この恋は愛とするには悍ましい

一弓

前編:恋心は友を裏切るか

 恋バナという言葉を、生まれて一度も聞いたことがない者はいないだろう。各々の集団の中で好きな人がいる者を探し、言及させ、追求する。下世話な行為のようにも見えるが、思春期を生きる中高生、果ては大学生にとっても恋心という普遍的な共通項はコミュニケーションに最適な話題なのである。かくいう私も現在己の恋路に頭を悩ませる一般的な大学生であるために、恋バナは避けては通れない道であった。情報化した社会において、珍しいことに正解も教科書もない恋愛という学問について、有益且つ実践的な情報源は他人の恋路の他に無い。また、恋バナをする相手が身近な者であれば積極的な支援を受けられる可能性がある、という副次的効果も期待していた。しかし、実際のところ、恋情の絡む話には衝突がしばしば起こるものであるということを、私は完全に失念していたのである。


「え〜、マキ今好きな人とかいる〜?」


 呂律のあやふやな、滑舌が安定しない喋り方をするのは私の友人のルナである。月と一文字書いてルナと読ませる美的センスは、ここ数年のうちに正常の一つに溶け込んでしまったように私は思う。


「いやいや、あたしサークルで忙しいし。恋愛してる暇なんかないって。」


 対照的にはっきりとした喋りで受け答えるのは同じく私の友人のマキ。しかし毅然とした発言と裏腹に、発言の内容は嘘である。マキはカワタニと現在交際中だからだ。カワタニというのは、今年入学してきたばかりの男子バトミントンサークルの小柄で可愛らしい印象を受ける男子である。私とマキは女子バトミントンサークルで知り合った。新歓飲み会でマキがカワタニを持ち帰ったことは女バト部員の間では周知の事実だ。


「そっかぁ。マキ忙しいもんねぇ。あ、そうだ。実は私ね、好きな人いるんだぁ。」


 呂律不安定二号ことユマが唐突に自分を語り始める。一応、ユマと私は高校からの付き合いであり、見る人によっては親友と取られることもあるだろうといった関係性である。私の好きな人についても、現状はユマのみが知っている。


「そうだったの? え知らなかったな、誰? 男テニのクマサキくんとか?」


 ユマはテニスサークルに所属はしているが、この学校のテニスサークルとは飲み会サークルの別名である。男テニの部員と関係が出来ていても不自然ではない。ちなみにこの鼻につく疑問文で話す女が私である。


「違う違う、おんなじサークルで恋愛はハードル高いってぇ。」


 ユマがそれを口に出した瞬間、ほんの僅かにだがマキの口角が確かに下がった。ハードルが高い、というのはあくまで婉曲表現であり、直接的な反感を買わないための手段だが、敢えてヴェールを剥がして言うならば「論外」ということである。マキとしても自ら恋人の存在を隠しておいてその言葉に噛み付くわけにはいかないが、かといってマキのような違法建築されたプライドの高度を持つ人間はこの言葉を許容できるように設計されていない。

 笑顔のふりをしながら、あくまで友人を装って、どう先ほどの言葉を訂正させるかと考えているであろうマキを横目に、私は不安を抱えながらルナを見る。ルナはあいも変わらず何も考えてなさそうな顔を浮かべているのだが、だからこそ追加で爆発寸前マキの地雷を踏まないか私は懸念しているのだ。特に、ルナはその場の強者の発言に同調する癖がある。本人が意識的にそうしているのか、無意識の自己防衛なのかは定かではないのだが、長いものに巻かれがちな人間なのである。


「え〜、誰だろ〜? ルナの知ってる子〜?」


 この場では空気を読んだのか、ユマの好意の宛先に話題は再び戻された。ルナはマキがカワサキと交際している事実を知らないはずだが、雰囲気から読み取ってくれたのだろうか。あるいは、ただの偶然なのかもしれない。兎に角、ここで討論会が引き起こされるのは無事防ぐことが出来たと言っていいだろう。


