幼馴染が帰ってきた ──村人編──

ダルメシアン

歓迎

 今から100年程前に突如として現れた『魔物』と呼ばれる化け物たちによって人類は滅亡の一途を辿っていた。

 戦争に用いていたありとあらゆる兵器類が効かない……そんなことは無かったが、数が多すぎた。人類がどれだけ殺そうとも数が減ったように感じられないのだ。毎日毎日飽きる程殺そうとも、だ。際限が無い、としか言えない状況だった。今ではかつての人口の1/10程になり生存可能領域すら数える程で壊滅状態だ。

 そもそも『魔物』とは何か? 魔を孕む瘴気から出る物、略して『魔物』と呼ばれる誰かの空想を、妄想を、具現化したような見るも悍ましい物から幻想的で空恐ろしい物、果てには神秘的で絶対的な畏怖を抱く物。それらが際限無く顕れ始めたのだ。何故顕れたのかは謎のままだ。わかっているのは人類のみを蝕み死に至らす物が、『魔物』が発生した場所から誰の目にも映らず緩やかに拡がっていることだけだ。

 人類はそれを『瘴気』と名付け、各国が独自に対策を練った。練ったが、何も分からず滅びる国が出始めた。それからは戦争をしていた国同士が、蔑まれていた人種が共に手を取り合い協力し対策を練った。練ったが、解決策が何一つ見つからず、あれから100年が経ったそんなとある日──奇跡が起きた。『瘴気』を浄化──滅──することが出来る人が誕生したのだ。それも複数人。各国の首脳陣は、彼らを親または恋人等の大切な人たちから引き離す代わりに叶えられる限りのありとあらゆる願いを聞くこと条件にした。

 彼らはそれを聞き──喜び笑みを浮かべる者、一瞬顔を歪めすぐに真剣な顔を作り頷く者、手を組み祈る者、じっと虚空を見つめる者──様々な反応をし、最終的には全員受け入れた。否、受け入れざるを得なかった。全員が全員、十に満たないような子供だったが、終末が、死が、そこまで迫ってきているのを本能から感じ取っていたから。

 準備を重ね、万が一のことが無いように訓練を重ね、十全にした。そんな彼らを人々は『勇者』と呼び、持て囃す。そして、彼らが誕生してから十数年の歳月を掛けて彼らは『瘴気』の浄化を成し遂げたのだ。

 そして、彼らは各々の大切な人の元へと──。











 とまぁ、前置きはここまでにしておきましょうかね。

 これは村人である俺が、幼馴染の将来を約束した所謂婚約者の少女で人類の希望の『勇者』を、同じく『勇者』にNTRれた物語なのだから。


 今日は彼女が帰って来る日だ。カラッと晴れたとてもいい天気で素晴らしいが少し暑い。昨日は昂揚感から眠れず、一睡も出来なかった徹夜明けに突き刺さる太陽が瞼を焼かんばかりに燦燦と輝いていて、痛い。俺は目を細め、目を慣らし、机の置いてある手紙を手に取り内容を確かめ、ニヤける顔を必死に戻す。

 ようやくだ……遂にこの日が来た……! 今日を以って俺はあいつと──!

 ルンルン気分で村の入口まで歩く……つもりだったけど、テンション上がり過ぎてスキップしながら鼻歌を歌ってたわ。

 村の連中には「うわぁ……。理由はわかるけど、うわぁ……」って目で見られたけどな! 泣けるぜ!

 そんなこんなで生暖かい視線が付き纏う中やってきました! 村の入口! そこかしこに成り行きを見守るために全村人が集結しているな! 楽しみだぜ!

 ヒャッハー!

 ィヤッホー!

 ウェーイ!

 バンザーイ! 

 はっやくこっないかな〜♪

 俺が後から冷静に考えて客観的に見て、キメェ踊りと歌を歌ってると、遠くの方から人らしきものが視界に映った。

 「お? ようやくか? ようやく来たんか!? 待ち侘びたぞ、ワレェ!

