第3話 失ったことに気が付いた

あの日から

私たちの仲良しグループの中に

凌太の姿はなくなった


あからさまに

避けられてしまった


事情を知らないほかの仲間が誘っても

何も言わず

背中を向けた


「凌太・・・どうしたんだろうな」


みんな心配していたけど

私の口からは

言えなかった


普段なら

ちゃらっと言って

仲間と一緒に凌太をいじるのだろうけど

今回はできなかった


だって

今までにないくらいに

遠くに感じてしまうほど

大人な表情で無視するから・・・

もう一緒にふざけてくれない事は

何も言わなくても

私にだってわかったから・・・


触れてしまって

彼に

彼の逆鱗に触れてしまって

はじめて起こってしまう最悪を想像してしまうと

怖くてできなくて


「新しい女が束縛きついんじゃない?」


そう言って

皆を納得させようとした


「えっ?ありえんでしょ!

今までだって束縛きっつい子いたけど

凌太は友情とってたし・・・」


そう

そうなんだけど

それにしようよ


理由


そうしなきゃ

私・・・困るから・・・

凌太があんな風に怒るなんて初めてで

私が一番戸惑いっていて


これ以上

凌太にかかわることが

怖いんだから・・・


最後の言葉を吐かれそうで・・・


「もう追わないでやって

凌太があれだけの態度とるなんてはじめてじゃん

きっと

本気な子なんでしょ」


私らしくない

私の言葉に

皆はそれ以上聞くこともなく

なんとなくだけど

空気読んでくれたのかな?


その日から凌太は本格的に私達から離れていった



それから数か月の高校生活は過ぎ去り


卒業式では

凌太は皆から写真をせがまれ


”やっぱ人気あるんだ・・・女子に”


と、遠くから見ていた


予定していた卒業旅行には

もちろん凌太の姿はなかった


そして

あっという間に

皆、それぞれの進路へと進んでいった


あれから

大学を出て

社会人になり

忙しい日々を送るけど


あの頃から

定期的に

あの日の夢を見る


しかも

目が覚めて

しっかりと浮かぶのは

最後の凌太の悲しそうな表情だった


久しぶりに実家へ帰ると


思春期の頃は

喧嘩ばかりだった母は

久々に会えるからか?妙に優しく

豪勢な夕飯を用意してくれていた

父はなんら変わらず

終始ニコニコして

一緒にビールを注ぎつ注がれつをして

楽しく過ごしていた


母が片付けを始めたので

私もキッチンへ行って母の横で手伝いを始める


「あっ、そうだ

中田さんの家の凌太くん

菜々美、仲良かったわよね」


母から

凌太の名前が出るとびくっとする


やはり

心の隅っこに

彼がいつもいたから・・・


それに

凌太の事を母の口から聞く日が来るなんて信じられなかった


ある出来事があって

凌太と母の間には大きな溝ができ

関わることが無くなっていた


ま、それもこれも

原因は私なんだけど

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