラスも見てみたが、同じであった。
つまり、誰もいない。
4階は1年生、5階には2・3年生のクラスが並んでいる。
そして6階には音楽室、7階には生徒会室が在る。各階の廊下を歩き回ったが何も無いまま時間だけが経過していった。
するとその時、僕の耳にある音が入る キーンコーンカーン とそれは、校内放送の開始を告げるチャイムの音だった。
(あ~なんか懐かしいな)
そんな事を思いながら放送のアナウンスを聞く。
《下校時刻になりました》…………
えっと……下校って何時から何時まで?……
なんて思った時 僕の耳に声が入ってきた。
"ねぇ……早く帰ろうよ""もう、やだよこんな所……"聞き覚えのある女の子の声。しかしその姿は無い。
ただ声だけが聞こえて来る。
その声で思い出すのは、小学校の頃友達と一緒に肝試しした時のこと。
確か……トイレの花子さんが居るという場所に行って、皆バラバラに散らばって、しばらくすると女の子が泣き出したんだったかな?でも結局何もなくて それからしばらくして解散したような記憶があるんだけど、あれ以来行ったことは無かった。
まぁ、そもそもの話だけど 花子さんなんて居ないと思うけど。
そう思いつつも一応行ってみる事にした。
すると、階段の途中の壁に一枚の絵がかけられていた。
そこには女の子が描かれていた。
「この絵……」
何処か見覚えがあるような気がするが思い出せない。
気のせいか?そう思って次の階段へ向かおうとしたが
「え!?」思わず僕はそう叫んでしまった。
そこにあったのは 先程まで無かったはずの大きな階段 その階段はまるで『天国』へと繋がっているかのような神秘さを放っていた。
階段を見つめたまま固まっていると、背後から人の気配を感じた。恐る恐る振り向いてみるとそこに居たのは
「か、かかえちゃん!?」
僕のクラスの担任の先生で保健室の先生でもある。
神無月 奏恵だった。
「下校時刻だよ?早く帰りなさい」
変な笑顔を浮かべた『かかえちゃん』がいた。
僕は恐怖を覚えるが冷静に
「はい。『かかえちゃん』、わかりました『下校』しますね」
と、いい階段を降りる。
…………。
僕は階段の前で足を止める。
「どうかしたの?まだ『帰って』いないようだけれど?」
不思議そうな顔で僕を見てくる『かかえちゃん』
僕は振り返り『かかえちゃん』に向かってこう言った。
「ごめんね、僕、やっぱり『下校』は出来ないのかもしれない」
そう言うとまた不気味な笑顔を浮かべて
「なんで?」
と、言ってきた。
「だって僕、"帰れないもの"」……。
返事が無い。ただの屍のようだ……いやいや、死んではいない。
よく見たら『かかえちゃん』は震えていた。
そして、その震えた唇で彼女はこう言い放った。
「そっか……君は『向こう側』の人なんだね」…………………………。
そう、『かかえちゃん』もう『この世に居ない』のだ。
『彼女』はゆっくりと僕に近づくと優しく頬を撫でてきた。
「大丈夫。私はずっと君を見ていてあげるから……」
……すると
「う、わぁ!!」
『僕』は叫び声を上げ、その場に倒れる。
目を開けるとそこはお爺さんのお店だった。
「大丈夫か?」
お爺さんが心配そうに見てくる。
「えぇ、なんとか。それよりもお爺さん、ちょっとお願いがあるんですが、今からもう一度外に出して貰うこと出来ますか?実はですね、今から学校に行きたいと思いまして。」
お爺さんは何やら驚いた顔をしているようだったが すぐに優しい表情に戻り
「あぁ良いとも、じゃあお前の望むままに行ってくるといい」と言ってくれた。
ありがとうございますとお礼を言い、再び店の外に出る。
さっきまで居なかった筈の老人が立っていた。「ほれ」と言い手を差し出してくるのでありがたく握らせて貰ったのだが……うん、やはり暖かい……
お爺さんにお辞儀をしてその場を離れる。
そしてそのまま駆け出すようにして学校へと向かう。何故かは分からないけど、今はとにかく急いで向かわなければならない気がするからだ。
お爺さんは僕の背中に向けてこう呟いていた
「気をつけて行けよ……」
そして僕は気付く事無く、走り去っていく。
僕はかかえちゃんの供養をするって決めたから……。
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