第37話
「魔法には高等技術で創作魔法というものが存在します。創作魔法の中にはリスクの高い、『呪い』という魔法が存在していましてね。対象者の魔力が尽きるまで永久的に吸い続け、術者の魔力にしてしまうという恐ろしいものがあるのですよ」
それを聞いて、私とレオルド様とセバル侯爵様の三人の顔が青ざめた。
「魔導士よ! その呪いとは時間にしてどれくらいの量を奪われるのだ?」
「術者の力量にもよりますが、相当な技術を使える魔法ですから。一日に数値にして1000から1500程度は吸われ続けるかと……」
それを聞いてひとまず安心した。
仮にブルクシア様に呪い魔法をかけられていたとしても、まだ五日しか経っていない。
多く見積もって一日に2000ずつ奪われていても、私の魔力の一部を失っただけである。
だが、この怠さがこの先も続くかと思うと辛い。
「先生……。この呪いは治せないでしょうか……?」
「術者が解除する以外に対処法はないのです……。申しわけございません……」
「そんな……」
いずれ私の魔力は尽きる。
これはさすがに心が折れそうだった。
せっかく魔法学園に入学して魔法を色々と知っていき、将来的には魔法関連の仕事もやってみたいとワクワクしていたのに……。
「いったいあなたに呪いをかけてきた近親は誰です⁉︎」
「え? 近親?」
「この呪いはリスクが高いと言ったでしょう。近親以外の者に誤って発動すると、対象者と同時に術者の魔力も永久的に失っていく呪いなんですよ」
「はい⁉︎」
「術者はこの呪いを発動中は、一切の魔力も魔法も使えなくなります。解除したと同時に吸収した魔力が一気に自分のものになるのですよ。だから、術師も今は魔法も魔力もゼロの状態です」
「あ……あの。もしも全くの他人がこの呪いを発動していて、相手が先に魔力切れになってしまったら……?」
「自動的に呪いは消えますし、怠さも同時に解放されるはずです。ただし、失ってしまった魔力は二度と返ってきませんが……」
私とレオルド様で顔を見合わせる。
お互いにホッとして安堵のため息をはいた。
すでに10000近い魔力を失うことになってしまうが、それでも900000以上の魔力量は残る。
対してブルクシア様は、このあともうすぐ確実に魔力切れを起こすことになるのだろう。
「なぜ安堵しているのです? すぐにでも術師を強引にでも捕まえ止めなければ」
「あ、いえ。むしろこのまま放置しておこうかと思っちゃいまして……」
「は?」
魔導士は信じられないと言った顔をしていた。
対してセバル侯爵様は呆れながらため息をはく。
「ソフィーナ嬢にしかできないような荒技だな……。しかも、相手をどん底にでも落とすつもりなのかい?」
「これだけたくさんの方々に迷惑をかけてしまいましたから……。それに、レオルド様の心も傷つけたことも許せません」
私がうかつにもブルクシア様の言葉を信じてしまったのがいけなかった。
だが、レオルド様は会った最初から警戒をしていた。
手まで握られてしまったわけだし、レオルド様に合わせる顔もないと思っていたのだ。
これは私の捨て身の反抗だ。
やはり、モンブラー子爵家の人たちを許すことはできない。
なんと、このタイミングで私の怠さが解放された。
改めて魔導士に診てもらったが、もう心配ないと言われる。
「そんなに喜ぶことではありませんよ。五日分も失ってしまったのです。せっかく王宮直属魔導士になれるかもしれなかった力ももう……」
「心配していただきありがとうございます! でも、大丈夫です。残った魔力で頑張っていきますから」
「は、はぁ……。大変強いメンタルをお持ちなのですね」
「ははは……」
まさかまだ900000以上魔力が残ってるなんて、言えない……。
しかし、話は終わったわけではなかった。
「その呪いをかけてきた者の魔力は絶大な力を手に入れてしまったはずです。これは国の脅威にもなり兼ねませんので、大至急陛下に報告し、犯人もわかっているなら告げるようにしてください」
「わかりました。誰の仕業かは概ね間違いはありませんので報告しますが、国の脅威にはなりませんから……」
「はい?」
国の脅威と言われてしまい少々傷ついた……。
やはり、今は魔力がたくさんあることは極力黙っておこう。
このあと、謁見で報告しておくことにした。
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