第38話
僕は寮生活をしていて、滅多に実家へは帰らない。
寮の個室で危険な魔法を研究していて、万一の場合に実家を壊さないようにするためだ。
仮に寮で事故が起こってしまっても、父上の権力のおかげで隠蔽ができる。
僕たちモンブラー一族には、誰も逆らえない。
だが、ここにきて脅威になりそうな相手が出てきたのだ。
名前はソフィーナ。
父上の不倫相手にできた子で、不倫相手の女はソフィーナを産んですぐに他界。出産で苦しんだのではなく、究極の魔法を使い死んだのだと今の僕は思っている。命と引き換えに、生命力と魔力を全てを子に託し、王宮魔導士かそれ以上に匹敵する魔力を持てる子にすることができる禁断の魔法。使える術者はほんのひとにぎりだが、そうでなければソフィーナの規格外な魔力に説明がつかない。
だが、そのことを今までの僕は知らなかった。
ソフィーナのことを見ると、どういうわけだか可愛い女の子として見てしまう傾向があったのだ。
初恋のようなあり得ない感覚にまでなり、僕はソフィーナとは会わないように心がけた。
成長したソフィーナを見かけたときは、胸がはちきれそうなくらいに抱きたいと思ってしまった。
おいおい、父上の子だぞ……。どうして僕がこんな感情になってしまうのか。
だが、こいつは危険だし僕にとっては絶好のカモ。
妙な恋心は捨て、父上の命令に従い、ソフィーナを退学させる。
同時に、ボクはとんでもない魔力を手に入れることができるのだ。
全身全霊をかけて会得した、この呪い魔法を使って!
演技も駆使して、ソフィーナを口説く……じゃなくて誘導していく。
しかし間近で見ると、本気で抱きたくなってしまうほどの衝動に襲われた。
だが、ここは我慢して、ソフィーナの手を握り、その隙に呪いを発動する。
ソフィーナはすっかり僕のことを信用している感じだったし、呪いにも気がつかなったようだ。
いっぽう、レオルドというソフィーナの婚約者は違った。
僕のことを疑っているようだし、警戒もしていた。
こいつは危険かもしれないが、ひとまずは放置だ。
僕の目的は達成し、しばらく魔力を使うことができないが、魔力だけで世界をも自分のものにできてしまいそうな魔力が手に入る。
全て上手くいったことを報告するため、久しぶりに実家へ帰った。
父上にはここまで起きたことを余すことなく伝える。
おっと、僕がソフィーナに妙な感情があることは伏せているからな。
「さすが我が息子! まさか創作魔法を会得していたとは」
「すべてプリドラ学園で研究していた結果です」
「つまり、私の不倫相手はどういうわけか禁断の魔法を使うことができ、ソフィーナに託して死んだというわけか。いくつか不可解な点もあるが、それならソフィーナが魔力測定器を破壊したことも納得できる」
「しかも、その規格外の魔力が全て僕のものになるのです。今は呪いを発動しているため魔力が一切使えませんが楽しみで仕方ありません」
「良くやってくれた。これでソフィーナの魔力が完全に消え、元々魔力がなかった無能な女だという確定事項になり退学にできる」
「僕としては、しばらくの間は規格外の魔力を試せないのが辛いですけれどね。すぐに使ってしまったら、呪いを使ったことがバレる可能性がありますし」
全ては完璧な計画にするため、後の行動も慎重にならなければいけない。
呪いなんて、王宮の魔導士なら知っていることだろうし、ソフィーナは王宮と繋がりもある。
間違いなく調べてくるだろうから、僕は今までどおりの魔力数値8000程度が限界という演技をする。
大丈夫だ。
なにかのときのために、プリドラ学園では不審な行動は一切せず、常に完璧で英才な人間だと演技してきたのだから。
こういう生活も悪くはなかった。
告白してくる女どもは片っ端からいただき、飽きて捨てるときも消去魔法で抱いていたことはもみ消し。
相手の心も傷つかず、ただ僕にフラれただけという口実に置き換えられるのだ。
だが、これだけ大勢の女を経験しても、やはりソフィーナを抱きたいと思ってしまうのはなぜか。
まぁ良い。魔力切れになったソフィーナも抱いてしまい、僕の魔法でなかったことに思わせればそれで良い。
僕に不可能なことなどない。手に入れたいものは全て手に入れる。
しばらく学園は魔力が使えないため、口実を作り長期休暇をするが、念のためにソフィーナの魔力切れからしばらく時間を開けておく。
さて、僕の復帰はいつになることやら……。
と、思っていたのだが、呪いを発動してから五日後。
僕は魔法が使えなくなってしまった……。
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