「ルナは知らないかもぉ。でもぉ、アヤは知ってると思うよぉ。」


 勿体をつけて発表を引き延ばすユマの表情は、どこか悪魔的で、挑発的な笑みに私は見えた。獲物を追い詰めた時の肉食獣は、当然野生において笑うことなどないが、しかしもし表情があればこんな顔をするだろう。背筋が一瞬凍るような心持ちになるが、それを外面に出すわけにもいかず、乾いた笑い声をこぼしながら口角の位置を保つのが私の使命であった。常々、ユマが私をアヤと呼ぶたび、私はアヤネと呼んで欲しいと言っているのだが、今この時に至ってはその余裕すら無かった。ユマの二重整形とカラーコンタクトによって彩られた綺麗な瞳は、私の余裕のなさすらも見通しているように感じられた。


「誰だろ? 私あんま大学内の男子覚えてないからさ、案外覚えてないかも?」


 脳が止まれと指令を出すように、声に若干の震えが現れる。マキは変わらず反論を考え続けているのか視線を地面に落としており、ルナは思考を放棄したような面持ちを浮かべている。今この時、ユマだけが私が怯えていることに気がついているのだろう。私とて、何に怯えているのかは分からない。しかし、言いようもない不安感が喉元に這いずり回っているのである。


「そっかぁ」


 私とユマの目が合い、ユマの口角は一層上がる。たった一言だが、粘つくようなその一言にはやけに重量があるように思われた。その先の言葉を発してほしくはない、と願ってしまう。


「私ぃ、オニガハラくんのこと好きなんだよねぇ。」


 それを聞いた瞬間、私の内心では様々な感情が蠢き犇くのを感知した。嫌悪や悲壮もあったが、何よりも大きい感情は疑念であった。なぜ、今ここでその名前を私を含む人間に述べたのか。私は困惑し、ユマの意図が何かは分からなかった。オニガハラ───オニガハラ ユウキは、ここ東京文藝大学の昨年の大学祭実行委員長であり、大学内最高人数を誇る文藝サークルの部長である。そして、私の幼馴染であり、同時に私が七年間恋心を拗らせている相手でもある。

 その事はユマも知っているはずなのだが。


「名前はルナも聞いたことあるかも〜。でもライバル多そうじゃないかな〜」


「うん、でもぉ、好きになっちゃったからぁ。応援してくれるぅ?」


 半ば放心状態だった私は、現実に引き戻される。ユマの狙いは、今の一言に詰まっているのだろう。私がここで後から被せて主張するほどの胆力を持っている人間ではないことをユマは知っている。故にこそ、応援して欲しい───言い換えれば、諦めろと────そう述べているのである。先ほどの嫌な予感が、確信を以て一つ一つ整頓されていく。

 ふとユマの方に視線を移したとき、大きく開かれた瞳と、鬱陶しい程に美しい虹彩が、私の方を見つめていた。敗北宣言を促すように、或いは勝利宣告をするように。この手の話において、先手必勝という言葉は絶対であるように思う。仮に私がここで実は私もと後出しすれば、マキやルナからの私の評価は空気を読まない人間、になってしまうだろう。 理不尽なように思えるが、後から発言する以上は、場の空気を壊さずに円滑に対応することが求められるのである。何故ならば恋バナは自己主張の場ではなく、コミュニケーションの場だからだ。七年間。私としても、七年間という月日を思い続けてきた自分自身を蔑ろにはしたくない。たとえユマが昨年文化祭実行委員であったり、大学内でも顔が広く、ここで敵対してしまえば私が安寧な大学生活を送れない事を知っていたとしても、この場で過去七年の私に恥じない行動を取るべきではないだろうか。