 ニヤニヤしながら心の中で叫ぶ。

 「「いや、全部声に出てるから」」

 俺にそうツッコムのは親友の細マッチョのイケメン野郎だ。なんとこいつは俺が子供の頃好きだった女の子と恋人なのだ! リア充が爆発しろっ!

 だが、今日の俺は気分が良い。最高だ。許してやろう。

「ふっ……」

「『ふっ……』じゃねぇんだわ。てかキメェ……」

「んだとごらぁ!」

「はいはい、喧嘩しないの! 今日は記念すべき日なんだから」

 そう言って仲裁に入ったのはサラッサラの栗色の髪を靡かせた穏やかな雰囲気で圧倒的なボリュームのお胸様を持つ美少女だ。

 くっそー! 一度でいいから揉みたかったー! うぁああああ! 彼女の顔を見ながら声に出さず、表情を変えず嘆く。

 男性諸君! 女性は胸への視線には敏感だから気を付けような! 童貞の俺との約束だ! って誰が童貞やねん! どどど童貞ちゃうわ! いや、童貞なんだけども!

 ……はっ! 思考が逸れたわ。今はそんなことどうでもいいんだわ。後少しでやっとあいつに会えるんだからな!

「そうだな。今日は祝福すべき日だからな」

「ああ。俺史上最高の日だしな!」

 俺たちがそんなこんなで楽しく騒いでいると徐々に近付いてきた4人組からき声が聞こえてきた。

「ここがお前の故郷か? なんにもねぇなぁ(笑)」

「ここが私の故郷だよ。うん、あんたが言う通りだね(笑)」

「はぁ……」

「……帰って寝たい」

 お? 俺たちの生まれ故郷を馬鹿にしたな? 確かになんにもねぇけどよぉ! ……うん、やべぇ……なんにも言えねぇ。

 ちらっと隣を見ると「「うんうん。確かになんにも無いしなんにも言えねぇ」」って顔でこいつら頷いてやがる……!

 自分のことを棚に置いて慄いたわ。

 それにしても……俺の幼馴染様は相変わらず圧倒的美少女だよなぁ。太陽を浴びてキラッキラに光る黄金色の髪、長い睫毛に碧い瞳。大きすぎず小さすぎない胸。全てのパーツがあるべきところにある神が作ったと言われても納得出来そうなくらい整った造形美。……と世間一般的に言われてるらしい。まぁ、わからんくもない。

 これでなぁ……『顔以外』が良かったらなぁ……はぁぁぁぁ……。つれぇわ。

 まぁ、幼馴染様は置いておいて。もう一人の『女勇者』へと目を向けてみよう。

 いつ見ても綺麗な銀色だ。世界で一番綺麗と言っても過言じゃない。というか世界で一番綺麗。異論は認めん! 垂れ目がちな紅い目。もうね、まじで超綺麗。凛としたら垂れ目がキリッとなってかっけぇしガチで綺麗。惚れるわ。てか惚れてるわ。控えめに言って好き。お胸様は掌サイズで触り心地めっちゃ良さそう。触りたい。好き。雰囲気は優しいし誰に対しても丁寧だしえっちなことに耐性が無くて初心そうなところも好き。まじで容姿も性格も女神様。付き合いたいわ。好き。

 『男勇者』どもはどうでもいい。興味ねぇ。ああ、一応、イキってるのが赤髪で、眠たげにしてるのが黒髪な。

 色々と考えてると目の前に幼馴染様が居た。

 ヒェッ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル

「ただいま! 私が帰ってきたわよ!」

「あ、ああ、おかえり」

 なんとかそう返す。

「あんたに報告があるのよ」

「報告?」

「聞きたい? 聞きたいでしょ? 聞きたいって言え」

「ア、ハイ。聞きたいなぁ。聞かせてくれよ」

 はぁ……これだもんなぁ……この女王様気質がなぁ……。

 まぁ、今日は気分が良いから許してやんよ。

「私……」

「おう」

「私ね……」

 もじもじしてねぇで早く言えよ。

「私ね……その……」

「…………」

 うぜぇ。こっちはお前が言いたいことはわかってんだわ。だからな、早く言ってくれねぇかなぁ。時間が勿体無い!

