第13話

 前回来た王宮の応接室にて。

 完成した冷蔵庫を持っていき、商品化への営業である。


「素晴らしい。これなら魔石も冷蔵庫も商品化として進めることができる」


 王都商会会長のセバル=グリフォム侯爵様が冷蔵庫に触れながら笑顔でそう言ってきた。

 ついにレオルド様の夢の第一歩が達成できたのだ。

 私も嬉しくなる。あまりにも嬉しくて、うっすらと涙が出てしまった。


「レオルド様、商品化おめでとうございます!」

「ありがとうございます! ソフィーナのおかげここまでこれました」

「ふふ……」


 まぁ今回は否定しないでおく。

 冷蔵庫は一人では持ち運べないくらい重いし、二人で協力してここまで運んできた。

 まだまだ寒い季節とはいえ、王宮に到着したころには二人で汗だくだった。

 とはいえ、物置小屋で監禁生活だったし体力も筋力もほとんどなく、ほぼレオルド様に負担をかけさせてしまうような持ち方になってしまったことは申しわけなかったが……。


「魔石並びに冷蔵庫に関しては、今後商品開発班と打ち合わせをしてもらうことになる。先に取り分に関してだけここで決めておく」

「当初セバル様がおっしゃっていた、イチキュウであれば嬉しいのですが」

「残念だがレオルド君。それは無理がある」

「そうですか……」


 レオルド様が言っていたイチキュウとは、今後売り上げ利益の一割がレオルド様のものになると言っていたっけ。

 今後レオルド様は新しい物を作っていくそうで、作り方を教えて販売等は全て商品開発班に丸投げし、アイディア料と販売特許をもらうそうだ。


 だが、セバル様は苦笑いをしながら断ってきた。

 なにかダメだったのだろうか。


「最低でもニハチでないと割りに合わない」

「はい!?」

「魔石も冷蔵庫も、今までに存在したことのないような革命的な物だ。以前王宮で買い取ったエアコンも陛下が大変気に入られている。もしもレオルド君が商品化するような物を完成させたらニハチ以上で契約するようにと命令も受けているのだよ」

「良いのですか? ニハチと言えば、常に製作にも加担するのでは?」

「今後の新商品開発の必要経費だと思えば良い」


 レオルド様が、まるで夢のようだと言ったような笑みを浮かべていた。


「はい! ありがとうございます! 今まで以上に新しい物を作り、人々の役に立てそうな物を作りたいと思います!」

「ところでだ。レオルド君たちはこのあと時間はあるのか?」


 レオルド様が真っ先に私に確認をしてきた。

 私が毎日することはすでに終わっているし、あとはレオルド様に合わせられる。

 大丈夫だと伝えると、すぐにレオルド様も時間があることを伝えた。


「では、二人とも陛下と謁見をしてもらう」

「「はい?」」


 私とレオルド様の驚いた声がかぶる。

 レオルド様はわかる。

 だが、私まで謁見するのはなぜだろう。


「それから、ソフィーナ嬢にはエアコンの効きが悪くなってきているから魔力の補充を依頼したいそうだから、そちらも可能ならばお願いしたい」

「は、はい。私は問題ありませんが」

「すまんな。王宮に在中している魔導師でも、エアコンを起動させる魔力を使わせようとしたら、魔力が枯渇するまでの力が必要らしくてな」


 そういえば王宮に渡していたエアコンって、まだ循環がうまくされていない魔石を使っているんだったっけ。

 あれ、これって冷蔵庫と同じように新しく作った魔石でエアコンに取り付けたら……。


 なんて思ってみたけれど、魔石にも作り方によって色々と種類があるそうだし、そううまくはいかないか。


 ところで、魔力の補充なら理解できるのだけれど、やはり私まで謁見する理由がわからない。

 頭の中がハテナ状態のまま、国王陛下がいる部屋へ向かった。

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