「それでぇ、応援してくれるよねぇ?」


「もちろんだよ〜。ユマならいけると思うよ〜」


「ま、アタックする分には自由だしね。いいと思うよ。」


 これで完全に言い出せない空気となった。チェックメイトである。マキもルナもユマを応援する、と発言した矢先、私が主張したのちの味方は一人もいないことが確定したのだ。


「そう、だね? 私も応援するよ?」


 私がこれほど鼻につく疑問系で話すようになったのには理由がある。主にこういった場において発言を断定的にしない事で、言葉を濁すためである。今後の大学生活を考えれば、この場では頷いておかなければいけない。しかし私の心として頷きたくはない。そんな優柔不断を、なぁなぁで流すことができるのが疑問系だ。


「やったぁ。アヤならそう言ってくれると思ったよぉ。」


 しかし、私の心境としては一貫として疑心であった。私は高校の時分、ユマに私がオニガハラ ユウキに好意を持っていることを打ち明けたことがある。どうにもならない恋情というのは、一人で抱えておくには苦しいものだ。当時から数多の男と交際しては捨てるように別れていった恋愛経験値の高いユマは、友人として最適な相談相手だったのである。以降も度々相談をすることがあったが、大学に入ってからはそれも少なくなった。故にこそ、今ならばと仕掛けてきたのだろうか。友情や信頼を過信しているわけでは無いが、この過去を踏まえて、私に一切告知せず、先の言葉を紡ぐことが果たしてどれだけの人間に可能なのだろうか。ユマは間違っても良い性根をしているとは言えないが、それでも私にとっては信頼できる友人の一人であったはずだ。

 その日の昼休みは疑念が解消されないまま三限となり、私は三人と別れる運びとなった。私の三限はフランス文学史であった。


※※※


「よっ、アヤネ。隣いい?」


 フランス文学史の授業が終わり、四限は無かったため学内のカフェで一息ついていたところに、その男は現れた。オニガハラ ユウキである。いつもならば無条件に了承するところだが、先ほどのユマの話もあって考え込んでしまう。


「悪り、気が利かなかったな。」


 無言でいるうちに、彼は遠ざかろうとしてしまう。自認には考え込んでいるつもりでも、他人から見れば無視しているように見えるだろう、と気がつくまでに数秒を要した。


「待って。大丈夫だから。」


 去ろうとする彼の手首を掴んで引き留める。先の話があったからといって、七年の恋心がすぐに消え去るほど私は人間が出来ていないし、好きな人と話す機会を逃したく無いというのが本音であった。


「そう? アヤネ、少し気分悪そうだけど。」


「気のせいだって。それで、何か用事?」


 気分が悪いわけでは無いが、ばつが悪いというのが真実だ。奇襲とも言える宣言ではあったが、形だけでも了承した手前カフェで二人きりで話すというのは半ば裏切りのようにも感じられたからである。


「用事ってわけじゃないけど。ちょっと暇潰そうとカフェ入ったらアヤネがいたからさ。」


「そ。何頼む?」


「んー、特に決めてないんだよな。アヤネが飲んでるやつ、何?」


「これ? 苺チーズケーキラテ。最近出たやつ。」


「いいね、それにしよっかな。」


「ん、それなら私の分けたげる。」


「まじ? さんきゅ。じゃあ別の頼もうかな、なんか気になるのある?」


「新作の宇治抹茶ホイップラテとか。美味しそうだけど一人だと尻込みしちゃう量。」


「ならそれで。店員さーん。」


 幼馴染だからこその、近すぎず、遠すぎない関係性。言葉一つ一つを脚色しすぎる必要もなければ、キャラクターを作る必要もない。このぬるま湯のような心地よい関係が、私から七年間、告白の勇気を奪ってきた。そのぬるま湯すらも、今は浸かるまでに躊躇いが生じてしまう。


「そういえばさ」


 少し迷ったようなそぶりをして、ユウキが口を開く。そういえば、という言葉は彼が真面目な話をする合図のようなものであった。おそらく本人は、自身の癖に気がついていないのだろうが。