「私、彼と結婚することにしたの」

「……は?」

 ワンモアプリーズ。

「はぁ〜、だからぁ! 彼、アカシャと結婚することにしたの! だからあんたとの婚約は破棄ってわけ! わかったぁ?」

「…………(プルプル)」

「ギャハハハ! そういうわけだから残念だったなぁ、婚約者くん! この女はもう俺のもんだ」

 そう言って汚さななじみを抱き寄せベロチューをする二人。

 

 そして鳴り響く万雷の拍手。飛び交う『俺』への祝福の声。


『おめでとう! おめでとう! Congratulations! やったな! ガハハ、飯食ってくる!』


「クックックッ……アーハッハッハー! ヤッター! ありがとう! ありがとう、みんな! Thank you世界! 愛してるぜ! 女神様!」

 満面の笑みを浮かべてみんなに、世界にお礼を言いながら女神様への愛を叫ぶ俺。客観的に見てやばい奴である。

 「「は?」」

 理由も分からず抱き合ったまま目を白黒していた。

「あっはっは! うん、面白いなぁ。着いてきて良かった。だから……この役者の二人が暴れないように黙らせておいてあげるよ」

 笑い過ぎたのか黒髪が目に涙を浮かべてた。

「ありがとう! 黒の『勇者』様!」

 展開に着いていけてないのか銀の『勇者』……ユウさんが、おろおろしてる。

「えぇ……?」

 困惑顔と声もめっちゃ可愛い。そうだ、告白しよう。

「ユウさん! 好きです! 恋人になって下さい!」

 俺の一言で場が静まる。一切の音が消えた。静寂。

「はい? え? えぇええええ!?」

 ユウさん は こ ん わ く し て る !

 ここだ! ここで畳み掛ける!

「最初は一目惚れでした! ユウさんの銀色の髪が綺麗で一瞬で見惚れた。世界で一番綺麗の色を見た。垂れ目がちな紅い目。もうね、まじで超綺麗。凛としたら垂れ目がキリッとなってかっけぇしガチで綺麗。惚れるわ。てか惚れてるわ。控えめに言って好き。お胸様は掌サイズで触り心地めっちゃ良さそう。触りたい。好き。雰囲気は優しいし誰に対しても丁寧なところが好きだ。あの日、初めて会ったこんな俺にも優しくしてくれてさ、もうね、好きにならない方がおかしいんだわ。えっちなことに耐性が無さそうで初心そうなところも好き。まじで容姿も性格も女神様。付き合いたいわ。好き。愛してる」

