20話 流れるような勝利
唐突に一週間繰り上げで、因縁の対決が始まった。
とはいえシリアスに事を構えるつもりはない。
相手は現状手に入る情報だけで作戦を組み立てているに違いないが、こちらはゲームオーバーになったプレイヤーから直接攻略情報を聞き出すという反則同然の下準備をしているのだ。
冷静に分析してまず負けることはあり得ない。
「六代目。最初はどこに攻撃されました?」
『左足のアキレス腱だな』
聞いた瞬間、地面を蹴って飛び上がる。
すると、おそらく短時間の透明化魔法を使っていたであろうゴブリンが姿を現し、先ほどまで俺がいた空間をナイフで斬った。
「あー、八代目」
『飛んで避けたら後頭部に矢がズドーン』
腰の鞘から聖剣を引き抜き、剣背で後頭部をガードする。
ほどなくして彼方より飛来した矢が剣にぶつかり、致命傷を負うことはなかった。
空中で振り返ると、遠くの樹木の太い枝の上にフードを被った人影が目に映る。
慎重すぎるが故に最後は確実に自分の手で命を刈り取る──アレが本体だ。
……
…………
「ほんとに勝てちゃったよ……」
数分後。
特に見せ場があるわけでもなくスーパー聖剣パワーでポコチンを木端微塵に粉砕した結果、先輩たちの敵討ちは至極あっさりと終わりを迎えたのであった。
ポコチンは確かに狂暴かつ狡猾で四天王と呼ばれるにふさわしい用意周到さではあったのだが、どうやら腕っぷしが強いわけではなかったらしく、聖剣の光で本体にマークを付けた後はほとんど消化試合と化していた。
まぁ、それもこれも先輩たちがアドバイスをくれたおかげだ。
俺自身に戦闘センスが備わっているわけではないので、彼ら彼女らがいなければきっと敗北していただろう──そう思えるほどにポコチンは危険な相手だった。
「……お前の敗因は勇者を殺しすぎたことだな」
風と共に霧散していく彼の亡骸から、戦利品の指輪を拾い上げる。
そして多くの勇者を手にかけてきたその“執念”にだけは敬意を払い、彼の肉体が消えてなくなるその瞬間まで、最期をしかと見届けたのであった。
ただ、まぁ、悪質な敵だったことに変わりはない。
コイツの名前は後世に遺るだろうが、そこにあるのはロモディンではなくポコチンの四文字だ。
名前を覚えられるだなんて贅沢はさせない。
先輩たちの倍くらいは名誉を傷つけられたまま、大人しく死んでもらうことにしよう。
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