「アヤネさ、オトナシと仲良いじゃん。」


 オトナシ、オトナシ ユマ。今朝ならば私は肯定したかもしれないが、今となってはどう返事をすれば良いのか分からない。数年間友人が好意を寄せている相手に対して好意を寄せている事を牽制するように宣言することは、そして牽制された直後にカフェで二人きりで話してしまうような己は、果たして仲が良いと言えるのだろうか。


「そうかも?」


「……なんかあった?」


 私は、この男のこういうところが嫌いだ。昔から妙に勘が良く、そしてそれに首を突っ込むことに何の躊躇いもないところが、嫌いだ。


「何も。」


「そっか。なら、良いんだけど。」


 それ以上追求をしてくることはない。この男は、一度否定されればそれがどんなに嘘であると分かっていたとしても、追求して欲しくないという意図を汲み取ってそれ以上の会話を続けない。この男のこういうところが、私は好きだ。


「何か言われた?」


 自分が嫌になるのは、相手が手を引いた話を、自らの手で掘り返してしまう愚かさだ。おそらく今届いた宇治抹茶に話を移していれば、有耶無耶になったはずの話を、私は愚かしくも続けてしまった。少し考え込んで、彼は言う。


「いや。今日中国文学史でオトナシの機嫌悪かったから。」


「私の話をした時に?」


「なんでそれを」


「私とユマに何かあったか聞いたのに私が登場してないでしょ。」


「そうか、そうだな。」


 不思議な感情に埋め尽くされる。ユマとの関係性悪化の恐れからくる、ユマに私の話をするユウキへの理不尽な不満。そして即日行動のようにユウキから私の話をされただけで機嫌を悪くするユマの幼稚さへの憤り。しかし何よりも、好きな人が私の話をしているという事実への喜び。内部に抱える矛盾に、私はどうにかなりそうだった。


「なんで言ったの?」


「えーと、最近アヤネと話せてないって話。」


 嘘をつく前に、必ずえーと、という枕詞を置く癖は、おそらく本人以外の多くの人間が気がついている。文武両道を成す器用さに対して、この不器用さが愛おしい。


「そ。なら話せたね、ラッキーじゃん。」


「今日はついてる。アヤネはこの後どっか寄る用事とかある?」


「ないよ。このまま帰るつもり。」


「じゃあ一緒に帰ろうぜ。今日実家に帰る日でさ」


 彼は一人暮らしだが、別に家が大学までまでそう遠いわけではない。私の家は彼の実家の隣だが、私は実家暮らしで大学に通っている。なんでも、親が一人暮らしに慣れておけ、と家から出したそうだ。


「いいけど。私歩きだよ。」


 遠くはないといっても家から大学まで二キロメートル程はある。自転車や電車の方が都合がいいのかもしれないが、徒歩で一時間もしないなら無料の方がいい、と私は徒歩で通学している。


「そういやそうだった。ま、そっちの方がゆっくり話せるし丁度いいよ」


「そんなに話したいこと溜め込んでるの?」


「まぁ、な」


 内心では、帰っているところをユマに目撃されるリスクを計算していたが、好きな人と喋りながら帰ることができるというメリットを前に、今更カフェで話し込んでおいて何を尻込むことがあるのか、という自分への言い訳も重なり、了承してしまう運びとなった。この男が絡むと、私は自分がより一層愚かしい人間になっていることを自覚させられる。

 店を出る時、会計を別々にできる仕組みが導入されている店は良い店だと改めて思った。世間的に、友人間ですら奢るだの奢られないだとの言った論争がしばしば巻き起こっているが、伝票が同じだからそういった不具合が生じるのではないだろうか。


※※※


 帰り道、まだ暗いとも言えないが、決して明るくはない時間帯に静かな住宅街を歩く。最初こそ近況や昔を交えて話をしていたが、だんだんと口数が減り、周囲の静けさに合わせるようにお互いに無言になってしまった。お互いがお互いの歩幅に合わせようと、いつもよりかなり遅いペースで歩いている。