「えっ?あ、う……そ、その……///」

 お、おぉ……顔真っ赤なユウさん可愛い過ぎだろ! 三千世界に置いても最強可愛いわ。

「だめ、かな?」

「あ、の……一ついいですか?」

「どうぞ」

 なんだろうなー。

 彼女は何度か深呼吸して、赤かった顔色を戻して、凛とした雰囲気を纏いキリッと知る目で俺を見つめる。

「では……あなたはシーウさんが好きだったのでは?」

 あー、なるほど。そこかー。そういや説明して無かったわ。ここまで0.2秒。誤解無き様にほぼ反射と言える速度で否定。

「いえ?」

「え?」

「いえ、ですから、好きでもなんでもないんですわ。むしろ嫌い。視界に入っただけで苛つくし声なんか一生聞きたくも無いレベルなんで」

「えぇ、と……そ、そう、なんですね……。えぇ……?」

「そうなんです。本当に辛かった……」

 あ、思い出したら泣けてきた……。

「だ、大丈夫ですか!?」

「あはは……ちょっと思い出し泣きを……」

「あの……何があったか聞いても?」

「いいですよ。聞くだけで『うわぁ……』ってなること必至ですから。覚悟しておいてください」

「……っ!?」

「では、そうですね……まずは汚さななじみとの出会いから。俺がまだ物心が付いた頃なんですが、奴が隣に越して来やがりましてね。親に『同い年だから仲良くしてね』って言われて仲良くしようとしたんですが、こいつがとんでもない猫被りでして。親の前や人の前では良い子で成績優秀……俗に言う天才だったんですよ。何をやらしても誰よりも上手に、一度見れば完璧に再現──いえ、それ以上のことをしちゃうので。まぁ、裏では気に入らない奴を虐めたり、自分が気に入った奴には執着するようなお手本の様なクズ野郎なわけで。で、そんなクズで地雷女になぜ好かれてしまったのかと言うと、単純に危ない所を助けたからですね。ほら、吊り橋効果ってやつですよ。そこから、付き纏い……いえ、ストーカーが始まったわけです。それだけならまだしも束縛が酷くてね……しかも女子と少し話しただけで折檻とかいう暴力行為が、ね……ははは……。そんなこんなで徐々にこの村のみんなには本性が知れ渡り、刺激しないように適度に距離を置き、爆発物を扱うように慎重に細心の注意を払って接する精神を摩耗する地獄の日々が始まったわけです。耐え忍んで耐え忍んで、あいつが『瘴気』を浄化することが出来ることがわかってからは『早く去れ』ってみんな思ってましたし。だから、あいつは俺含めみんなに嫌われてるんですよ」

 ふぅ……一気に語ったら疲れたな……。

「そうでしたか……。そんなことが……正直信じられない思いでいっぱいです。私たちからしたらそんな素振りは見え無かったので……」

「まぁ、でしょうね。『良い子』にしないと大変なことになるってわかったんでしょうね。なまじ頭いいからな、あいつ……チッ、矯正されてくれれば良かったのに」

「えぇと……その、ノーコメントで」

「ですよねー」

「まぁ、そんな感じなわけで。だから、ここ最近の噂であいつが赤髪の『勇者』にぞっこんだって、所構わずセッ……をしてるっていうのも聞いてさ。これはまさか……まさかの!? 向こうからの婚約破棄来るか!? いや、来るだろうよ! 勝ったな! って思ってたら、『今度帰るから』っていう手紙が届いて、あいつからの手紙で初めてテンションぶち上がりましたね! あっはっは!」

「そ、そうなんですね……」

「はい!」

「「…………」」

 き、気まずい……! なんだこの空気……。誰かどうにかしてくれぇ!

「ちょっ、ちょっとぉ! 私のこと嫌いってどういうことよ! あんたまたぶん殴られたいの!?」

 馬鹿な!? 黒髪の『勇者』に簀巻きにされてたはずなのにさすゆう!(流石勇者の意) 何にせよナイスぅ! 初めてお前に感謝するわ!

 てかそんなに凄まれても怖くないんですけどね。俺にはどんな『魔物』をワンパンで消滅させる最強の親友とその恋人の怪力乱神が居るんだからなぁ! 俺? ただの雑魚ですが……何か?

「やれるもんならやってみろよぉ!」

「シーウさん、駄目ですよ?」

「っユウ! 邪魔しないで!」

 立ちはだかるは銀の髪を靡かせた、静寂の支配者、の二つ名を持つ最強の『勇者』のユウさん。

「シーウさん?」

 ニッコリ。笑顔だけど凍てつくような雰囲気がこちら側にも漂ってくる。

 こっ、怖ぇー! え、こっわ! 怒らせちゃいけないタイプのお人だったか。まぁ、そんなところも好きだわ!」

「んんっ! あ、あの、その……は、恥ずかしいので、あまりす、好き……とか言わないでください……!」

 は? 顔赤らめて恥ずかしそうにしてるの可愛いかよ!

「え、好き」

「〜〜///」

「イチャイチャするなぁ!」

「し、してません!」

「私は『勇者』なのよ!」

「……あ、そうだ。伝え忘れてた。君たち、アカシャとシーウの二人は少しはしゃぎすぎたから、『勇者』の称号の剥奪して離宮送りだからよろしく」

「は? なんで? 意味わかんない!」

「だから、やり過ぎたんだって。君は、各国のお偉いさんの怒りを買いまくったんだから。まぁ、自業自得だね」

「〜〜っ! このっ!」

「馬鹿だね、君は。僕の能力を忘れたのかい? 救えないね。『沈め』」

「がっ!?」

 おぉ~、すげぇ! あれが黒の『勇者』の能力、重力操作か〜! かっけぇ! さすゆう!(流石勇者の意)

 てか、大丈夫かあれ。流石に目の前で人が死ぬとこは見たくないんだけど。お? なんか急にぐったりしたな。これは気絶したか。チーン。ご愁傷様です。これからは全人類、主に俺に謝罪して反省しながら生きろよ。……まぁ、死んでも全然構わんが。

 ふむ、さて……どうしよう。もう一回告っておくか。

「ユウさん」

「なんでしょうか?」

「好きです。恋人になって下さい!」

「ごめんなさい!」

「まじですか」

「はい……。まだあなたのこと良く知りませんし……。ですから、お友達から、なら……いいですよ?」

「ぐふっ……!」 

 はぁ〜? 『いいですよ』の言い方可愛いぃ!!!

 尊死するとこだったわ。

「お友達……! ユウさんとお友達? はっ、おいおい、最高かよ! 雑魚村人である俺が『勇者』で救世主のユウさんのお友達! 一緒に居られるだけで一生分の運使い果たしたな! ぐっばい、来世!」

 両手を天に突き出し吠える。

 俺の声を皮切りに成り行きを見守っていた全村人(某『勇者』様(笑)の両親は除く)が一斉に騒ぎ出す。


 再び鳴り響く万雷の拍手。飛び交う祝福の声。


『おめでとう! おめでとう! Congratulations! やったな! お友達からとか王道だな! 式場の用意は任せろ! 神父は拉致ってくるからよ!』


「ありがとう! ありがとう、みんな! 俺、最っ高に幸せです! 頑張ってユウさんの心射止めて見せるぜ! もし駄目だったら慰めてくれよな!」


『任せろ!!!』










「彼らは面白いね」

 世間一般的には黒の『勇者』と呼ばれており、名前と顔、髪色などが極一部の方にしか知らない御方が心底笑っておりました。

「そうですね。それにしても珍しいですね。あなたがそんなに楽しそうに笑っているだなんて」

「そりゃ、肩の荷が下りたし。なんと言っても、彼……レオくんの反応が最高でね」

「ふふっ、レオさんは愉快で紳士的な方でしたね。それに彼はあの時と同じように胸に目線を向けないようにしてくれたのと目を真っ直ぐ見てお話ししてくれたのがとても嬉しくて」

「さて、僕はあの二人を連れて先に戻るよ。じゃあね」

「はい、また後で」

 私もそろそろ戻りましょうか。レオさんに声を掛けて。

 ふふっ、レオさん。また会えるとは思いもしませんでした。

 要塞都市で迷子になってた人。それで声を掛けたのですが、本人は「迷子じゃないですよ? ちょっと道間違えただけですけど? 目的地には着けるから大丈夫ですし? あ、でも送っていただけるととてもとても嬉しいのでお願いします!」って頭を下げて早口で捲し立てた後、顔を上げて、私の顔を見て、真っ赤な顔でぼーっとしたと思ったら「ごめんなさい。銀色の髪が綺麗で見惚れました。世界で一番綺麗の色を見ました。あ、もちろん顔も好きで見惚れてました。すみません。あ、俺、レオって言います!」と焦った様にしていたのがどこかおかしてついつい笑ってしまいました。彼が「今の笑顔くっそ可愛いんですけど!」って悶えていたのが可愛らしく感じてしまいました。

 それから、レオさんと楽しくお話をしながら城門まで歩きました。無意識なのか、人混みから私を守るように歩いてくれたのが嬉しかったですね。最初で最後の出会いになると思っていたので別れた後は、彼のことを考えないようにしていましたが……まさか、シーウさんの幼馴染で婚約者で村の人からあんなにも慕われているだなんて想像もしなかったです。

 うぅ〜……あそこで受け入れるべきだったでしょうか? ですが、レオさんのこと良く知らないですし……ああ、でもあの時と同じで優しくて情熱的な方でしたね。咄嗟に『お友達から』だなんて言ってしまいましたが……これからお互いに知っていく、その過程で私はきっとレオさんのことを──。

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