「そういえばさ、アヤネ」


 私は沈黙に耐えられない人間ではないが、折角好きな人と話す機会に無言でいるのはあまり良いとは言えない。五分ほどの沈黙を打ち破ったのはユウキだった。


「なに?」


「少し大事な話があるんだけど」


 ユウキが足を止める。それにつられて、私も歩みを止める。神妙な面持ちでこちらを見るユウキに、私は少しだけ目を合わせられないでいた。


「どしたの、そんな改まって」


 じわりと恐怖が心の内部を支配する。ユマが何をユウキに言ったのか、私に知る術はない。ユウキが私について述べたのは確かだが、私と話したかった、という言葉は嘘である。ユマは、ユウキが私と話す事を快く思っていないだろう。仮に彼女が、ユウキに釘を刺していたならどうだろうか。今日長く話したのは、不幸の前の幸福だったのではないかと、一瞬のうちに良くないことばかりが頭を過ぎる。昼の虫の知らせが、今もまだ鳴き叫んでいるようだった。


「俺、アヤネのことが好きだ。」


「そ。え?」


 思考が追いついていなかった、と言えば嘘になる。しっかりとその言葉を認識し、意味を理解するだけの脳の回転はあったものの、その判断が口にまで伝達しきれていなかった。


「ごめん。急に言われても困るよな。」


 謝らないでくれ、と心の中で呼び止める。何か返事をしなければ、と思うたび、私の体は時間が止まったように動かなくなる。これがもしハッピーエンドへ向かう途中の物語ならば、今すぐに私の想いを打ち明け二人は結ばれて幕が閉じるのだろう。しかし、ユマの言葉は私の口を縛り付けていた。


「困ってはない、けど。いつから?」


「中学生のときだと思う。」


「そ。」


 いつもならば浮かぶ次へ繋げる言葉が、今に至っては一つも紡ぐことがままならない。これほどまでに取り乱したのは、いつ以来だろうか。気の利いた言葉も、するべき返事も、取るべき行動も、全てが疑わしく思えて行動に移すことが出来ないでいた。


「返事は今?」


「寧ろゆっくり考えてほしい。今のままだと断られそうだし。」


 彼は自嘲するように笑って見せる。恐らくは、今返事しなければいけないのであれば、確かに私は断っただろう。あの場所で言質を取ったのはユマだけではない。マキやルナにしてみれば、協力すると嘯いていた人間がその日のうちに友人の好きな人を掠め取っているというのだから、私への不信感は一入だろう。今この告白を受け入れることは、即ち私の不誠実さを浮き彫りにすることに他ならない。かと言って、私の心境としては断りたくないというのが本音である。七年間片思いしていた相手から告白されるなどという、言ってみれば夢のような状況を、自ら捨てることは判断し難い。


「ありがと。少し考えさせて」


「元々俺が急に言ったことだから。気にしないでくれ。」


 ふと思いに耽る。裏切りの裏切りは果たして不誠実なのだろうか。或いは、ユマは本当に私を牽制するつもりだったのだろうか。これが被害妄想だったならば、私はただ友人を裏切る最低な人間だと言うことになる。友人を裏切るような人間は、本当に彼の恋人たり得る存在なのだろうか。告白を受け入れなければ、誠実である代わりに、彼の恋人になることはない。告白を受け入れれば、不誠実であるがゆえに、彼の恋人であるには値しない。少なくとも、残りの帰り道では、私にはこれが解決不能のパラドクスであるように思えた。


「じゃ、また明日」


「おやすみ」


 そう言ってお互いに自分の家へと帰宅する。いつも歩いているはずの道が、今日はやけに長く感じられた。その理由は、単に双方のペースが遅くなっていただけではないのだろう。自室に戻り、少し暗くなってきた空を窓越しに見る。明日は雨だろう、と直感的に理解できる、そんな曇り模様が遠くへ見えた。私はどうすれば良いのか、という決断を下せるほどの聡明さは持ち合わせていなかった。

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